吾妻鏡入門第四十九巻 　

文應元年(1260)九月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　たつのこく　 しょうぐんけ　 おんもくよく　 ごげんざ いいん のやからら ろく　 あず　　　　　まり　 おんつぼ　 をい　　そ　　　ぎ　あ
文應元年(1260)九月小五日庚午。�ﾘ。辰剋、將軍家 御沐浴。御驗者醫�@陰�A之輩等 祿に預かる。鞠の御壷に於て其の儀有り。

ごんのじいながよ　おんみょうだいじょうきよもとあそん　おのおの おんぞいちりょう　たま　　　　　ぎょけんひとこし　　ぼうもんさんみ　〔きよもときょう　のうし　〕　おんぞ　　と　　りょうにん　　たま
權侍醫�B長世・陰陽大允�C茂朝臣、　各　御衣一領を賜はる。御釼一腰。坊門三位〔�C基卿。直衣〕御衣�Cを取り兩人に給はる。

さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし おんうま　〔くら　　お　　〕　　　ひ　　　　　また　　か　 りょうにんを なかごしょ　　めされ　　 おんぞ　 たま
 薩摩七郎左衛門尉祐能 御馬〔鞍を置く〕を引く。亦、彼の兩人於中御所�Dへ召被、御衣を給はる。

つい　ためちかあそん　め　　　　にょぼう べっとうのつぼね　もっ　ぎんけんひとこし　たま
次で爲親朝臣を召し、女房 別當局を 以て銀釼一腰を給はる。

まつどのほういんりょうき ようい な　　　　よっ　　　　はやいでのあいだ　　おんぞ　　ぎょけん　　おんうまいっぴき　〔くら　　お　　〕　　をくだん　すくぼう　 おく　 つか　 さる
 松殿法印良基 用意無きに依て、早出 之間、 御衣・御釼・ 御馬一疋〔鞍を置く〕於件の宿坊へ送り遣は被る。

いずみのぜんじゆきかたおんしたり　　また　　ごしょ　 をい　 ほくとほう　〔なぬかにち〕　　　しゅうさる　　　わかみやべっとうそうじょう これ　ほうし
和泉前司行方御使爲。又、御所に於て北斗法〔七ケ日〕を修被る。　若宮別當僧正 之を奉仕す。

参考�@醫は、医者。
参考�A陰は、陰陽師。
参考�B權侍醫は、仮の天皇を見る医者(身分)。
参考�C御衣は、高貴の者が着た服。おんぞ。五衣とも書く。
参考�D中御所は、将軍の奥さんで近衛宰子。その居場所。

現代語文応元年(1260)九月小五日。晴れです。午前8時頃、宗尊親王将軍家は病の気を洗い流すための沐浴。加持祈祷者、医者、陰陽師の連中が褒美をもらいました。蹴鞠用の坪庭でその儀式がありました。朝廷の医者長世と陰陽師の安陪清茂さんが、それぞれ着物一着を貰いました。刀が一振り。坊門三位清基さん〔直衣〕が衣を取って両人に渡しました。薩摩七郎左衛門尉伊東祐能は馬〔鞍置き〕を引いて来ました。また、その二人を将軍の奥さんの居所へお呼びになって、将軍の着物を与えました。次に安陪為親さんをお呼びになり、女官の別当局を通じて銀ごしらえの刀を一振り与えました。松殿法印良基には、準備が無かったので、早朝出勤の間に、着物、刀、馬一頭〔鞍置き〕を彼の宿舎へ送り届けさせました。和泉前司二階堂行方が使いです。また、御所では北斗星を祀る加持祈祷〔七日間〕をさせました。鶴岡八幡宮筆頭僧正がこれを勤めました。

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