吾妻鏡入門第四十九巻  

文應元年(1260)十月小

文應元年(1260)十月小八日壬寅。小早河又三郎被召加小侍番帳。武藤少卿景頼傳仰云々。

読下し                   こばやかわまたさぶろう こさむらいばんちょう めしくは  らる    むとうしょうきょうかげより つた  おお   うんぬん
文應元年(1260)十月小八日壬寅。 小早河又三郎は 小侍 番帳@に召加へ被る。 武藤少卿景頼傳へ仰すと云々。

参考@番帳は、班編成の名簿。

現代語文応元年(1260)十月小八日壬寅。小早川又三郎が、将軍の身の回りの世話をする小侍所のメンバーに加えられました。武藤少卿景頼が将軍の命令を伝えましたとさ。

文應元年(1260)十月小十五日己酉。相州〔政村〕息女煩邪氣。今夕殊惱亂。爲比企判官女讃岐局靈祟之由。及自詫云々。件局爲大蛇。頂有大角。如火炎。常受苦。當時在比企谷土中之由發言。聞之人堅身毛云々。

読下し                    そうしゅう 〔まさむら〕  そくじょじゃき  わずら  こんゆうこと  のうらん
文應元年(1260)十月小十五日己酉。相州〔政村〕が息女邪氣を煩う。今夕殊に惱亂す。

ひきのほうがん むすめ さぬきのつぼね れい たた ため のよし  みづか わび およ   うんぬん
比企判官が 女 讃岐局 の靈が祟る爲之由、自ら詫に及ぶと云々。

くだん つぼね だいじゃたり いただき おおつのあ       かえん  ごと      つね  く   う     とうじ ひきがやつ  どちゅう  あ   のよしはつげん
件の 局は 大蛇爲。 頂 に大角 有りて、火炎の如きに、常に苦を受く。當時比企谷の土中に在る之由發言す。

これ  き   ひと み  け  いよだ  うんぬん
之を聞く人身の毛が堅つと云々。

参考これを祀ったのが比企谷妙本寺の蛇苦止明神。

現代語文応元年(1260)十月小十五日己酉。相州政村の娘が物の怪に憑かれました。今日の夕方に特にひどくのたうちまわっています。比企判官四郎能員の娘、讃岐局の霊がたたっているのだと、自分で云ってたそうです。その局は大蛇だそうで、頭のてっぺんに角があって、口からは火炎の様な舌をちらつかせて、常に苦しみ受けています。今は、比企谷の土の中に居るのだと云っております。この言葉を聞いて人は身の毛がよだつんだそうな。

文應元年(1260)十月小廿二日丙辰。リ。貢馬御覽。相州。武州已下出仕如例。

読下し                     はれ   くめ ごらん  そうしゅう ぶしゅう いげ  しゅっし  れい  ごと
文應元年(1260)十月小廿二日丙辰。リ。貢馬御覽。相州・武州已下の出仕、例の如し。

現代語文応元年(1260)十月小二十二日丙辰。晴れです。京都朝廷へ納付する奥州馬を将軍がご覧になる儀式です。相州政村・武州長時以下の政務メンバーの立会はいつも通りです。

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