吾妻鏡入門第四十九巻 　

正元二年(1260)正月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　はれ　　おうばん　〔そうしゅうぜんしつ　　ごさた　〕　　　　りょうこくし　　〔なら　　　　〕　ひょうじょうしゅう いげ　 ひとびと　ほい　　 き　　 しゅっし
正元二年(1260)正月大一日己巳。�ﾘ。垸飯〔相州禪室が御沙汰〕。兩國司〔并びに〕評定衆以下の人々布衣を着て出仕す。

ていじょう　なら　 そうら　　のぎ つね　　ごと
庭上に列び候う之儀恒の如し。

　　むさしのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おわりのぜんじ
　武藏前司　　　　　　　　　　　尾張前司

　　さがみのたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しんさがみのさぶろう
　相摸太郎　　　　　　　　　　　新相摸三郎

　　さがみのさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 とおとうみぜんじ
　相摸三郎　　　　　　　　　　　遠江前司

　　むつさこんさいふしょうげん　　　　　　　　　　　　　　　 えちごのかみ
　陸奥左近大夫將監　　　　　　　越後守

　　だんじょうしょうひつ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしさこんたいふしょうげん
　彈正少弼　　　　　　　　　　　武藏左近大夫將監

　　おわりさこんたいふしょうげん　　　　　　　　　　　　　　 とおとうみうまのすけ
　尾張左近大夫將監　　　　　　　遠江右馬助

　　びょうぶしょうゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えちぜんぜんじ
　刑部少輔　　　　　　　　　　　越前々司

　　えちごうまのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みんぶごんのだいゆう
　越後右馬助　　　　　　　　　　民部權大輔

　　えちごのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 むさしのごろう
　越後四郎　　　　　　　　　　　武藏五郎　　　参考越後四郎は、時方で後の顯時らしい？

　　とおとうみのしちろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　びぜんのさぶろう
　遠江七郎　　　　　　　　　　　備前三郎

　　するがのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えちごのまたたろう
　駿河四郎　　　　　　　　　　　越後又太郎

　　するがのごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　にったみかわのぜんじ
　駿河五郎　　　　　　　　　　　新田三河前司

　　ながいのくないごんのたいふ　　　　　　　　　　　　　　　あいだのじょうすけ
　長井宮内權大夫　　　　　　　　秋田城介

　　なかつかさごんのしょうゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　むとうしょうけい
　中務權少輔　　　　　　　　　　武藤少卿

　　もくごんのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのぜんじ
　木工權頭　　　　　　　　　　　和泉前司

　　なはぎょうぶしょうゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おやまでわぜんじ
　那波刑部少輔　　　　　　　　　小山出羽前司

　　ごとういきぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いがぜんじ
　後藤壹岐前司　　　　　　　　　伊賀前司

　　ながいのほうがんだい　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひゅうがぜんじ
　長井判官代　　　　　　　　　　日向前司

　　あきうこんのたいふ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しまづおおすみぜんじ
　安藝右近大夫　　　　　　　　　嶋津大隅前司

　　かずさのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　すおうのぜんじ
　上総前司　　　　　　　　　　　周防前司

　　ぬいどののとう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かいのかみ
　縫殿頭　　　　　　　　　　　　甲斐守

　　ごとういきしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　かずさのさぶろううえもんのじょう
　後藤壹岐新左衛門尉　　　　　　上総三郎右衛門尉

　　すおうのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　じょうのしろうさえもんのじょう
　周防三郎左衛門尉　　　　　　　城四郎左衛門尉

　　ちくぜんじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　すおうのごろうさえもんのじょう
　筑前次郎左衛門尉　　　　　　　周防五郎左衛門尉

　　じょうのろくろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　すおうのろくろうさえもんのじょう
　城六郎　　　　　　　　　　　　周防六郎左衛門尉

　　ちくぜんさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　じょうのいやくろう
　筑前三郎左衛門尉　　　　　　　城弥九郎

　　ちくぜんしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　しきぶのたろうさえもんのじょう
　筑前四郎左衛門尉　　　　　　　式部太郎左衛門尉

　　おのでらしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　おおすみくらんど
　小野寺四郎左衛門尉　　　　　　大隅藏人

　　ひたちのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　おのでらしんさえもんのじょう
　常陸次郎左衛門尉　　　　　　　小野寺新左衛門尉

　　こうづけたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　ではのしちろうさえもんのじょう
　上野太郎左衛門尉　　　　　　　出羽七郎左衛門尉

　　ぜんのうえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのろくろうさえもんのじょう
　善右衛門尉　　　　　　　　　　和泉六郎左衛門尉

　　ぜんのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　さつまのしちろうさえもんのじょう
　善次郎左衛門尉　　　　　　　　薩摩七郎左衛門尉

　　いずみのしちろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　さつまのじゅうろう
　和泉七郎左衛門尉　　　　　　　薩摩十郎

　　といのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ないとうひごのさぶろうさえもんのじょう
　土肥四郎　　　　　　　　　　　内藤肥後三郎左衛門尉

　　かのうのごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　いとうのじろうさえもんのじょう
　狩野五郎左衛門尉　　　　　　　伊東次郎左衛門尉

　　いせのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　かのうのしろうさえもんのじょう
　伊勢三郎左衛門尉　　　　　　　狩野四郎左衛門尉

　　しなののじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　かまたのとしょさえもんのじょう
　信濃次郎左衛門尉　　　　　　　鎌田圖書左衛門尉

　　ひごのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　 おおそねたろうさえもんのじょう
　肥後新左衛門尉　　　　　　　　大曽祢太郎左衛門尉

　　しなののさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　かのうのたてわきさえもんのじょう
　信濃三郎左衛門尉　　　　　　　狩野帶刀左衛門尉

　　かとうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きいのじろうさえもんのじょう
　加藤左衛門尉　　　　　　　　　紀伊次郎左衛門尉

　　ちょうないさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　おおいずみのくろう
　長内左衛門尉　　　　　　　　　大泉九郎

　　かまたのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　かまたのさぶろうさえもんのじょう
　鎌田次郎左衛門尉　　　　　　　鎌田三郎左衛門尉

　　じんざぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　ぜんのごろうさえもんのじょう
　進三郎左衛門尉　　　　　　　　善五郎左衛門尉

　　するがのうこんたいふ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひらがのしろうさえもんのじょう
　駿河右近大夫　　　　　　　　　平賀四郎左衛門尉

　ではぜんじゆきよし　じこく　　 もう　　　　しょうぐんけしゅつご　 うえもんんかみすいさん　おんみす　あ
出羽前司行義時尅を申す。將軍家出御。右衛門督進參し御簾を上ぐ。

ぎょけん　むさしのぜんじともなお　　ごちょうど　　おわりのぜんじときあき　　おんむかばきくつ　えちごのかみさねとき
御釼は武藏前司朝直。御調度は尾張前司時章。 御行騰沓は越後守實時。

　いちのおんうま　とおとうみのしちろうときもと　　　　　　　 くどうのじろうさえもんのじょうたかみつ
　一御馬　遠江七郎時基　　　　　工藤次郎左衛門尉高光

　　にのおんうま　むさしのごろうときただ　　　　　　　　　　 あんどうしんさえもんのじょう
　二御馬　武藏五郎時忠　　　　　安東新左衛門尉

　さんのおんうま　ではのしちろうさえもんのじょうゆきより　 おな　　　　くろうむねゆき
　三御馬　出羽七郎左衛門尉行頼　同じき九郎宗行

　よんのおんうま　じょうのしろうさえもんのじょうときもり　　　 おな　　　ろくろうあきもり
　四御馬　城四郎左衛門尉時盛　　同じき六郎顯盛

　　ごのおんうま　いせのじろうさえもんのじょうゆきつね　　 さぶろうさえもんのじょうよりつな
　五御馬　伊勢次郎左衛門尉行經　三郎左衛門尉頼綱

そ　　　ご　きっしょ　　み　　　　ぶしゅう じさんせし　　たま
其の後吉書を覽る。武州持參令め給ふ。

きょう　　　みゆきはじめ のぎ　あ　　　　　よっ　　れい　 まか　 ていじょう　ちゃくれい　しんらん　　　ごてん　　 つ　　　 ぐぶにん　　もよお　　　
今日、御行始之儀有り。仍て例に任せ庭上の着例を進覽し、御點に就き供奉人を催す。

そ　　あいだ　こといじょう　　くどうのさぶろうさえもんのじょうみつやす これ　　ぶぎょう　　　　ひらおかさえもんのじょうさねとし こしょうあ　　　　よっ　　なり　
其の間の事以上、 工藤三郎左衛門尉光泰 之を奉行す。平岡左衛門尉實俊 故障有るに依て也。

ひつじのこくぎょしゅつ　おくるま　あみびさし
未剋 御出。 御車は網廂。

ぎょけんやく　　ひと
御釼役の人

　　むさしのぜんじともなお
　武藏前司朝直

おんうしろ
御後

　ごい
五位

　　さがみのたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おわりのぜんじときあき
　相摸太郎　　　　　　　　　　　尾張前司時章

　　とおとうみのぜんじときなお　　　　　　　　　　　　　　　　えちごのかみさねとき
　遠江前司時直　　　　　　　　　越後守實時

　　えちぜんぜんじときひろ　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぎょうぶしょうゆうのりとき
　越前々司時廣　　　　　　　　　刑部少輔教時

　　とおとうみうまのすけきよとき　　　　　　　　　　　　　　　　むさしさこんおたいふしょうげんときなか
　遠江右馬助�C時　　　　　　　　武藏左近大夫將監時仲

　　むつさこんのたいふしょうげんよしまさ　　　　　　　　　　だんじょうしょうひつなりとき
　陸奥左近大夫將監義政　　　　　彈正少弼業時

　　さがみのさぶろうときとし　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのしちろうときもと
　相摸三郎時利　　　　　　　　　遠江七郎時基

　　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　　　　　　　　　　えちごのしろうときかた
　新相摸三郎時村　　　　　　　　越後四郎時方

　　みかわのぜんじよりうじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　あいだのじょうすけやすもり
　參河前司頼氏　　　　　　　　　秋田城介泰盛

　　くないごんのたいふときひで　　　　　　　　　　　　　　　いずみのぜんじゆきかた
　宮内權大夫時秀　　　　　　　　和泉前司行方

　　おやまではぜんじながむら　　　　　　　　　　　　　　　　ごとういきのぜんじもとまさ
　小山出羽前司長村　　　　　　　後藤壹岐前司基政

　　もくごんのかみちかいえ　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひゅうがぜんじすけやす
　木工權頭親家　　　　　　　　　日向前司祐泰

　　むとうしょうけいかげより　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かずさのぜんじながやす
　武藤少卿景頼　　　　　　　　　上総前司長泰

　　かいのかみためなり
　甲斐守爲成

ろくい
六位

　　じょうのしろうさえもんのじょうときもり　　　　　　　　　　　おな　　　ろくろうあきもり
　城四郎左衛門尉時盛　　　　　　同じき六郎顯盛

　　しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ　　　　　　　　　いきのしんさえもんのじょうもとより
　式部太郎左衛門尉光政　　　　　壹岐新左衛門尉基頼

　　いずみのさぶろうさえもんのじょうゆきあき　　　　　　　　しなののじろうさえもんのじょうとききよ
　和泉三郎左衛門尉行章　　　　　信濃次郎左衛門尉時�C

　　すおうのごろうさえもんのじょうただかげ　　　　　　　　　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし
　周防五郎左衛門尉忠景　　　　　薩摩七郎左衛門尉祐能

　　いちのみやのじろうさえもんのじょうやすあり　　　　　　ちくぜんのじろうさえもんのじょうゆきより
　一宮次郎左衛門尉康有　　　　　筑前次郎左衛門尉行頼

　　おのでらしんさえもんのじょうゆきみち　　　　　　　　　 かとうさえもんのじょうかげつね
　小野寺新左衛門尉行通　　　　　加藤左衛門尉景經

　　といのしろうさえもんのじょうさねつな　　　　　　　　　　ではのさぶろうひょうえのじょうゆきふじ
　土肥四郎左衛門尉實綱　　　　　出羽三郎兵衛尉行藤

　　ひったいのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　 かまたのさぶろうさえもんのじょうよしなが
　常陸次郎左衛門尉　　　　　　　鎌田三郎左衛門尉義長

　　かまたのじろうひょうえのじょうゆきとし　　　　　　　　　 むとううこんしょうげんよりむら
　鎌田次郎兵衛尉行俊　　　　　　武藤右近將監頼村

おんひきでもの れい　 ごと　　　　ぎょけん　ぎょうぶしょうゆうのりとき　　さきん　さこんたいふしょうげんよしまさ　　はね　くないごんのだいゆうときひで
御引出物 例の如し。御釼は刑部少輔教時。砂金は左近大夫將監義政。羽は宮内權大輔時秀。

　いちのおんうま　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　 あぼのじろうさえもんのじょう
　一御馬　新相摸三郎時村　　　　安保次郎左衛門尉

　いちのおんうま　ちくぜんさぶろうさえもんのじょうゆきざね　おな　　　しろうさえもんのじょうゆきすけ
　一御馬　筑前三郎左衛門尉行實　同じき四郎左衛門尉行佐

　いちのおんうま　さがみのさぶろうときすけ　　　　　　　　なんじょうしんさえもんのじょう
　一御馬　相摸三郎時輔　　　　　南條新左衛門尉

現代語正元二年(1260)正月大一日己巳。将軍への御馳走の振る舞い〔相州禅室時頼の負担〕。両国司相模守政村・武蔵守長時それと政務会議メンバーを始めとする人々が、布衣(狩衣の正装)を着て出仕しました。庭に並ぶ順は何時もの通りです。
　武蔵前司大仏流北条朝直　　　尾張前司名越流北条時章
　相模太郎北条時宗　　　　　　新相模三郎時村
　相模三郎時輔　　　　　　　　遠江前司大仏流北条時直
　陸奥左近大夫将監塩田義政　　越後守金沢流北条実時
　弾正少弼極楽寺流北条業時　　武蔵左近大夫将監時大仏流北条時仲
　尾張左近大夫将監名越公時　　遠江右馬助北条清時
　刑部少輔名越流北条教時　　　越前前司北条時広
　越後右馬助佐助流北条時親　　民部権大輔北条時隆
　越後四郎金沢流北条時方　　　武蔵五郎大仏流北条時忠
　遠江七郎名越流北条時基　　　備前三郎名越流北条長頼
　駿河四郎伊具流北条兼時　　　越後又太郎
　駿河五郎伊具流北条通時　　　新田三河前司頼氏
　長井宮内権大夫時秀　　　　　秋田城介安達泰盛
　中務権少輔重教　　　　　　　武藤少卿景頼
　木工権頭親家　　　　　　　　和泉前司二階堂行方
　那波刑部権少輔政茂　　　　　出羽前司小山長村
　後藤壱岐前司基政　　　　　　伊賀前司小山時家
　長井判官代泰茂　　　　　　　日向前司伊東祐泰
　安芸右近大夫親継　　　　　　島津大隅前司忠時
　上総前司大曾祢長経　　　　　周防前司島津忠綱
　縫殿頭中原師連　　　　　　　甲斐守狩野為成
　後藤壱岐新左衛門尉基頼　　　上総三郎右衛門尉足利満氏
　周防三郎左衛門尉島津忠行　　城四郎左衛門尉安達時盛
　筑前次郎左衛門尉行頼　　　　周防五郎左衛門尉島津忠景
　城六郎安達顕盛　　　　　　　周防六郎左衛門尉島津忠頼
　筑前三郎左衛門尉二階堂行実　城弥九郎安達長景
　筑前四郎左衛門尉二階堂行佐　式部太郎左衛門尉伊賀光政
　小野寺四郎左衛門尉通時　　　大隅蔵人
　常陸次郎左衛門尉二階堂行雄　小野寺新左衛門尉行通
　上野太郎左衛門尉梶原景綱　　出羽七郎左衛門尉二階堂行頼
　善右衛門尉三善康長　　　　　和泉六郎左衛門尉天野景村
　善次郎左衛門尉三善康有　　　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能
　和泉七郎左衛門尉天野景経　　薩摩十郎公員
　土肥四郎実綱　　　　　　　　内藤肥後三郎左衛門尉太宰為成
　狩野五郎左衛門尉為広　　　　伊東次郎左衛門尉盛時
　伊勢三郎左衛門尉頼綱　　　　狩野四郎左衛門尉景茂
　信濃次郎左衛門尉二階堂時清　鎌田図書左衛門尉信俊
　肥後新左衛門尉景氏　　　　　大曽祢太郎左衛門尉長泰
　信濃三郎左衛門尉二階堂行章　狩野帯刀左衛門尉
　加藤左衛門尉景経　　　　　　紀伊次郎左衛門尉為経
　長内左衛門尉　　　　　　　　大泉九郎長氏
　鎌田次郎左衛門尉行俊　　　　鎌田三郎左衛門尉義氏
　進三郎左衛門尉宗長　　　　　善五郎左衛門尉三善康家
　駿河右近大夫　　　　　　　　平賀四郎左衛門尉泰定
出羽前司二階堂行義が時間を伝えました。宗尊親王将軍家がお出ましです。右衛門督顕方が進み出て御簾を上げました。刀持ちは、武蔵前司大仏流北条朝直、弓矢担ぎは、尾張前司名越流北条時章、乗馬袴と乗馬沓は越後守金沢流北条実時です。
　一の馬　遠江七郎名越流北条時基　　　工藤次郎左衛門尉高光
　二の馬　武蔵五郎大仏流北条時忠　　　安東新左衛門尉
　三の馬　出羽七郎左衛門尉行頼　　　　同九郎二階堂宗行
　四の馬　城四郎左衛門尉安達時盛　　　同六郎安達顕盛
　五の馬　伊勢次郎左衛門尉二階堂行経　三郎左衛門尉平頼綱
その後、文書始め式の吉書を見ました。武州長時さんが持ってきました。

今日、お出かけ始めの儀式があります。そこで何時ものように、庭に来ている御家人達を見て、名簿に印を書いてお供の人を命じました。それらの事を含んですべての準備を、工藤三郎左衛門尉光泰が担当しました。平岡左衛門尉実俊が具合が悪く出来ないからです。
午後2時頃出発です。牛車は網代の廂つきです。刀持ちは、武蔵前司大仏流北条朝直。後ろには
五位が
　相模太郎北条時宗　　　　　尾張前司名越流北条時章
　遠江前司大仏流北条時直　　越後守金沢流北条実時
　越前々司北条時広　　　　　刑部少輔名越教時
　遠江右馬助北条清時　　　　武蔵左近大夫将監大仏時仲
　陸奥左近大夫将監塩田義政　弾正少弼極楽寺業時
　相模三郎北条時利（時輔）　遠江七郎名越流北条時基
　新相摸三郎時村　　　　　　越後四郎金沢時方（顕時）
　三河前司新田頼氏　　　　　秋田城介安達泰盛
　宮内権大夫長井時秀　　　　和泉前司二階堂行方
　出羽前司小山長村　　　　　壱岐前司後藤基政
　木工権頭親家　　　　　　　日向前司伊東祐泰
　武藤少卿景頼　　　　　　　上総前司大曽祢長泰
　甲斐守狩野為成
六位
　城四郎左衛門尉安達時盛　　同六郎安達顕盛
　式部太郎左衛門尉伊賀光政　壱岐新左衛門尉後藤基頼
　和泉三郎左衛門尉二階堂行章　信濃次郎左衛門尉時�C
　周防五郎左衛門尉島津忠景　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能
　一宮次郎左衛門尉三善康有　筑前次郎左衛門尉行頼
　小野寺新左衛門尉行通　　　加藤左衛門尉景経
　土肥四郎左衛門尉実綱　　　出羽三郎兵衛尉二階堂行藤
　常陸次郎左衛門尉　　　　　鎌田三郎左衛門尉義長
　鎌田次郎兵衛尉行俊　　　　武藤右近将監頼村
引き出物のお土産は、いつものとおりです。刀は刑部少輔名越教時。砂金は陸奥左近大夫将監塩田義政。鷹の羽は宮内権大夫長井時秀。
　一の馬は、新相摸三郎時村と安保次郎左衛門尉
　二の馬は、筑前三郎左衛門尉二階堂行実と同筑前四郎左衛門尉二階堂行佐
　三の馬は、相模三郎時輔と南条新左衛門尉

参考相摸太郎は、北条時宗だが、11日には六位にいる。
参考相摸三郎時利は、最下行では相摸三郎時輔になっている。
参考越後又太郎は、金沢流北条実時の子。
参考木工權頭親家は、京都から親王についてきた。
参考御點は、合点と同じで将軍がチェックした。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　はれ　　おうばん　〔おうしゅうぜんもん　　さた　〕　　　おんみす　さえもんのかみ
正元二年(1260)正月大二日庚午。�ﾘ。垸飯〔奥州禪門が沙汰〕。御簾は左衛門督。

ぎょけん　おわりのぜんじときあき　　ごちょうど　　えちぜんぜんじときひろ　おんむかばきくつ　あいだのじょうすけやすもり
御釼は尾張前司時章。御調度は越前々司時廣。御行騰沓は秋田城介泰盛。

　いちのおんうま　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　 しきぶのじろうさえもんのじょう
　一御馬　新相摸三郎時村　　　　式部次郎左衛門尉

　　にのおんうま　びぜんのさぶろうながより
　二御馬　備前三郎長頼　

　さんのおんうま　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　おな　　　じゅうろうさえもんのじょうすけひろ
　三御馬　薩摩七郎左衛門尉祐能　同じき十郎左衛門尉祐廣

　よんのおんうま　しなののじろうさえもんのじょうとききよ
　四御馬　信濃次郎左衛門尉時�C　

　　ごのおんうま　すおうのごろうさえもんのじょうただかげ
　五御馬　周防五郎左衛門尉忠景

現代語正元二年(1260)正月大二日庚午。晴れです。将軍への御馳走の振る舞い〔奥州禅門重時の負担〕。御簾を上げるのは、左衛門督。刀の献上は尾張前司名越時章。弓矢の献上は、越前前司北条時広。乗馬袴と乗馬沓は、秋田城介安達泰盛。
　一の馬は、新相摸三郎時村と式部次郎左衛門尉伊賀光長
　二の馬は、備前三郎名越流北条長頼
　三の馬は、薩摩七郎左衛門尉伊東祐能と同十郎左衛門尉伊東祐広
　四の馬は、信濃次郎左衛門尉時清
　五の馬は、周防五郎左衛門尉島津忠景

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　はれ　　おうばん　〔そうしゅう　　さた　〕　　　 おんみす　 さきんご
正元二年(1260)正月大三日辛未。�ﾘ。垸飯〔相州が沙汰〕。御簾は右金吾。

ぎょけん　えちごのかみさねとき　ごちょうど　さこんのたいふしょうげんきんとき　　おんむかばき　いずみのぜんじゆきかた
御釼は越後守實時。御調度は左近大夫將監公時。 御行騰は和泉前司行方。

　いちのおんうま　とおとうみのしちろうときもと　　　　　　　 かすやのさえもんさぶろうゆきむら
　一御馬　遠江七郎時基　　　　　糟谷左衛門三郎行村

　　にのおんうま　しきぶのたいふさえもんのじょうみつまさ　おな　　　うえもんじろう
　二御馬　式部太郎左衛門尉光政　同じき右衛門次郎

　さんのおんうま　ではのくろうむねゆき　　　　　　　　　　　おな　　　じろうひょうえのじょうゆきふじ
　三御馬　出羽九郎宗行　　　　　同じき次郎兵衛尉行藤

　よんのおんうま　じょうのろくろうあきもり　　　　　　　　　　　おな　　　くろうながかげ
　四御馬　城六郎顯盛　　　　　　同じき九郎長景

　　ごのおんうま　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　　しきぶのじろうさえもんのじょうみつなが
　五御馬　新相摸三郎時村　　　　式部次郎左衛門尉光長

現代語正元二年(1260)正月大三日庚午。晴れです。将軍への御馳走の振る舞い〔相州政村の負担〕。御簾を上げるのは、左金吾。刀の献上は越後守金沢流北条実時。弓矢の献上は、左近大夫将監名越公時。乗馬袴と乗馬沓は、和泉前司二階堂行方。
　一の馬は、遠江七郎名越流北条時基と糟谷左衛門三郎行村
　二の馬は、式部太郎左衛門尉伊賀光政と同右衛門次郎
　三の馬は、出羽九郎二階堂宗行と同次郎兵衛尉二階堂行藤
　四の馬は、城六郎安達顕盛と同九郎安達花が景
　五の馬は、新相摸三郎時村と式部次郎左衛門尉伊賀光長

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　はれ　ひょうじょうはじ　　おこなはれ
正元二年(1260)正月大九日丁丑。�ﾘ。評定始め�@を行被る。

参考�@評定始めには、御酒くだされがあるらしい。

現代語正元二年(1260)正月大九日丁丑。晴れです。政務会議の御用始式です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　はれ　　きょうと　　ひきゃくとうちゃく　　　もう　　　　い　　　　　　　こんげつよっか　 おんじょうじ　さんまや　かいだん　 ことせんげくださる　のところ
正元二年(1260)正月大十日戊寅。�ﾘ。京都の飛脚到着し、申して云はく。今月四日、園城寺三摩耶戒壇の事宣下被る之處、

おな　　　 むいか うのこく　　　ひえしゃ　　みこし さんき　　 　ぎおん さんき　　 きたの　にき　　　 きょうごくじ いっき いじょうきゅうき　　みこしじゅらく
同じき六日夘剋、日吉社の神輿三基・祇園三基・北野二基・京極寺一基已上九基の神輿入洛す。

じんとうに　ふ　　　す　たてまつ　　　にきは　 いん　　ごしょ　　ふ　　たてまつ　　　うんぬん
陣頭于振り弃て奉り、二基者院の御所に振り奉ると云々。

参考戒壇は、当時延暦寺と栃木の薬師寺・大宰府の観音寺しかなかった。園城寺は四つ目。参考神輿の入洛は、僧兵の強訴。

現代語正元二年(1260)正月大十日戊寅。晴れです。京都からの伝令が到着して報告して云うには、「今月の四日、三井寺園城寺で新しく開く三摩耶戒壇について、天皇の許可が下りましたが、同月六日の朝六時頃に、日吉神社の神輿三基と祗薗社が三基・北野天神が二基・京極寺が一期の9基の神輿を、これに反対する比叡山延暦寺系の武者僧達が強訴に入京してきました。京都守備隊の陣頭で振り回して置いて行きました。二基は後嵯峨院の御所へ振り回しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  はれ　しょうぐんけ　つるがおか　ぎょさん
正元二年(1260)正月大十一日己夘。�ﾘ。將軍家、鶴岳へ御參。

おくるま 〔ひさし〕
御車〔庇〕

　　ごとういきさえもんのじょうもとより　　　　　　　　　　　　　 かとうさえもんのじょうかげつね
　後藤壹岐左衛門尉基頼　　　　　加藤左衛門尉景經

　　じょうのろくろうあきもり　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ちくぜんしろうさえもんのじょうゆきすけ
　城六郎顯盛　　　　　　　　　　筑前四郎左衛門尉行佐

　　しなののほうがんじろうさえもんのじょうゆきむね　　　　 ひごのしんさえもんのじょうかげうじ
　信濃判官次郎左衛門尉行宗　　　肥後新左衛門尉景氏

　　かのうのしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　いとうのじろうさえもんのじょうもりとき
　狩野四郎左衛門尉　　　　　　　伊東次郎左衛門尉盛時

　　さつまのくろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　いせのさぶろうさえもんのじょうよりつな
　薩摩九郎左衛門尉　　　　　　　伊勢三郎左衛門尉頼綱

　　おのでらしんさえもんのじょうゆきみち　　　　　　　　　　いちのみやのじろうさえもんのじょうやすあり
　小野寺新左衛門尉行通　　　　　一宮次郎左衛門尉康有

　　かまたのさぶろうさえもんのじょうよしなが　　　　　　　　 ひらがのさぶろうさえもんのじょうこれとき
　鎌田三郎左衛門尉義長　　　　　平賀三郎左衛門尉惟時

　　かまたのじろうさえもんのじょうゆきとし
　鎌田次郎左衛門尉行俊

　　　　　　いじょうたいけん　ひたたれ　おくるま　　さゆう　　そうら
　　　以上帶劔に直垂。御車の左右に候う。

ぎょけんやく　　ひと　〔　ほい　　　げぐくり〕
御劔役の人〔布衣に下括〕

　　むさしのぜんじともなお
　武藏前司朝直

ごちょうどがけ　　〔　ほい　　　げぐくり〕
御調度懸〔布衣に下括〕

　　むとうさえもんのじょうよりやす
　武藤左衛門尉頼泰

おんうしろ
御後

　ごい　　〔　ほい　　　げぐくり〕
五位〔布衣に下括り〕

　　おわりのぜんじときあき　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのぜんじときなお
　尾張前司時章　　　　　　　　　遠江前司時直

　　えちごのかみさねとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えちぜんぜんじときひろ
　越後守實時　　　　　　　　　　越前々司時廣

　　えちごのうまのすけときちか　　　　　　　　　　　　　　　ぎょうぶしょうゆうのりとき
　越後右馬助時親　　　　　　　　刑部少輔教時

　　とおとうみのうまのすけきよとき　　　　　　　　　　　　　　おわりのさこんたいふしょうげんきんとき
　遠江右馬助�C時　　　　　　　　尾張左近大夫將監公時

　　むさしのさこんたいふしょうげんときなか　　　　　　　　 みんぶごんのたいふときたか
　武藏左近大夫將監時仲　　　　　民部權大夫時隆

　　だんじょうしょうひつなりとき　　　　　　　　　　　　　　　　むつのさこんたいふしょうげんよしまさ
　彈正少弼業時　　　　　　　　　陸奥左近大夫將監義政

　　おやまのではぜんじながむら　　　　　　　　　　　　　　 くないごんのたいふときひで
　小山出羽前司長村　　　　　　　宮内權大夫時秀

　　こくごんのかみちかいえ　　　　　　　　　　　　　　　　　　あいだのじょうすけやすもり
　木工權頭親家　　　　　　　　　秋田城介泰盛

　　みかわのぜんじよりうじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのぜんじゆきかた
　參河前司頼氏　　　　　　　　　和泉前司行方

　　ごとういきぜんじもとまさ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 すおうのぜんじただつな
　後藤壹岐前司基政　　　　　　　周防前司忠綱

　　いがぜんじときいえ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かずさのぜんじながやす
　伊賀前司時家　　　　　　　　　上総前司長泰

　　かいのかみためとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ひゅうがぜんじすけやす
　甲斐守爲時　　　　　　　　　　日向前司祐泰

　　だざいのしょうにかげより
　太宰少貳景頼

ろくい　　〔　ほい　　　げぐくり〕
六位〔布衣に下括り〕

　　さがみのたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　しろうむねまさ
　相摸太郎　　　　　　　　　　　同じき四郎宗政

　　おな　　　さぶろうときとし　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのしちろうときもと
　同じき三郎時利　　　　　　　　遠江七郎時基

　　えちごのしろうときかた　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しんさがみのさぶろうときむら
　越後四郎時方　　　　　　　　　新相摸三郎時村

　　びぜんのさぶろうながより　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしのごろうときただ
　備前三郎長頼　　　　　　　　　武藏五郎時忠

　　しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ　　　　　　　　　じょうのしろうさえもんのじょうときもり
　式部太郎左衛門尉光政　　　　　城四郎左衛門尉時盛

　　おおそねたろうさえもんのじょうながより　　　　　　　　　しなののじろうさえもんのじょうとききよ
　大曽祢大郎左衛門尉長頼　　　　信濃次郎左衛門尉時�C　

　　とおとうみのじゅうろうさえもんのじょうよりつら　　　　　　おきのさぶろうさえもんのじょうゆきかげ
　遠江十郎左衛門尉頼連　　　　　隱岐三郎左衛門尉行景

　　いせのじろうさえもんのじょうゆきつね　　　　　　　　　　ちくぜんぼさぶろうさえもんのじょうゆきざね
　伊勢次郎左衛門尉行經　　　　　筑前三郎左衛門尉行實

　　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　　　　　　　　つちやのしちろうさえもんのじょうゆきより
　薩摩七郎左衛門尉祐能　　　　　土屋七郎左衛門尉行頼

　　いずみのじろうさえもんのじょうゆきあき　　　　　　　　　ぜんのたろうさえもんのじょうやすなが
　和泉次郎左衛門尉行章　　　　　善太郎左衛門尉康長

現代語正元二年(1260)正月大十一日己卯。晴れです。宗尊親王将軍家は鶴岡八幡宮へ初詣です。牛車は、庇車(物見窓に庇がつく)です。
　後藤壱岐左衛門尉基頼　　加藤左衛門尉景経
　城六郎安達顕盛　　　　　筑前四郎左衛門尉二階堂行佐
　信濃判官次郎左衛門尉二階堂行宗　肥後新左衛門尉天野景氏
　狩野四郎左衛門尉景茂　　伊東次郎左衛門尉盛時
　薩摩九郎左衛門尉　　　　伊勢三郎左衛門尉頼綱
　小野寺新左衛門尉行通　　一宮次郎左衛門尉三善康有
　鎌田三郎左衛門尉義長　　平賀三郎左衛門尉惟時
　鎌田次郎左衛門尉行俊
　　　以上は、鎧直垂を着て太刀を佩いて牛車の左右を警備する
刀持ちの役の人〔正装の布衣で袴は足首で括る〕武蔵前司大仏流北条朝直
弓矢を掛ける人〔正装の布衣で袴は足首で括る〕武藤左衛門尉頼泰
牛車の後ろには、五位〔正装の布衣で袴は足首で括る〕
　尾張前司名越流北条時章　遠江前司大仏流北条時直
　越後守金沢流北条実時　　越前前司北条時広
　越後右馬助北条時親　　　刑部少輔名越流北条教時
　遠江右馬助北条清時　　　尾張左近大夫将監名越公時
　武蔵左近大夫将監大仏時仲　民部権大夫佐助時隆
　弾正少弼極楽寺業時　　　陸奥左近大夫将監塩田義政
　小山出羽前司長村　　　　宮内権大夫長井時秀
　木工権頭藤原親家　　　　秋田城介安達泰盛
　三河前司新田頼氏　　　　和泉前司二階堂行方
　後藤壱岐前司基政　　　　周防前司島津忠綱
　伊賀前司小田時家　　　　上総前司大曽祢長泰
　甲斐守狩野為時　　　　　日向前司伊東祐泰
　太宰少弐武藤景頼
六位〔正装の布衣で袴は足首で括る〕
　相模太郎北条時宗　　　　同四郎宗政
　同三郎時利　　　　　　　遠江七郎時基
　越後四郎金沢時方　　　　新相摸三郎時村
　備前三郎長頼　　　　　　武蔵五郎時忠
　式部太郎左衛門尉伊賀光政　城四郎左衛門尉安達時盛
　大曽祢太郎左衛門尉長　　信濃次郎左衛門尉二階堂時�C
　遠江十郎左衛門尉頼連　　隠岐三郎左衛門尉二階堂行景
　伊勢次郎左衛門尉二階堂行経　筑前三郎左衛門尉二階堂行実
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　土屋七郎左衛門尉行頼
　和泉次郎左衛門尉二階堂行章　善太郎左衛門尉三善康長

参考相摸太郎は、北条時宗だが、1日には五位にいる。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  はま　　をい　　みまと　　　いて　の　こころ　あ　　　　　そ　　　いて　じゅうさんにん せんていさる　　　ひとごど　これ　　い
正元二年(1260)正月大十二日庚辰。濱に於て御的の射手之試み有り。其の射手十三人を撰定被る。一五度之を射る。

　　　　　いて
　　射手

　　いちばん
　一番

　　　　 はやかわのじろうたろう
　　早河次郎太郎　　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　●●●●○　九　　　　　　　　　　　　　 　　

　　　　しぶやのさえもんたろう
　　澁谷左衛門太郎　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　○●○●●　八

　　　にばん
　二番

　　　ひらしまのいやごろう
　　平嶋弥五郎　　　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　●●●●○　九　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　おかもとのしんひょうえのたろう
　　岡本新兵衛太郎　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　●○●●●　九

　　さんばん
　三番

　　　　さぬきのしちろう
　　佐貫七郎　　　　　●○○●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　●○○●●　六　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　ふじさわのさえもんごろう
　　藤澤左衛門五郎　　○○●○●
　　　　　　　　　　　　　　　　　○●●●●　六

　　よんばん
　四番

　　　　ふじさわのさこんしょうげん
　　藤澤左近將監　　　●●○●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　●●○●●　八

　　　　うんののいやしろう
　　海野矢四郎　　　　○○●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　●●●●●　八

　　　ごばん
　五番

　　　　くわばらのへいない
　　桑原平内　　　　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　●●●●●　十

　　　　くどうのいやさぶろう
　　工藤弥三郎　　　　●●○●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　○●●●●　八

　　ろくばん
　六番

　　　　ほんまのいやしろうさえもんのじょう
　　本間弥四郎左衛門尉●○●●○
　　　　　　　　　　　　　　　　　○●●●●　七

　　　　かしまのさえもんじろう
　　栢間左衛門次郎　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　●●●●○　九

　　ななばん
　七番

　　　　くどうのはちろう
　　工藤八郎　　　　　○○●○●
　　　　　　　　　　　　　　　　　○●○○○　三

現代語正元二年(1260)正月大十二日庚辰。由比ガ浜で、的始めの射手の試がありました。その射手13人を選びました。二本五度を一回射ました。
　　　射手
　一番　早川次郎太郎　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　●●●●〇　九当り
　　　　渋谷左衛門太郎　●●●●●
　　　　　　　　　　　　〇●〇●●　八当り

　二番　平島弥五郎　　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　●●●●〇　九当り
　　　　岡本新兵衛太郎　●●●●●
　　　　　　　　　　　　●〇●●●　九当り

　三番　佐貫七郎　　　　●〇〇●●
　　　　　　　　　　　　●〇〇●●　六当り
　　　　藤沢左衛門五郎　〇〇●〇●
　　　　　　　　　　　　〇●●●●　六当り

　四番　藤沢左近将監　　●●〇●●
　　　　　　　　　　　　●●〇●●　八当り
　　　　海野矢四郎　　　〇〇●●●
　　　　　　　　　　　　●●●●●　八当り

　五番　桑原平内　　　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　●●●●●　十当り
　　　　工藤弥三郎　　　●●〇●●
　　　　　　　　　　　　〇●●●●　八当り

　六番　本間弥四郎　　　●〇●●〇
　　　　　　　　　　　　〇●●●●　七当り
　　　　栢間左衛門二郎　●●●●●
　　　　　　　　　　　　●●●●〇　九当り

　七番　工藤八郎　　　　〇〇●〇●
　　　　　　　　　　　　〇●〇〇〇　三当り

推測的矢の時は、12日と14日との記事から一五度は、二本づつ五度の意味らしい。二五度は二本づつ五度を二回らしい。おそらく先に白丸を書いておいて、当ったら中を塗りつぶしたのであろう。　　　　　　　　　　　　　　　

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  はれ　とらのこくらいめい　　きょう　　おんゆみはじ　　あ　　　　ふたごど　なり
正元二年(1260)正月大十四日壬午。�ﾘ。寅尅雷鳴。今日、御弓始め有り。二五度也。

いちばん　はやかわのじろたろうすけやす
一番　早河次郎太郎祐泰　　　●●●●●　□　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　●●●○●　九　●●○●●　九

　　　　　　しぶやのさえもんたろうともしげ
　　　澁谷左衛門太郎朝重　　●●●●●　□　○●●●○
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●○○●○　七　○●●●●　七

　にばん　ひらしまのいやごろうすけつね
二番　平嶋弥五郎助經　　　　●●●●●　□　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●○●●●　九　○○●●● 八　

　　　　　　おかもとのしんひょうえのじょうしげかた
　　　岡本新兵衛尉重方　　　○●○●○　□　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　○○●○●　四　○●●●●　九

さんばん　さぬきのしちろうひろたね
三番　佐貫七郎廣胤　　　　　●●●●●　□　●●○●○
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　○○●●○　七　●●●○●　七

　　　　　　ふじさわのさえもんごろうみつとも
　　　藤澤左衛門五郎光朝　　●●○●●　□　○●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●●●●○　八　●●●●●　九

よんばん　ふじさわのさこんしょうげん
四番　藤澤左近將監　　　　　○●●○●　□　●○○●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　○●●●●　七　○●●○○　五

　　　　　　うんののいやしろう
　　　海野矢四郎�@ 　　　　　●●○●●　□　●●●○●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　○○○●●　六　○○●○●　六

　ごばん　くわばらのへいない
五番　桑原平内　　　　　　　●○●●●　□　●●●○●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●●●●●　九　●●●●●　九

　　　　　　くどうのいやさぶろう
　　　工藤弥三郎　　　　　　○●●●○　□　○●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●●●○●　七　●●○○●　七

ろくばん　ほんまのいやしろうさえもんのじょうただとき
六番　本間弥四郎左衛門尉忠時○○●●●　□　○●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　○●●●●　七　●●○●●　八

　　　　　　かしまのさえもんじろうすえただ
　　　栢間左衛門次郎季忠　　●●●●●　□　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●●●○○　八　●●○●●　九

参考�@矢四郎は、弥四郎が正しいと思われるが、海野は全て矢四郎で出演なので字名かも知れない。

現代語正元二年(1260)正月大十四日壬午。晴れです。午前4時頃雷が鳴りました。今日、弓始めの行事がありました。二本五度を二回です。
一番は、早河次郎太郎祐泰　　　●●●●●　　　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●●●○●　九　●●○●●　九
　　　　渋谷左衛門太郎朝重　　●●●●●　　　　○●●●○
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●○○●○ 七　○●●●●　七

二番は、平島弥五郎助経　　　　●●●●●　　　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●○●●●　九　○○●●● 八
　　　　岡本新兵衛尉重方　　　○●○●○　　　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ○○●○●　四　○●●●●　九

三番は、佐貫七郎広胤　　　　　●●●●●　　　　●●○●○
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ○○●●○　七　●●●○●　七
　　　　藤沢左衛門五郎光朝　　●●○●●　　　　○●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●●●●○　八　●●●●●　九

四番は、藤沢左近将監時親　　　○●●○●　　　　●○○●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ○●●●●　七　○●●○○　五
　　　　海野矢四郎助氏　　　　●●○●●　　　　●●●○●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ○○○●●　六　○○●○●　六

五番は、桑原平内盛時　　　　　●○●●●　　　　●●●○●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●●●●●　九　●●●●●　九
　　　　工藤弥三郎　　　　　　○●●●○　　　　○●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●●●○●　七　●●○○●　七

六番は、本間弥四郎左衛門尉忠時○○●●●　　　　○●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ○●●●●　七　●●○●●　八
　　　　柏間左衛門次郎季忠　　●●●●●　　　　●●●●●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●●●○○　八　●●○●●　九

推測的矢の時は、12日と14日との記事から一五度は、二本づつ五度の意味らしい。二五度は二本づつ五度を二回らしい。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きょう　　ごしょちゅう　　をい　　　　ひる　　ばんしゅう　さだ　　おかれ
正元二年(1260)正月大廿日戊子。今日、御所中に於て、晝の番衆を定め置被る。

 そ　　 うち そうし　　 をい　　は　　　かどう　　 けまり　　 かんげん　　ゆうひつ　きゅうば　えいきょく いげ　　　すべ　いちげい　 たえ　　のやから　　もっ
其の内壯士に於て者、哥道・蹴鞠・管絃・右筆・弓馬・郢曲�@以下、都て一藝に堪る之輩を以て、

とき　　をい　　ごろう　あ　　　べ　　　　　よっ　　　　けちばん　　さだ　　らる
時に於て御要有る可きに依て、結番�Aを定め被る。

さんぬ　ころ　　ごよう　のとき　　むじんのあいだ　　こと　　もっ　　ｋかく　　ごさた　　いできた
去る比、御要之時、無人之間、殊に以て此の御沙汰出來る。

よっ　　こさむらいしゅう　げいのうのやからをもくろく　　　たびたび　そうしゅうぜんもん　　おお　　あわされ　　ちじょう　　　　うんぬん
仍て小侍衆、藝能之輩於目六�Bし、度々、相州禪門に仰せ合被、治定すと云々。

くどうのさぶろううえもんのじょうみつやすこれ　　ぶぎょう　　　　じょうのしろうさえもんのじょうせいしょたり
工藤三郎右衛門尉光泰之を奉行す。城四郎左衛門尉�C書爲。

　　　　　　　　　さだめ
　　　　定

　　　　　　 ひるばん　　こと　〔しだいふどう〕
　　　晝番の事〔次第不同〕

　　いちばん　〔ねうま〕
　一番〔子午〕

　　　　さがみのたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だんじょうしょうひつなりとき
　　相摸太郎　　　　　　　　　　彈正少弼業時

　　　　おわりさこんのたいふしょうげん　〔きんとき〕　　　　みんぶごんのだいゆうときたか
　　尾張左近大夫將監〔公時〕　　民部權大輔時隆

　　　　あしかがかずさのさぶろう　　　　　　　　　　　　　 あいだのじょうすけやすもり
　　足利上総三郎　　　　　　　　秋田城介泰盛

　　　　おな　　　ろくろうあきもり　　　　　　　　　　　　　　しもつけのしろうさえもんのじょうかげつな
　　同じき六郎顯盛　　　　　　　下野四郎左衛門尉景綱

　　　　とおとうみのじゅうろうさえもんのじょう 〔よりつら〕　 ちくぜんのごろうさえもんのじょう　〔ゆきしげ〕
　　遠江十郎左衛門尉〔頼連〕　　筑前五郎左衛門尉〔行重〕

　　　　むとうさえもんのじょう　　　〔よりやす〕　　　　　　　　しなののごろうさえもんのじょう　　〔ゆきむね〕
　　武藤左衛門尉〔頼泰〕　　　　信濃五郎左衛門尉〔行宗〕

　　　　しぶやのさえもんたろう　　　〔ともしげ〕
　　澁谷左衛門太郎〔朝重〕

　　にばん　〔うしひつじ〕
　二番〔丑未〕

　　　　えちぜんぜんじ　〔ときひろ〕　　　　　　　　　　　　　とおとうみうまのすけ　〔きよとき〕
　　越前々司〔時廣〕　　　　　　遠江右馬助〔�C時〕

　　　　むさしのごろう　　〔ときただ〕　　　　　　　　　　　　　 いずみのぜんじ　〔ゆきかた〕
　　武藏五郎〔時忠〕　　　　　　和泉前司〔行方〕

　　　　でわのたいふほうがん　　 〔ゆきあり〕　　　　　　　　 いずみのじろうさえもんのじょう　〔ゆきあき〕
　　出羽大夫判官〔行有〕　　　　和泉次郎左衛門尉〔行章〕

　　　　あわじのまたしろうさえもんのじょう　　 〔むねやす〕　しきぶのたろうさえもんのじょう　〔みつまさ〕
　　淡路又四郎左衛門尉〔宗泰〕　式部太郎左衛門尉〔光政〕

　　　　おきのさぶろうさえもんのじょう　　 〔ゆきかげ〕　　　 おおすがしんさえもんのじょう　 〔ともうじ〕
　　隱岐三郎左衛門尉〔行景〕　　大須賀新左衛門尉〔朝氏〕

　　　　さぬきのしちろう　〔ひろたね〕　　　　　　　　　　　　　えどのしちろうたろう　 　〔ながみつ〕
　　佐貫七郎〔廣胤〕　　　　　　江戸七郎太郎〔長光〕

　　　　おおいずみのくろう　〔うじひろ〕
　　大泉九郎〔氏廣〕

　　さんばん　〔とらさる〕
　三番〔寅申〕

　　　　むつさこんのたいふしょうげん　　 〔よしまさ〕　　　　さがみのさぶろう　〔ときすけ〕
　　陸奥左近大夫將監〔義政〕　　相摸三郎〔時輔〕

　　　　びぜんのさぶろう　〔ながより〕　　　　　　　　　　　　　 おやまのでわぜんじ　　　〔ながむら〕
　　備前三郎〔長頼〕　　　　　　小山出羽前司〔長村〕

　　　　こうづけたいふのほうがん 〔ひろつな〕　　　　　　　　おおすみしゅりのすけ 〔ひさとき〕
　　上野大夫判官〔廣綱〕　　　　大隅修理亮〔久時〕

　　　　じょうのしろうさえもんのじょう　〔ときもり〕　　　　　　 すおうのごろうさえもんのじょう　　〔ただかげ〕
　　城四郎左衛門尉〔時盛〕　　　周防五郎左衛門尉〔忠景〕

　　　　こうじまのこじろう　　　 〔ときむら〕　　　　　　　　　　 ちくぜんのじろうさえもんのじょう　　〔ゆきより〕
　　幸嶋小次郎〔時村〕　　　　　筑前次郎左衛門尉〔行頼〕

　　　　でわのしちろうさえもんのじょう　　 〔ゆきより〕　　　 いちのみやのじろうさえもんのじょう　〔やすあり〕
　　出羽七郎左衛門尉〔行頼〕　　一宮二郎左衛門尉〔康有〕

　　　　ほんまのいやしろうさえもんのじょう　 〔ただとき〕
　　本間弥四郎左衛門尉〔忠時〕

　　よんばん　〔う　とり〕
　四番〔卯酉〕

　　　　しんさがみのさぶろう　〔ときむら〕　　　　　　　　　　　えちぜんうまのすけ　　〔ときちか〕
　　新相摸三郎〔時村〕　　　　　越後右馬助〔時親〕

　　　　くないごんのだいゆう　〔ときひで〕　　　　　　　　　　　もくごんのかみ　〔ちかいえ〕
　　宮内權大輔〔時秀〕　　　　　木工權頭〔親家〕

　　　　ひゅうがぜんじ　　〔すけやす〕　　　　　　　　　　　　 じょうのいやしろう　〔ながかげ〕
　　日向前司〔祐泰〕　　　　　　城弥四郎〔長景〕

　　　　おおそねのたろうさえもんのじょう　　 〔ながつね〕　こうづけのじゅうろう 〔ともむら〕
　　大曽祢太郎左衛門尉〔長經〕　上野十郎〔朝村〕

　　　　かとうろうさえもんのじょう 〔かげつね〕　　　　　　　　　たけいしのしろうさえもんのじょう 〔ながたね〕
　　加藤左衛門尉〔景經〕　　　　武石四郎左衛門尉〔長胤〕

　　　　あそぬまのこじろう　　　　〔みつつな〕　　　　　　　　　はたののこじろう　　　　〔さだつね〕
　　阿曽沼小次郎〔光綱〕　　　　波多野小次郎〔定經〕

　　　　おのでらしんさえもんのじょう 〔ゆきみち〕
　　小野寺新左衛門尉〔行通〕

　　ごばん　〔たついぬ〕
　五番〔辰戌〕

　　　　ぎょうぶしょうゆう　〔のりとき〕　　　　　　　　　　　　　 とおとうみのしちろう 〔ときもと〕
　　刑部少輔〔教時〕　　　　　　遠江七郎〔時基〕

　　　　にったみかわのぜんじ　〔よりうじ〕　　　　　　　　　　ぬいどののとう　〔もろつら〕
　　新田三河前司〔頼氏〕　　　　縫殿頭〔師連〕

　　　　みまさかひょうえくらんど　〔いえのり〕　　　　　　　　 じょうのごろうさえもんのじょう 〔しげかげ〕
　　美作兵衛藏人〔家教〕　　　　城五郎左衛門尉〔重景〕

　　　　かわごえのじろう 〔つねしげ〕　　　　　　　　　　　　　ちくぜんのしろうさえもんのじょう 〔ゆきすけ〕
　　河越次郎〔經重〕　　　　　　筑前四郎左衛門尉〔行佐〕

　　　　かいのさぶろうさえもんのじょう  〔ためなり〕　　　　　　といのしろう　　 〔さねつな〕
　　甲斐三郎左衛門尉〔爲成〕　　土肥四郎〔實綱〕

　　　　ぜんのごろうさえもんのじょう 〔やすいえ〕　　　　　　 もみじのしろうさえもんのじょう 　〔かげうじ〕
　　善五郎左衛門尉〔康家〕　　　椛野四郎左衛門尉〔景氏〕

　　　　にのみやのいやじろう 〔ときもと〕
　　二宮弥次郎〔時元〕

　　ろくばん　〔み　い〕
　六番〔巳亥〕

　　　　えちごのかみ 〔さねとき〕　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　しろう　　〔あきとき〕
　　越後守〔實時〕　　　　　　　同じき四郎〔顯時〕

　　　　ごとういきぜんじ　　　　〔もとまさ〕　　　　　　　　　　　むとうしょうけい　 〔かげより〕
　　後藤壹岐前司〔基政〕　　　　武藤少卿〔景頼〕

　　　　かずさぜんじ　　〔ながやす〕　　　　　　　　　　　　　 さどのごろうさえもんのじょう　〔もとたか〕
　　上総前司〔長泰〕　　　　　　佐渡五郎左衛門尉〔基隆〕

　　　　いきのしんさえもんのじょう　 〔もとより〕　　　　　　　　いせのさぶろうさえもんのじょう 〔よりつな〕
　　壹岐新左衛門尉〔基頼〕　　　伊勢三郎左衛門尉〔頼綱〕

　　　　さつまのしちろうさえもんのじょう　 〔すけよし〕　　　　ひごのしんさえもんのじょう 〔かげうじ〕
　　薩摩七郎左衛門尉〔祐能〕　　肥後新左衛門尉〔景氏〕

　　　　かまたのじろうひょうえのじょう 〔ゆきとし〕　　　　　　　しぶやのさぶろうたろう　〔しげむら〕
　　鎌田次郎兵衛尉〔行俊〕　　　澁谷三郎太郎〔重村〕

　　　　はやかわのじろたろう　　〔すけやす〕
　　早河次郎太郎〔祐泰〕

　　みぎ　　しだい　　まも　　　おのおの さんきんせし　　べ　　　のじょう　　おお　　　よっ　　さだ　　　ところ　くだん　ごと
　右、次第を守り、 各　參勤令む可き之状、仰せに依て定める所 件の如し。

　　　　　　　　　 しょうげんにねんしょうがつにち
　　　　　正元二年正月日

参考�@郢曲は、(1)〔中国の春秋時代、楚(そ)の都である郢の人が歌った俗曲の意〕流行歌曲。はやり歌。俗曲。(2)催馬楽(さいばら)・風俗歌(ふぞくうた)・朗詠・今様(いまよう)など、中古・中世の歌謡類の総称。
参考�A結番は、班を組む。
参考�B目六は、目録。
参考相摸三郎〔時輔〕の時輔は後からの書き込みなので、この時点での実名は、時利だと思われる。

現代語正元二年(1260)正月大二十日戊子。今日、御所の将軍の前で、昼間将軍に仕える当番を決め置きました。その青年たちは、歌道・蹴鞠・管弦・文筆・馬上弓・流行歌など、何か一芸に秀でている連中にして、暇な時に将軍の慰めの相手をするために、班を組んだ当番を決めたのです。ある時、何か思いついた時に誰も居なかったので、特に要望したので、このような事が生じたのです。それで、将軍の世話をする小侍の連中が、芸能の達者を書き出して、何度か相州禅門時頼に横断して決めたんだそうな。工藤三郎右衛門尉光泰が指揮担当して、城四郎左衛門尉安達時盛が清書しました。
　　　　決め事
　　　昼間の当番について<順不同>
　一番〔子と午の日〕
　　相模太郎北条時宗　　　　　　弾正少弼極楽寺流北条業時
　　尾張左近大夫将監名越公時　　民部権大輔北条時隆
　　上総三郎右衛門尉足利満氏　　秋田城介安達泰盛
　　城六郎安達顕盛　　　　　　　下野四郎左衛門尉宇都宮景綱
　　遠江十郎左衛門尉頼連　　　　信濃五郎左衛門尉二階堂行氏宗
　　渋谷左衛門太郎朝重
二番〔丑と未の日〕
　　越前前司北条時広　　　　　　遠江右馬助北条清時
　　武蔵五郎大仏流北条時忠　　　和泉前司二階堂行方
　　出羽大夫判官二階堂行有　　　和泉次郎左衛門尉行章
　　淡路又四郎左衛門尉長沼宗泰　式部太郎左衛門尉伊賀光政
　　隠岐三郎左衛門尉二階堂行氏　大須賀新左衛門尉朝氏
　　佐貫七郎広胤　　　　　　　　江戸七郎太郎長光
　　大泉九郎氏広
三番〔寅と申の日〕
　　陸奥左近大夫将監塩田義政　　相模三郎時輔
　　備前三郎名越流北条長頼　　　小山出羽前司長村
　　上野大夫判官広綱　　　　　　大隅修理亮島津久時
　　城四郎左衛門尉安達時盛　　　周防五郎左衛門尉島津忠景
　　幸島小次郎時村　　　　　　　筑前次郎左衛門尉二階堂行頼
　　出羽七郎左衛門尉二階堂行頼　一宮次郎左衛門尉康有
　　本間弥四郎左衛門尉忠時
四番〔卯と酉の日〕
　　新相模三郎時村　　　　　　　越後右馬助佐助流北条時親
　　宮内権大輔長井時秀　　　　　木工権頭親家
　　日向前司宇佐美祐泰　　　　　城弥四郎安達長景
　　大曽祢太郎左衛門尉長経　　　上野十郎結城朝村
　　加藤左衛門尉景経　　　　　　武石四郎左衛門尉長胤
　　阿曾沼小次郎光綱　　　　　　波多野小次郎定経
　　小野寺新左衛門尉行通
五番〔辰と戌の日〕
　　刑部少輔名越流北条教時　　　遠江七郎名越時基
　　新田三河前司頼氏　　　　　　縫殿頭中原師連
　　美作兵衛蔵人家教　　　　　　城五郎左衛門尉安達重景
　　河越次郎経重　　　　　　　　筑前四郎左衛門尉二階堂行佐
　　甲斐三郎左衛門尉為成　　　　土肥四郎実綱
　　善五郎左衛門尉三善康家　　　椛野四郎左衛門尉景氏
　　二宮弥次郎時基
六番〔巳と亥の日〕
　　越後守金沢流北条実時　　　　同四郎北条顕時
　　後藤壱岐前司基政　　　　　　武藤少卿景頼
　　上総前司大曽祢長泰　　　　　後藤五郎左衛門尉基隆
　　壱岐新左衛門尉後藤基頼　　　伊勢三郎左衛門尉平頼綱
　　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　　肥後新左衛門尉天野景氏
　　鎌田次郎兵衛尉行俊　　　　　渋谷三郎太郎重村
　　早川次郎太郎祐泰
　　　右の順番を守り、それぞれ勤務するようにとの定め書は、将軍の仰せに従って決めたのはこの通りです。
　　　　　　正元二年正月　日

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  せちざい やから きんあつすべ　　のよし　　そ　　　さた　 あ　　　　　ことがき　　さだ　 らる　　　　うんぬん
正元二年(1260)正月大廿三日辛卯。殺罪�@の輩を禁遏可き之由、其の沙汰有り。事書�Aを定め被ると云々。

　 ひとつ　ろくさいびなら　　　　　にき　　　ひがん　　せっしょう　こと
　一　六齋�B日并びに二季の彼岸に殺生の事

　　みぎ　　　ぎょべつのたぐい　きんじゅうのともがら　いのち　おも　　　　　　　　　さんがく　　こ　　　　　　み　　うれ　　　　じんりん　 おな
　右は、魚鼈之類、禽獸之彙も、命を重んずること山岳に逾え、身を憂うは人倫に同じ。

　　これ　　よっ　　ざいごうのはなはだ　　　　　　　せっしょう　すぎ　　　　　 な　　　　　これもっ　　ぶっきょう のきんかいこれおも　　　せいだい　きゃくしき へいえんなり
　茲に因て罪業之甚しきこと、殺生に過たるは無し。是以て佛教 之禁戒 惟重く、聖代の格式 炳焉也。

　 しから　すなは　くだん　ひび　　はや　　ぎょもうを　こうかい　　きん　　　　よろ　　　しゅりょうを さんや　　 と　　　　　なり
　然ば則ち件の日々、早く魚網於江海に禁じ、宜しく狩獵於山野に停むる也。

　　いまよ　　　いご　　　かた　　こ　　　せい　　まも　　　　いっさいちょうじ　したが　べ
　今自り以後、固く此の制を守り、一切停止に随う可し。

　　も　　　なおきんあつ　そむ　　　いはん　やからあ　　　ば　　　ごけにん　　 いた　　　　 は　 きょうみょう　ちゅうしんせし
　若し猶禁遏に背き、違犯の輩有ら者、御家人に至りて者、交名を注進令め。

　　ぼんげ　やから　をい　　は　　　ざいか　　　くわ　　　　べ　　　のよし　　しょこく　の しゅご なら　　　　 ぢとうら　　　 おお　　らる　　べ
　凡下�Dの輩に於て者、罪科を加へる可き之由、諸國之守護并びに地頭等へ仰せ被る可し。

　　ただ　 かぎ　　あ　　 じんじゃのまつり　 いた　　　 は　　せいきんのかぎ　　　あらず
　但し限り有る神社之祭に至りて者、制禁之限りに非〔矣〕。

現代語正元二年(1260)正月大二十三日辛卯。殺生の罪を犯した者は、罰するようにその検討があり、条文を決められましたとさ。
　一つ　六歳日それと春と秋のお彼岸に殺生(生き物を殺す)について
　　右については、魚や亀の水生動物、野山のけだものの、命を大切に思う心は山よりも高く、体を厭うのは人と変わらないのである。
　　であるから、罪深いことは、殺生が一番いけないのである。そう云う訳で仏教の禁止諫めているのは重大な事で、仏教の理論に明らかである。
　　そこで、それらの日には、漁業の網張を近所の海では禁止し、また山野での狩猟を停止するものである。
　　今から以降は、固くこの制度を守って、一切停止命令にしたがいなさい。
　　もし、この禁止命令に違反した者がいたならば、御家人の場合は名前を書きだして届けなさい。
　　一般人の場合は、罪人として罰を与えなさいとの命令を、諸国の守護人それと地頭に命じなさい。
　　但し、納税としての神社の祭りへの奉納は、禁止する必要はありません。

参考�@殺罪は、動物を殺す。
参考�A事書は、本来一つ何々がなんとかの事となりと、法律になる。
参考�B六齋は、仏語で、特に身を慎み持戒清浄であるべき日と定められた六か日のことで、月の８，１４，１５，２３、２９、３０日を云うとのこと。六齋日は、生臭を食べない。
参考�C炳焉は、明らか。
参考�D凡下は、御家人以外の一般人。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  はれ　 おんじょうじ　しゅうと　　 ししゃさんちゃく　　　もう　　　　 い
正元二年(1260)正月大廿六日壬辰。�ﾘ。園城寺�@衆徒の使者參着し、申して云はく。

こんげつよっか　　とうじ　さんまや　かいだん　 ことせんげさる　　のところ　 おな　　　 じゅうよっかさんと　いんさんじ　 　　　これ　 うった　もう
今月四日、當寺三摩耶�A戒壇�Bの事宣下被る之處、同じき十四日山徒�C院參時に、之を訴え申す。

おな　　にじゅうににちめしかえさる　　うんぬん　あまつさ　じもん　　やきはら　　べ　　　のよし　　やまそうほうき　　　　　ことすで　ちょうけ　　しょうじ　　いちじ　　 めつぼうたり
同じき廿二日召返被ると云々。剩へ寺門�Dを燒拂う可き之由、山僧蜂起す。縡已に朝家の勝事�E、一寺の滅亡爲。

参考�@園城寺は、三井寺。
参考�A三摩耶は、三昧耶戒（さんまやかい）とは、仏教の教えの一つである「後期大乗仏教」に分類される密教において、その教えを学ぶ前に結縁や許可を目的とする灌頂の儀式を通じて、これから密教を学ぶための資格と義務として、信者や僧侶・瑜伽行者らに与えられる「密教独自の戒律」を指して言う。三昧耶（samaya：サマヤ）とはサンスクリット語で「約束」や「契約」を意味し、三昧耶戒は「（仏との）約束に基づく戒め」、あるいは「密教における誓約」というような意味になる。。
参考�B戒壇は、比叡山延暦寺、下野の薬師寺、大宰府の観音寺だけだった。
参考�C山徒は、延暦寺の武者僧。
参考�D寺門は、園城寺。
参考�E勝事は、忌み言葉で、とても悪い事をあえて反対に書く。

現代語正元二年(1260)正月大二十六日壬辰。晴です。三井寺園城寺の武者僧の使いがやってきて、云うのには「今月四日、三井寺の灌頂儀式用の戒壇の許可を天皇が発したところ、同日の十四日に比叡山の武者僧が院へ押しかけて、中止を強引に訴えました（強訴）。仕方なく二十二日に取り消しましたそうな。それでも足らずに三井寺を焼き払おうと延暦寺の武者僧が立ち上がりました。これは大変な事で、朝廷を祈るお寺が一つ消えてしまうことになります。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  さんぬ　にじゅうににち　しんよ　　きざ　　　　おな　　　にじゅうさんにち　みいでら　　 しゅうとぶんさん　　　　うんぬん
正元二年(1260)正月大廿九日乙未。去る 廿二日、神輿歸座す。同じき 廿三日 三井寺の衆徒分散すと云々。

現代語正元二年(1260)正月大二十九日乙未。先日の二十二日に比叡山の武者僧はお神輿を山へ返しました。それを聞いて同じ二十三日に三井寺の武者僧も武装を解きましたとさ。

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吾妻鏡入門第四十九巻