吾妻鏡入門第四十八巻 　

正嘉二年(1258)七月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぜんのろくろうさえもんじろう　ほうじょうえ　ぐぶにん　〔ひたたれぎ〕　さんじょうに　の　　くは　　べきのむねおお　 くださる　　　ゆきかたぶぎょうたり
正嘉二年(1258)七月小四日辛亥。善六郎左衛門次郎放生會供奉人〔直垂着〕散状于載せ加う可之旨仰せ下被る。行方奉行爲。」

きょう　　しょうぐんけひゃくにち　おんまり　　はじ　 せし　 たま　　　　にんずう
今日、將軍家百日の御鞠を始め令め給ふ。人數。

　　つちみかどちゅうなごん　〔あきかたきょう〕　　　　　　かざんいんさいしょうちゅうじょう　〔ながまさきょう〕
　土御門中納言〔顯方卿〕　　　　花山院宰相中將〔長雅卿〕

　　ぎょうぶきょう　〔むねのりきょう〕　　　　　　　　　　　　さきのひょうえのすけただときあそん
　刑部卿〔宗教卿〕　　　　　　　前兵衛佐忠時朝臣

　　ぎょうぶしょうゆうのりとき　　　　　　　　　　　　　　うまのすけきよとき
　刑部少輔教時　　　　　　　右馬助�C時

　　こうづけのさぶろうひょうえのじょうひろつな　　　　おな　　　じゅうろうともむら
　上野三郎兵衛尉廣綱　　　　同じき十郎朝村

　　　けんじゃくはか　もう　　　　うんぬん
　　賢寂計り申すと云々。

現代語正嘉二年(1258)七月小四日辛亥。三善六郎左衛門次郎は、放生会のお供〔鎧直垂を着る〕の名簿に書き加えるように仰せになられました。二階堂行方が担当です。」
今日、宗尊親王将軍家は、百日の蹴鞠を始めました。人数は、
　土御門中納言顕方さん　　花山院宰相中将長雅さん
　刑部宗教さん　　　　　　前兵衛佐忠時さん
　刑部少輔北条教時　　　　右馬助北条清時
　上野三郎兵衛尉結城広綱　同じ十郎結城朝村
　　賢寂が数を数えましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きょう　　ひょうじょう　みょうじ　　さ　　　しちけん　　い　　　　　しょりょう　こと　　そ　　ところちぎょう の じんそ　　つぐな　　 いた　　べきか　のよし
正嘉二年(1258)七月小十日丁巳。今日、評定。名字を差し質券に入れた所領の事、其の所知行之仁其の償いを致す可歟之由、

さだ　　らる　　　 うんぬん　 いずみまたたろうくらんどよしのぶ　と　あわのしろうよりつな　　しもつけのくにとちぎごう　　こと　　そうろん
定め被ると云々。 泉又太郎藏人義信 与 安房四郎頼綱、下野國栃木郷の事を相論す。

よりつな か　 ごう　　もっ　　しちけん　　い　　　　　　　よっ　　　　すで　きゅうにん　 ふ　られをはんぬ
頼綱彼の郷を以て質券に入れるに依て、已に給人に付せ被 畢。

しからずんば　かたがた　れい　　まか　　いちばい のさだ　　　　くは　　　ひゃっかんもん　ぜに　 をば　　　はや　　よしのぶ　　さた　　べき　　うんぬん
 然者、　傍 の例に任せ、一倍之定めに加へ、百貫文の錢於者、早く義信に沙汰す可しと云々。

参考百貫文の錢は、一貫文が銭1000枚で、鎌倉時代の1230年、米１石は銭１貫文という記録がありますので、当時の１貫文は現代の米価を参考にするなら約６万円に相当します。YAHOO知恵袋から。600万円か？

現代語正嘉二年(1258)七月小十日丁巳。今日の政務会議は、出身地の名字を質に入れた領地(名字の地)について、そこの持ち主がその返済をすべきだろうと、決めたそうです。泉又太郎蔵人義信と安房四郎頼綱が、下野の国栃木郷について訴えました。頼綱がその郷を質に入れたので、すでに流れて貸主の義信に帰属しています。返して貰うには、今までの例の様に、借金と同額の利子の他に、百貫文の銭を早く義信に支払いなさいだとさ。

解説御家人同士の質券なので、質入れ行為が許される。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さがみのたろうどのいささ　いれいのあいだ　　きとうら　　しゅうさる　　　　うんぬん
正嘉二年(1258)七月小十一日戊午。相摸太郎殿聊か違例之間、祈祷等を修被ると云々。

現代語正嘉二年(1258)七月小十一日戊午。相模太郎北条時宗さんが少し病気なので、加持祈祷等をやりましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  ごしょ　　とうざ　　おんうたあわ　　　　うんぬん
正嘉二年(1258)七月小十五日壬戌。御所の當座の御歌合せと云々。

現代語正嘉二年(1258)七月小十五日壬戌。御所で現在を題材に和歌比べだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さがみのたろうどの　　ふれいこと　　　　ことな　　　　うんぬん
正嘉二年(1258)七月小十八日乙丑。相摸太郎殿が不例殊なる事無しと云々。

現代語正嘉二年(1258)七月小十八日乙丑。相模太郎北条時宗さんの病気は大したことはありませんでしたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひゅうがのかみすけやす　このたび　ぐぶにん　　かず　　も　をはんぬ
正嘉二年(1258)七月小廿二日己巳。 日向守祐泰、 今度の供奉人の數に漏れ訖。

これ　　きょねんじうがつ だいじじ くよう　のとき　　　ちさん　　よっ　　ぐぶせず
是、去年十月大慈寺供養之時、遲參に依て供奉不。

ことしろくがつしょうちょうじゅいんくよう　　ひは　　　またｓｈろう　　しょう　　ふさん　　かく　　ごと　　　あいだ じねん　 あいもる　　か
今年六月勝長壽院供養の日者、又所勞と稱し不參。此の如きの間自然に相漏る歟。

こと　しゅうしょう　えちごのかみ　もう　　のところ　　ごてん　　つ　　　あいもよお　ばか　　なり　　しけい　　あらざ　のよしへんとう
殊に周章し越後守に申す之處、御點�@に就き相催す許り也。私計に非る之由返答す。

参考�@御点は、將軍がやっている。

現代語正嘉二年(1258)七月小二十二日己巳。日向守宇佐美祐泰が、今度の行列の人数に洩れてしまいました。これは、去年十月の大慈寺の仏教式典の時、遅刻をしてお供を出来なかった。今年六月の勝長寿院の仏教式典の日は、病気だと言って又も行かなかった。こんな具合に二度も出なかったので、思いの他に抜かされたのだろうか。特に狼狽して越後守金沢実時に申し出たところ、将軍の名簿へのチェックによって決めているので、私の配慮では有りませんよと返答されてしまいました。

解説越後守実時の話題が多いのは、孫の貞顕が吾妻鏡編集に寄与しているからであろう。金沢文庫創始者。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　すけやす しょろうへいめつ のうえは　　　ぐぶ　すべ　　か　のよし　　ゆきかた　 たっ　　　のあいだ　　おんぐぶ　　ことうけたまは　をはんぬ
正嘉二年(1258)七月小廿三日庚午。祐泰 所勞平減之上者、供奉可き歟之由、行方�@に達する之間、御供奉の事 承り 畢。

　そ　　むね　 ぞん　　べ　　　のよし　　へんじょう　の　　　　 そ　　じょうを　えつしゅう　おく　　　　かく　　うえは　　　 ぐぶ　すべ　　のよし　　もう　　　えつしゅうかさ　　　　い
其の旨を存ず可き之由、返状に載す。其の状於越州に送り、此の上者、供奉可き之由を申す。越州重ねて云はく。

かく　じょうまった　おんきょ　 しょけん　 あらざ　てへ　　すけやすかさ　　　　うれ　　 くらのごんのかみちかいえ　つか　　　　　ちかいえへんじょう　とう
此の状全く恩許の所見に非る者り。祐泰重ねて愁へて内藏權頭親家�Aに遣はす。々々返状を投ず。

また　　そ　へんじょうをえつしゅう　つか　　のところ　　もんどうさき　　ごと　　　　うんぬん　　きょねん　　みどうくよう　　　ちさん　　　　　ことし またしょろう
又、其の状於越州に遣はす之處、問答前の如くと云々。去年の御堂供養に遲參し、今年又所勞す。

ふりょ　　　ごと　　　　こと　　よっ　　　　さだ　　　　けかん　　しょされ　　のゆえ　　もよおされざるかのよし　　しき　　　　これ　 なげ　　もう　　　　うんぬん
不慮の如きの事に依て、定めて懈緩に處被る之故に催被不歟之由、頻りに之を歎き申すと云々。

参考�@行方は、御所奉行カ？
参考�A親家は、42巻建長4年(1252)4月1日初出演で、宗尊親王について京都から来た。

現代語正嘉二年(1258)七月小二十三日庚午。宇佐美祐泰が、病気が治ったのでお供をしたいと、和泉前司行方に話しを手紙で通した所、お供をするように云われたので、取次いだ者が、そう承知しておくようにと、返事に書きました。その返事を越後守金沢実時に送り、そう云う訳で、お供をしますと伝えました。実時が昨日に続いて云うのには、「その手紙の内容は、全然将軍が許可したものではないので通用しない。」と云われました。宇佐美祐泰はなおも困り果てて内蔵権頭親家に訴えました。親家は返事をくれてやりました。又、その親家からの返事を実時に届けましたが、意見は前と同じでしたとさ。去年のお堂の式典に遅れて、今年は又病気になったり、思わぬ出来事なのに、おそらく怠けていると判断されてお供をさせられないのではないかと、とても嘆いていたんだとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  そうままごごろうさえもんのじょうたねむら　　このたび　　　ぐぶ　　こと　　じ　　　もう
正嘉二年(1258)七月小廿四日辛未。相馬孫五郎左衛門尉胤村、今度の供奉の事を辞し申す。

これろうびょうあいおか　　　まいじわずら　あ　　　のうえ　　 きた　　くがつここのかじょうやく　やぶさめ に つの　　　　ほうじょうえ　　　やぶさめ　　　ごんじすべ　　のよし
是老病 相侵し、毎事煩い有る之上、來る九月九日定役の流鏑馬于募り、放生會の流鏑馬を勤仕可き之由、

にわか　おお　くださる　のあいだ　　ご　　 のぞ　 ふんえいけいかい　　　うんぬん
俄に仰せ下被る之間、期に臨み奔營計會�@すと云々。

参考�@計會は、二つ重なる。

現代語正嘉二年(1258)七月小二十四日辛未。相馬孫五郎左衛門尉胤村は、今度のお供の辞退を届けました。これは、老人になったので、毎度負担になってう上に、来る九月九日に就いている流鏑馬役の他に、(8月15日の)放生会の流鏑馬も使えるように、急に将軍が言い出したので、いざとなると忙しい役柄が二つ重なっってしまったからです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　すけやす 　ぐぶ　　なおしゅうしょう　　　うんぬん
正嘉二年(1258)七月小廿九日丙子。祐泰が供奉、猶周章すと云々。

現代語正嘉二年(1258)七月小二十九日丙子。宇佐美祐泰のお供の許可は、未だ難儀しております。

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