吾妻鏡入門第五十巻 　

文應二年・弘長元年(1261)二月大(二十日改元)

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きのえうま　はれ　ことし　かのえとりなり　　よっ　しょうぐんけおいのりら　おこなはれ
文應二年(1261)二月大二日甲午。霽。今年は辛酉�@也。仍て將軍家御祈等を行被る。

てんちさいへん　のぶかたあそん　　てんそうちふ　　　すけとしあそん　　しちざ　　たいさんふくん　　はるひで　　くにつぐ　　やすふさ　　はるなり　　もちひら　　やすつぐ　　ふみもと
天地災變は宣賢朝臣。天曹地府は資俊朝臣。七座の泰山府君は、�ﾘ秀・國繼・泰房・�ﾘ成・以平・泰繼・文元。

れいしょ　　ななせまつり　　もとむね　　しげうじ　　しげうじ　　はるなお　　ちかかず　　はるゆき　　これゆき　　いずみのぜんじゆきかたこれ　ぶぎょう
靈所の七瀬祭�Aは、職宗・茂氏・重氏・�ﾘ尚・親員・�ﾘ行・維行。和泉前司行方之を奉行す。

参考�@辛酉革命は、国王が変わる。世の中が変化する。甲子革命は宰相が変わる。聖徳太子がこの辛酉を遡って神武天皇の紀元を決めた。紀元前６６０年頃。BCはBefore Christ Bornの略。  
説明�A七瀬払いは、26巻貞応3年6月6日条では、由比ガ浜・七里ヶ浜・片瀬川・六浦・鼬川・森戸海岸・江の島龍穴。
又、27巻寛喜二年(1230)11月13日条では霊所、由比ガ浜、七里ヶ浜、片瀬川、六浦、鼬川、森戸海岸、田越川が書かれている。

現代語文応二年(1261)二月大二日甲午。晴れました。今年は国王の変わる辛亥革命の年です。それなので安泰を願って宗尊親王将軍家の祈祷を行いました。天地災変祭は安倍宣賢さん、天曹地府祭は資俊さん、七人での泰山府君祭は、晴秀・国継・泰房・晴成・以平・泰継・文元です。水に関わる聖地で行う七瀬祓いは、職宗・茂氏・重氏・晴尚・親員・晴行・維行です。和泉前司二階堂行方がこれを指揮担当しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つちのとい　はれ　しょうぐんけ　にしょ　　ごしょうじんはじ　　　
文應二年(1261)二月大七日己亥。霽。將軍家二所の御精進始め。

ひつじのこく　みやすんどころつるがおかぐう　もう　　せし　　たま　　　　〔ごげこうご　しょど　〕
未尅、御息所　鶴岡宮に詣で令め御ふ。〔御下向後初度〕  

ま　　　しげうじ　〔そくたい　　えきそう〕　なかごしょ　　まい　おんはら　　　　つと　　　　だんじょうしょうゆうなりときばいぜん　そうら　　すおうのごろうさえもんのじょうえきそう　そうら
先ず茂氏〔束帶。役送〕中御所に參り御秡へを勤む。彈正少弼業時陪膳に候う。周防五郎左衛門尉役送に候う。

おんみそぎ　えちぜんぜんじ　えきそう　しなののじろうさえもんのじょう　　ぐぶにん　　じょうえ　　き
御禊は越前々司。役送は信濃二郎左衛門尉。供奉人は淨衣�@を着る。

参考�@淨衣は、清浄なる衣服，つまり潔斎の服であり，神事や仏参のときに用いる。白色無文の狩衣 (かりぎぬ) と同じ作りで，布 ( 麻) でつくるのが常である。

しょうぐんけ　ごしょうじんさんろう　　ひと　ぐぶ　すべ　　のよし　　けんじつ　そ　　さだ　　あ　　　いへど　　　にんずうふそくのあいだ　　これ　　もよお　くは　　らる
將軍家御精進中參籠の人供奉可き之由、兼日其の定め有ると雖も、人數不足之間、之を催し加へ被る。  

　ぐぶにん
供奉人  

　　じょうえ
　淨衣

〔おんこしよせ〕
〔御輿寄〕  

　　むさしのぜんじともなお　〔ともざむらい　じょうえ　たてえぼし　　おな　　　ちゅうげん　じょうえ　たてえぼし〕　　　おわりのぜんじときあき　〔ざむらいおな　　ちゅうげん　しろ　ひたたれ〕
　武藏前司朝直〔共侍は淨衣に立烏帽子　同じく中間は淨衣に立烏帽子〕　尾張前司時章〔侍同じ　中間は白の直垂〕  

　　おな　　　さこんのたいふしょうげん　〔さむらい　しろ　ひたたれ　　ちゅうげん　うえ　　おな　　　〕　　　　　だんじょうしょうひつ　〔さむらいひとりじょうえ〕
　同じき左近大夫將監〔侍は白の直垂　中間は上に同じ〕　　　　　　　　　彈正少弼〔侍一人淨衣〕  

〔ごへいやく〕
〔御幣役〕  

　　えちぜんぜんじ　〔さむらいひとりうえ　　おな　　　ちゅうげん　　じょうえ〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えちごのしろうあきとき
　越前々司〔侍一人上に同じ　中間は淨衣〕　　　　　　　　　　　越後四郎顯時  

　　さがみのさぶろうときすけ　〔さむらい　おれえぼし　じょうえ　　　ちゅうげんうえ　　おな　　〕　　　　　　　　　　おな　　　しちろうむねより　〔さむらいひとりたてえぼし　　じょうえ　　ちゅうげん　ひたたれ〕
　相摸三郎時輔〔侍は折烏帽子に淨衣　中間上に同じ〕　　　　　　　同七郎宗頼〔侍一人立烏帽子に淨衣　中間は直垂〕  

　　とおとうみのしちろうときもと　〔うえ　　おな　　　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　もくごんのかみ　〔ぞうしきいちりょうやからあいぐ　　〕
　遠江七郎時基〔上に同じ〕　　　　　　　　　　　　　　　　　木工權頭〔雜色一兩輩相具す〕

　　いずみのぜんじゆきかた　〔じょうえ　おれえぼし　しょうしょう　　あいぐ　　　また　　じょうえ　　ことねりわらわあ　　〕　　　　　　　　　　おな　　　じろうさえもんのじょうゆきあき
　和泉前司行方〔淨衣に折烏帽子を少々相具す。又、淨衣の小舎人童有り〕　　同じき次郎左衛門尉行章

  　　あいだのじょうすけ　〔ぞうしき　　ぐ　　　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　　ろくろうあきもり
　秋田城介〔雜色を具す〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　同じき六郎顯盛

　　むろうのしょうきょうかげより　〔ぞうしき　　ぐ　　　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひょうがのぜんじすけやす
　武藤少卿景頼〔雜色を具す〕　　　　　　　　　　　　　　　　日向前司祐泰

　　すおうのぜんじただつな　〔じょうえ　しょうしょう　あいぐ　　　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　　ごろうさえもんのじょうただかげ　〔うえ　　おな　　〕
　周防前司忠綱〔淨衣を少々相具す〕　　　　　　　　　　　　　同じき五郎左衛門尉忠景〔上に同じ〕  

　　かがひょうえのたいふちかうじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひたちのじろうさえもんのじょうゆききよ
　加賀兵衛大夫親氏　　　　　　　　　　　　　　　　　　　常陸二郎左衛門尉行�C

　　〔　ごへい　〕
〔御幣〕  

　　しなののじろうさえもんのじょうとききよ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　でわんのしちろうさえもんのじょうゆきより
　信濃二郎左衛門尉時�C　　　　　　　　　　　　　　　　　出羽七郎左衛門尉行頼

　　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　といのしろうさえもんのじょうさねつな
　薩摩七郎左衛門尉祐能　　　　　　　　　　　　　　　　　土肥四郎左衛門尉實綱

　　おきのしろうさえもんのじょうゆきなが　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たけいしのしんさえもんのじょうながたね
　隱岐四郎左衛門尉行長　　　　　　　　　　　　　　　　　武石新左衛門尉長胤

現代語文応二年(1261)二月大七日己亥。晴れました。宗尊親王将軍家は二所詣での精進潔斎始めです。
午後2時頃に、将軍奥方御息所は鶴岡八幡宮へお参りです〔鎌倉へ来て初めてです〕。まず、阿部茂氏〔束帯の正装、運び役〕が中御所へ行ってお払いを勤めました。弾正少弼北条業時がお給仕役を勤め、周防五郎左衛門尉島津忠景が運び役を勤めました。禊役は越前前司時広で、運び役は信濃二郎左衛門尉時清です。お供の人は、白色無文の麻の狩衣の浄衣を着てます。
宗尊親王将軍家は、精進の期間中に尾籠をするので、お供のをするように、予め決めていたけど、人数が足りないので、指名して加えられました。
　お供の人　白色無文の麻の狩衣の浄衣
　〔輿周りの警備〕
　武蔵前司大仏流北条朝直〔お供の侍は浄衣立烏帽子、同様に雑務人も浄衣立烏帽子〕　尾張前司名越流北条時章〔侍も同じ、雑務人は白い直垂〕
　同左近大夫将監北条公時〔侍は白の直垂、雑務人は時章と同じ白い直垂〕　　　　　　弾正少弼北条業時　　　〔侍一人浄衣〕
　〔御幣の役〕
　越前前司北条時広〔侍一人上に同じ浄衣　雑務人は浄衣〕　　　　　　　　　　　　　越後四郎顕時
　相模三郎北条時輔　　　〔侍は折烏帽子に浄衣　　雑務人は上に同じ〕　　　　　　　同　七郎北条宗頼　　　〔侍一人立烏帽子に浄衣　雑務人は白い直垂〕
　遠江七郎時基　　　　　〔上に同じ〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　木工権頭中原親家　　　〔雑用人を一・二人お供にしている〕
　和泉前司二階堂行方　　〔浄衣に折烏帽子の部下を少し。又浄衣の小間使いもいる〕　同和泉次郎左衛門尉二階堂行章
　秋田城介安達泰盛　　　〔雑用人をお供に〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同六郎安達顕盛
　武藤少卿景頼　　　　　〔雑用人をお供に〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日向前司伊東祐泰
　周防前司島津忠綱　　　〔浄衣のお供に少々連れている〕　　　　　　　　　　　　　同五郎左衛門尉島津忠景〔忠綱と同じ〕
　加賀兵衛大夫親氏　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　常陸次郎左衛門尉二階堂行清
　〔御幣〕
　信濃二郎左衛門尉二階堂時清　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　出羽七郎左衛門尉二階堂行頼
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　土肥四郎左衛門尉実綱
　隠岐四郎左衛門尉二階堂行長　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　武石新左衛門尉長胤

読下し　　　　　　　　　　　　　　　みずのとう　はれ　にしょほうへい　　おんし　さがみのさぶろうときむらぬししんぱつ
文應二年(1261)二月大十一日癸卯。霽。二所奉幣の御使相摸三郎時村主進發す。

きょう　　つるがおか　　りんさいなり　　おわりのぜんじときあきほうへい　　おんしたり
今日、鶴岳の臨時祭也。尾張前司時章奉幣の御使爲。

現代語文応二年(1261)二月大十一日癸卯。晴れました。二所詣での幣を納める代参の相模三郎時村さんが出発しました。」
今日、鶴岡八幡宮の臨時のお祭りです。尾張前司名越時章が代参です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　ひのとひつじ　あめふ　　さるのこく　　にしょ　　ほうへいおんしさがみのさぶろう　きさん　　　　きょう　　そうとうさんよ　　きちゃく　　　　うんぬん
文應二年(1261)二月大十五日丁未。雨降る。申尅、二所の奉幣御使相摸三郎歸參す。今日、走湯山自り歸着すと云々。

現代語文応二年(1261)二月大十五日丁未。雨降りです。午後4時頃、二所詣での幣を納める代参の相模三郎時村さんが帰って来ました。今日、熱海の走湯山から直接帰ったのだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　みずのえね　そらはれ　ひつじのこく　はるさめしばしばそそ　しゅうりかえものようとうなら　　　おうばんやく　　ことひゃくしょう　あてか　　こと　　ちょうじ
弘長元年(1261)二月大廿日壬子。天�ﾘ。未尅。春雨屡々灑ぐ。修理替物用途并びに垸飯役の事百姓に宛課す事�@、永く之を停止す。

ぢとうとくぶん　　もっ　　　　　さた　いた　　べ　　　のよし　　これ　　さだ　　らる
地頭得分を以て、沙汰致す可き之由、之を定め被る。」

きょう　つるがおかはちまんぐう　　をい　　におうきょう　　おこなはれ　　　こうじ　　ぐうじべっとうそうじょうりゅうべん　　どくじ　　べんのほういんしんぱん　〔とうしゃがくとう〕
今日、鶴岡八幡宮に於て仁王會を行被る。講師は宮寺別當僧正隆弁。讀師は弁法印審範〔當社學頭〕。

しょうそう　ひゃっく　〔しょうちょうじゅいん　ようふくじ　だいじじ　つるがおからよんかしょぐそうぶんはじゅうさんく　　　じゅうしちく　　ちょうふくじあんじょうじりょうそうじょう
請僧�Aは百口〔勝長壽院。永福寺。大慈寺。鶴岡等四ケ所供僧分八十三口。十七口者。長福寺�B安祥寺�C兩僧正。

なら　　さだいじんほういんぜんえら　すくろうそうごうら　ぐうじ　　ためはか　　う　　これ　　くは　　〕　
并びに左大臣法印嚴惠等宿老僧綱�D等。宮寺の爲計り請け之に加う〕

あきさこんのたいふちかつぐ　〔さしょやく〕　　だてうえもんくらんど　〔うしょやく〕ら　　ふせ　　と　　　　そうみんぶじゅうろう　　やべのじろたろう　ら　てながたり
安藝左近大夫親継〔左所役〕伊達右衛門藏人〔右所役〕等布施を取る。宗民部十郎・矢部二郎太郎等手長�E爲。

なかやましろぜんじもりときこれ　　ぶぎょう
中山城前司盛時之を奉行す。

参考�@修理替物用途并びに垸飯役云々は、それらの費用を百姓に負担させる事は止め、御家人役として国ごとに割り当てる。
参考�A請僧は、招かれた坊さん。朝廷の場合は公請。
参考�B長福寺は、京都府京都市右京区梅津。
参考�C安祥寺は、山科。
参考�D僧綱は、坊主で位を持ってる人、僧正等。
参考�E手長は、運搬係。

　　そう
　僧

　　　さほう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うほう
　左方　　　　　　　　　　　　右方

　〔　しんあみだどう　〕
〔新阿弥陀堂�F〕

　　ほういんごんのだいそうづせいそん　　　　　　　　　　　　　ぼうげん
　法印權大僧都�C尊　　　　　　房源

参考�F新阿弥陀堂は、頼印僧正の行状絵巻(鎌倉の景色が描かれている)に、その説明の中に扇谷梅谷の新阿弥陀堂とある。徳川光圀の鎌倉日記には「梅谷・海蔵寺へ行道也。尻引櫓の東の畠を云う。或云、つゞきの里にありとぞ。」新編鎌倉志には「梅谷〔附綴喜の里〕梅谷(ムメガヤツ)は、化粧坂の下の北の谷なり。此辺を綴喜里(つゞきのさと)と云う。」とあるので、化粧坂の入口とも、亀谷坂の坂中天神(坂中観音)の正円廃寺とも考えらえる。

　〔　ようふくじ　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〔　ようふくじ　〕
〔永福寺〕　　　　　　　　　　　〔永福寺〕

　　ごんのしょうそうづどうよう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　がけん
　權少僧都道曜　　　　　　　　雅賢

　　　　　　　　〔　だいじじ　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　〔　しょうちょうじゅいん　〕
　　　　〔大慈寺〕　　　　　　　〔勝長壽院〕

　　　　　　　　　ちょうそん　〔　しゃかどう　〕　　　　　　　　　せいそん
　　　　長尊〔尺迦堂〕　　　　　聖尊

　　　　　　　　〔　つるがおか　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　〔　しょうちょうじゅいんほういん　でし　〕
　　　　〔鶴岳〕　　　　　　　　〔勝長壽院法印弟子〕

　　　　　　　　　じょうけん　　　　　　　　　　　　　　　　　　しゅんじょう
　　　　　定憲　　　　　　　　俊承

　　　　　　　　〔　つるがおか　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　〔　ようふくじ　〕
　　　　〔鶴岡〕　　　　　　　　〔永福寺〕

　　　　　　　　　じぎょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　りょうけい
　　　　　慈曉　　　　　　　　暹慶

　　　　　　　　〔　ようふくじ　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　〔　あんじょうじそうじょう　でし　〕
　　　　〔永福寺〕　　　　　　　〔安祥寺僧正弟子〕

　　　　　　　　　えんよ　　　　　　　　　　　　　　　　　　いんぎょう
　　　　　圓譽　　　　　　　　　　印教

　　　　　　　　〔　しんあみだどう　〕　　　　　　　　　　　　　　〔　どう　〕
　　　　〔新阿弥陀堂〕　　　　　〔同〕

　　　　　　　　　けんい　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちょうけん
　　　　　兼伊　　　　　　　　　　重賢

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　じよ　　これ　りゃく
　　　　　　　　　自餘は之を畧す

ぶつぶせ
佛布施

　　でわぎぬ　ひゃっぴき
　出羽絹百疋

ずきょうもの
誦經物

　　おくふ　ひゃくたん〔へいあんじ〕
　奥布百端〔並安寺〕

参考�G誦經物は、僧に誦経を依頼する時の布施を意味する。誦經は暗誦した経典を声をあげて読むこと。経典の読誦が得道につながる。

こうじ
講師

　　あやかづけものみえ　　　　　　　　　　　　　　きぬつつみものいち〔おくふさんたん　　おさ　　〕　　　　　　　　　　　じょうけんじゅっぴき
　綾被物三重　　　　　　絹裹物一〔奥布�G三段に納む〕　　　　　　上絹十疋

　　そめぎぬいったん　　　　　　　　　　　　　　　しらぶいったん　　〔これ　　むす　　〕　　　　　　　　　　　　　　　　　あさぎじゅったん
　染絹一端　　　　　　　白布一段〔之を結ぶ〕　　　　　　　　　淺黄十端

　　いろかわいちまい　　　　　　　　　　　　　　　くまいいっこく　　　〔たんざく　　ごじつこれ　　おく　　〕
　色革一枚　　　　　　　供米一石〔短冊　後日之を送る〕

どくじ　　　〔こうじ　　おな　　〕
讀師�H〔講師に同じ〕

べちのふせ
別布施

　　あやのかづけものひとえ　　　　　　　　　　　かみのつつみものいち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ふくろまいいち　〔たてぶみたんざく　　もっ　　つつみもの　うえ　お　　〕
　綾被物一重　　　　　　紙裹物一　　　　　　　　　　　　　袋米一〔立文短冊を以て裹物の上に置く〕

参考�G奥布は、陸奥国産の布。
参考�H讀師は、講師と相対して仏前の高座に上がり、経題・経文を読み上げる役目の僧。

現代語弘長元年(1261)二月大二十日壬子。空は晴ですが。春雨が時々降りました。修理などの負担金それに将軍接待役などの負担を百姓に加増負担させることは、今後禁止して、御家人役として国々の地頭の取り分(反別五升、十一町につき一町)から、負担するようにお決めになりました。」
今日、鶴岡八幡宮で仁王経の供養をしました。講演・講義は、八幡宮筆頭の僧正隆弁。お経読みは弁法印審範〔八幡宮のがくしょうの筆頭〕。招かれた坊さんは百人〔勝長寿院・永福寺・大慈寺・鶴岡八幡宮など四カ所の坊さんは八十三人。十七人は長福寺・安祥寺の両僧正それに左大臣法印厳惠など位持ちの坊さんです。鶴岡八幡宮寺のために頼んで加えました〕。
安芸左近大夫親継〔左側担当〕伊達右衛門蔵人〔右側担当〕がお布施を渡す役です。宗民部十郎と矢部二郎が運搬役です。山城前司中原盛時が指揮担当です。
　坊さん
　左側　　　　　　　　　　　　　　　　右側
　法印権大僧都清尊〔新阿弥陀堂〕　　　房源
　権少僧都道曜〔永福寺〕　　　　　　　雅賢〔永福寺〕
　　　　　長尊〔大慈寺〕〔釈迦堂〕　　聖尊〔勝長寿院〕
　　　　　定憲〔鶴岡八幡宮寺〕　　　　俊承〔勝長寿院法印弟子〕
　　　　　慈暁〔鶴岡八幡宮寺〕　　　　暹慶〔永福寺〕
　　　　　円誉〔永福寺〕　　　　　　　印教〔安祥寺僧正弟子〕
　　　　　兼伊〔新阿弥陀堂〕　　　　　重賢〔同〕
　　　　　　　　　　以下は略します。
お布施　　出羽産の絹百匹
経典の読誦者へのお布施　奥州産の絹布百反
講義の隆弁には、綾織の被り物三枚、絹の風呂敷包み〔奥州布三反入り〕、上質の絹十匹、染めた絹一反、白い布一反〔結んである〕、浅黄色が十反、色染めの皮一枚、お米一石〔短冊を付けて後日宿坊へ送りました〕
読経の審範へは〔隆弁と同じ〕
別なお布施は、綾織の被り物一枚、和紙の包み一つ、袋入りの米一つ〔立てた短冊を付けて包み物の上に置く〕

読下し　　　　　　　　　　　　　　　ひのとみ　かいどう　　えきば　　　ごぶつそうふ　　こと　　おんし　じょうげこう　　　　まいどじょうすう　おか　　　よっ
弘長元年(1261)二月大廿五日丁巳。海道の驛馬�@、御物送夫の事、御使の上下向に、毎度定數を犯すに依て、

どみんおよ　　たびびと　うれ　　たる　のよし　　しき　　　じょうちょう　たっ　　　のあいだ　　きょう　　　ろくはら　　おお　　らる　　ところなり　　そ　　じょう　　い
土民及び旅人の愁い爲之由、頻りに上聽に達する之間、今日、六波羅へ仰せ被る所也。其の状に云はく。

参考�@驛馬は、（えきば/はゆま/はいま）とは、古代律令制時代の日本の駅家に配置され、駅路の通行に供用された馬。「はゆま」「はいば」の読みは早馬を意味し、急ぎの連絡便のことを表す。

　　はゆま　　こと
　早馬の事

　しゅくしゅく　　にひき　　さだ　　おかれ　　のところ　　きゅう　こと　　あらず　いへど　　　きんねんれんれんげこうのやから　　ある　　　　さんよんひき　　ある　　　しごひき　もう　　の
　宿々に二疋を定め置被る之處、急な事に非と雖も、近年連々下向之輩、或ひは三四疋、或ひは四五疋申し載せる。

　も　　やくどころ　ちょうはん　　　　ろじ　　　をい　　これ　　ろうぜきいた　　よし　　そ　　きこ　　あ　　　　もっと　ふびん
若し役所を張煩し、路次に於て之を狼藉致す由、其の聞へ有り。尤も不便。

いまよ　　　いご　　　こと　　　　そつじ　　あらざ　ことのほか　　せんれい　　まか　　べ　　のじょう　　おお　　　よっ　　しったつくだん　ごと
今自り以後、殊なる率爾に非る事之外、先例に任す可き之状、仰せに依て執達件の如し。

　　　　　ぶんおうにねんにがつにじゅうごにち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしのかみ
　　　文應二年二月廿五日　　　　　　　　　　　　　　　　　武藏守

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのかみ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　相摸守

　　　　　　むつさこんおたいふしょうげんどの
　　　陸奥左近大夫將監殿

　　　　きょうげぎょぶつ　　おくりぶ　　こと
　　京下御物の送夫の事

　　　きょうげぎょぶつ　おくりぶ　　ざっしょう　　もう　　う　　　　まか　　　　そう　な　　　　げち　せし　　　　よっ　　　　にんぷ　たたのあいだ　　たみの　わずら　もっと　ふびん
　京下御物の送夫、雜掌の申し請けに任せ、左右無く下知令むに依て、人夫多々之間、民之煩ひ尤も不便、

　　いまよ　　　いご　　にんぷ　　もう　　う　　　　　のとき　　ぎょぶつ　　たしょう　　けんちせし　　　　にんずう　　さだ　ちょうちょう　の　　　べ　　なり
　今自り以後人夫を申し請くる之時、御物の多少を見知令め、人數を定め長帳に載す可き也。

　　かつう　しぶつ　　おくりぶ　　おい　　は　　　いっこう　　ちょうじせし　　べ　　　なり　　かね　　また　ふえきことを　　そう　　　よ　　　　　　ろじ　　　をい　　ろうぜきいた　　べからず　のよし
　且は私物の送夫に於て者、一向に停止令む可き也。兼て又夫役事於左右に寄せ、路次に於て狼藉致す不可之由、

　　　げち　のじょう　　くは　　らる　　べ　　　　　おお　　　　よっ　　しったつくだん　ごｒと
　下知之状に加へ被る可き。仰せに依て執達件の如し。

　　　　　ぶんおうにねんにがつにじゅうごにち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしのかみ
　　　文應二年二月廿五日　　　　　　　　　　　　　　　　　武藏守

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのかみ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　相摸守

　　　　　　むつさこんおたいふしょうげんどの
　　　陸奥左近大夫將監殿

現代語弘長元年(1261)二月大二十五日丁巳。東海道の宿駅に配置された馬は、幕府の物資輸送人夫について、幕府の派遣員の京鎌倉往還の度に、毎回定数を守らないので、宿駅担当の地元民や馬を使いたい旅人達が嘆いていると、盛んに噂が将軍のもとまで入って来るので、今日、六波羅探題に命令を出しました。その内容は
　　早馬について
　宿場ごとに二頭と決めて置かれているのに、大した急を要する事でもないのに、近頃頻繁に鎌倉へ下る連中が、或る者は三頭、或る者は四頭五頭と云って文書に書かせている。もし、担当役を脅して手間を掛けさせ、道中で無理強いしていると、噂が入っています。とんでもない気の毒な事です。今から以後は、特別な急な事ではない場合は、先例通りにするようにとの、将軍の命令によって書いたのはこのとおりです。
　　　文応二年二月二十五日　　　　　　　　　　　　武蔵守極楽寺流北条長時
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　相模守常盤流北条政村
　　　陸奥左近大夫将監塩田流北条義政殿

　　　京都から幕府への荷物の人足について
　京都から幕府への荷物の人足は、雑務担当の請求通りに、検討することなく命令を出すので、人足が多すぎて、調達される庶民の手間を掛けさせるのは気の毒です。今から以後は、人足を請求するときは、品物の多い少ないを調べさせて、その上で人数を決めてから帳面に載せるべきです。また、私物の人足については、全て禁止するものです。その他また、労働義務だとどさくさにまぎれて、道中で無理強いしてはいけないと、命令文書に書き加えなさい。将軍の命令によって書いたのはこのとおりです。
　　　文応二年二月25日　　　　　　　　　　　　武蔵守極楽寺流北条長時
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　相模守常盤流北条政村
　　　陸奥左近大夫将監塩田流北条義政殿

読下し　　　　　　　　　　　　　つちのえうま　はれ　　かいげん　しょうしょさんちゃく　　　さんぬ　はつか　　ぶんおうにねん　あらた　　　こうちょうがんねん　な
弘長元年(1261)二月大廿六日戊午。霽。改元の詔書參着す。去る廿日、文應二年を改め、弘長元年と爲す。

現代語弘長元年(1261)二月大二十六日戊午。晴れました。改元の文書が届きました。先日の二十日に文応二年を替えて、弘長元年としました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　かのととり　そらはれ　かんとうごぶん　　じしゃ　　こと　　ぶっしんじ　　　こうぎょうすべ　　のよし　　ひごろ　そ　　　さた　あ
弘長元年(1261)二月大廿九日辛酉。天霽。關東御分の寺社、殊に仏神事を興行可き之由、日來其の沙汰有り。

きょう　これ　　しぎょうさる
今日之を始行被る。

ひとつ　しょしゃ　　しんじかんぎょう　こと
一　諸社の神事勤行の事

　　まつり　ほうねん　おごらず　きょうねん　つづまやか　　　これれいてんの　さだ　　　ところなり
　祭は豊年に不奢、凶年は不儉に、是礼典之定むる所也。

　　しか　　　　きんねん　　　しんじら　　　ある　　　　りょうい　こぎ　　　そむ　　ある　　　　かさ　よ　ついえ　　わす　　　　しんりょはか　　がた　　　　ひとなん　　えきあ
　而るに近年の神事等、或ひは陵夷古儀に背き、或ひは過差世の費を忘れ、神慮測り難し。人何の益有り。

　　いまよ　　　　いご　　　こうれい　　さいし　りょういいたさず　　りんじ　　れいてん　かさ　せし　　なか
　今自り以後、恒例の祭祀陵夷致不。臨時の礼奠過差令む勿れ〔矣〕。

ひとつ　ほんじゃしゅうぞうすべ　　　こと
一　本社 修造可きの事

　　うふのやしろ　は　　　だいだい　　ふ　　まか　　　　しょうはのとき　　かつう　しゅうり　くは　　　　も　　　たいは　　およ　　　　しさい　　ごんじょう　　ば
　有封社�@者、代々の苻に任せ、少破之時、且は修理を加へ、若し大破に及ばば子細を言上せ者、

　　そ　　　そう　　　したが　　　そ　　　さた　あ　　　べ　　のよし　　さだ　　お　か　をはんぬ　　しか　　　　きんねん　　しゃしほしいまま　しんりょう　　りじゅん　　むさぼ
　其の左右に随い、其の沙汰有る可き之由、定め置被れ訖。而るに近年、社司　恣に　神領の利潤を貪り、

　　しゃだん　のはそん　　かえりみ　　　　な　　　　　ただ　　しんりょ　　おそ　　ざる　あらず　　もっぱ　　くひょう　　わす　　　　い　　　　べ
　社壇之破損を顧ること無く、啻に神慮を恐れ不に匪、專ら公平を忘ると謂ひつ可し。

　　いまよ　　　いご　　　こ　　　せいほう　　そむ　　やから　をい　　は　　　そ　　　しき　　かいぶ　さる　　べ
　今自り以後、此の制法を背く輩に於て者、其の職を改補被る可し〔矣〕。

参考�@有封社は、古代日本で朝廷から寄進された封戸を有する神社。封戸は国家より施入され，租，庸，調，雑役をその神社に納め，神戸(かんべ)神封戸とも呼ばれた。

ひとつ　にょほうごんぎょう せし　　べ　　　しょどうねんちゅうぎょうじら　　　こと
一　 如法勤行 令む可き諸堂年中行事等の事

　　みぎ　　しょどう　のつと　　　こいれいかぎ　　あ　　　　　しか　　　　ぐそうらわずか　　かんじゅ　のな　あ　　　　　　さら　　かいしん　　ぬき　　　　　のこころざし　な
　右、諸堂之勤め、恒例限り有り�A。而るに供僧等纔に勤修之名有りて、更に誡信を抽んずる之 志 無し。

　　そ　　　しき　のあと　　ぶ　さ　　　　ほうき　のせいせん　あ　　　いへど　　　そ　　しき　　ぶさる　　ののち　　おお　　せんろう　のだいかん　　もち　　　　　　おうじゃくのてだい　　もっ
　其の職之跡に補被れ、法器之�C撰有ると雖も、其の職に補被る之後、多く淺臈�B之代官を用ひ、尩弱之手代を以て、

　　げんじゅうのごがん　　つとむ　　　　はなは　しか　　べからず　　きんき　　さいげん　　しょろう　のほか　　だいかん　　もち　　　こといっさいちょうじすべ
　嚴重之御願を勤るは、太だ然る不可。禁忌の再現、所勞之外、代官を用いる事一切停止可し。

　　かね　　またくりょう　ふほう　　まつか　あいつも　　のよし　　しょどう　　そしょう　あ　　　　ざっしょう　い　　　　じむ　の　ちぎょう　　い　　　　かぎ　　あ　　　のやくどころ
　兼て又供料不法に未下�C相積る之由、諸堂に訴訟有り。雜掌と云ひ、寺務之知行と云ひ、限り有る之役所、

　　なん　　まさ　　いた　　べ　　のさいもつ　　とんぴすべ　　や　　　しか　　　　ひきつけ　　をい　　　　そ　　　さた　あ　　　　いへど　　　なおもっ　　こといかざるか
　何ぞ應に輸す可き之濟物を遁避可き哉。而して引付に於て、其の沙汰有ると雖も、猶以て事行不歟。

　　こと　　げんじゅう　　さた　あ　　　べ　　　のよし　　かさ　　　めんめん　ひきつけ　　おお　　らる　　べ
　殊に嚴重の沙汰有る可き之由、重ねて面々に引付に仰せ被る可き。

　　こ　　うえ　ふほう　　ざっしょう　あ　　ば　　　ぶぎょうにん　ちゅう　もう　　　　したが　　　そ　　　しき　　かいえきさる　　べ
　此の上不法の雜掌有ら者、奉行人の注し申すに随い、其の職を改易被る可し矣。

参考�A恒例限り有りは、きちんとした決まりや慣例があるので。
参考�B淺臈は、経験の浅い。
参考�C未下は、何も払っていない。

ひとつ　しょどう　　しつむにん　　し　　　ほんぞん　しゅうぞうせし　　べ　　こと
一　諸堂の執務人を令て本尊を修造令む可き事

　　みぎ　　じんじゃ　　しゅうり　　なぞら　　　そ　　　さた　あ　　　べ
　右、神社の修理に准ひ、其の沙汰有る可き〔矣〕。

ひとつ　ぶつじ　あいだ　こと
一　仏事の間の事

　　みぎ　　どうしゃ　くよう　のひと　　ほうおんついぜん　のいえ　がいぶん　はからず　　おお　　かさん　　ついえ　こと　　くぶつ　せそう　　をい　　　　なおみんしょれいげんのわずらい　な
　右、堂舎供養之人。報恩追善之家、涯分を不測、多く家産を費る事、供佛施僧に於て、猶民庶黎元�C之煩を成し、

　　かへっ　ざいこん　まね　　べ　　　さら　　ぜんびょう　う　　　　　あらず　　ひとへ　これみょうもん　すま　　のゆえか　　　みょう　つ　　けん　　つ　　　　そ　　　なに　　えき
　還て罪根を招く可し。　更に善苗を殖えるに非。偏に是名聞�Dに住う之故歟。冥に付き顯に付き。其れ何を益せん。

　　いまよ　　　いご　　　ぶつじ　　しゅう　　　のひと　　ただ　じょうしん　　もっぱ　　　　　　　よろ　　　　　かさ　　ちょうじ
　今自り以後、佛事を修する之人、只に淨信を專らにし、宜しく過差を停止すべし〔矣〕。

また　　かんとう　しこう　　しょにん　　かおく　のえいさく　　しゅっしのぎょうそう　いげ　　こと　　　かさ　　ちょうじせし　　べ　　　のよし　　これ　　さだ　　らる　　　うんぬん
又、關東祗候の諸人、家屋之營作、出仕之行粧以下の事、過差�Eを停止令む可し之由、之を定め被ると云々。

こ　　ほか　　ぜんせいしいかじょうなり　　ごとういきぜんじもとまさ　　　　おのざわさこんのたいふにゅうどうこうれんら　ぶぎょうたり
此の外、嚴制數ケ條也。後藤壹岐前司基政・小野澤左近大夫入道光蓮等奉行爲。�F

参考�C民庶黎元は、どちらも農民を指す。
参考�D名聞は、人に知られるように。
参考�E過差は、贅沢。
参考�F奉行二名は、昔は文武の二名だったが、北条時頼の時代には、御家人と得宗被官の二名になって来ている。小野沢光蓮は二郎時仲らしい。

ひとつ　ほうじょうえ　さじき　けんやく　もち　　べ　　　こと
一　放生會の棧敷儉約を用う可き事

ひとつ　ばくえき　ちょうじすべ　　こと
一　博奕を可停止可き事

ひとつ　かまくらじゅう　はし　しゅうりなら　　　　ざいけ　　まえまえ　　そうじすべ　　こと
一　鎌倉中の橋の修理并びに在家の前々は掃治可き事

ひとつ　びょうしゃ　　みなしご　　　しし　　を　ろへん　　す　　　　きんせいすべ　　こと
一　病者・孤子・死屍於路邊に弃つるを禁制可き事

ひとつ　ねんぶつしゃ　にょにん　いげ　　まね　　よ　　　こと
一　念佛者が女人以下を招き寄す事

ひとつ　そうと　　かとう　　かまくらじゅう　おうこう　　　　こと　〔ほうほう　　おお　　　　これ　　きん　　べ　　　〕
一　僧徒が裹頭�Gし鎌倉中を横行する事〔保々に仰せて之を禁ず可し〕

参考�G裹頭は、袋頭頭巾、弁慶がかぶっている五条袈裟。

ひとつ　たかがり　じんじゃ　ぐさい　　ほかちょうじせし　　べ　　こと
一　鷹狩は神社供祭の外停止令む可き事

ひとつ　はやうま　こと
一　早馬の事

　　へん　あ　　いそ　　のとき　　ぶんたつ　　ためなり　　しか　　　　きんだいだいじ　　あらざる　いへど　　さっそく　　もっ　　そ　　せん　　な　　　すこぶ　じんばのわずらいたり
　變有り急ぎ之時、聞達の爲也。而るに近代大事に非と雖も、早速を以て其の詮と爲す。頗る人馬之煩爲。

　　しからば　　いまよ　　　いご　　　こと　　　　ちょうじ　　あらざるのほか　きゅうそく　　ぎ　　　と　　　べ　　　のよし　　　ろくはら　　　おお　　らる　　べ
　然者、今自り以後、殊なる重事に非之外、急速の儀を止む可き之由、六波羅に仰せ被る可き〔矣〕。

ひとつ　ちょうふ　　こと
一　長夫�Hの事

　ひゃくしょうら　そ　わずら　あ　　　　いっこう　　と　　　らる　　のところ　　かまくら　しこう　の　ごけにんら　　かえっ　また　そ　　うれ　　あ　　　べ
　百姓等其の煩ひ有り。一向�Iに止め被る之處、鎌倉祗候之御家人等、還て又其の愁ひ有る可し。

　　いまよ　　　いご　　　ひしょく　　あてたま　　　　これ　　めしつか　　べ
　今自り以後、日食�Jを宛給ひ、之を召仕う可し〔矣〕。

参考�H長者は、長夫の間違いで、長距離の人夫。
参考�I一向には、全面的に。
参考�J日食は、食事を与える事。

現代語弘長元年(1261)二月大二十九日辛酉。空は晴れました。鎌倉幕府の御願の寺社では、特に仏事や神事を廃れさせないように、会議で検討がありました。今日、これを発布しました。
一　諸神社の神事を行うことについて
　祭は豊年の年にも派手にしないで、凶作の年には縮小に、これには行事の決まりがあります。それなのに最近の神事など、或いは物事が次第に衰え廃れて古い時代からの儀式に逆らっている。或いは贅沢は世の中の浪費なのを忘れている。神様の意向は分かりにくいし、人に何の利益がありましょうか。今より以後は、恒例の祭祀は廃れないようにしなさい。臨時の祭礼は贅沢にならないようにしなさい。
一　本の社を修理する事
　　神社納税義務者の封戸を有する神社は、代々伝えられている太政官符のとおりに、少破は修理し、若し大破したなら詳細を申し出れば、その具合によって、それなりの処置をするようにと決められております。それなのに最近では、神社の管理者が神社の領地からの設けばかりを追求し、社殿の破損を気を配ることなく、ひたすら神様の罰を恐れもしないのは、世間の評価を忘れていると云うべきである。今から以後は、この規則を守らないやつらについては、その職を解任する。
一　規則通りに仏事に励むべきあちこちのお堂の年中行事について
　　みぎについて、各お堂でのお勤めは、きちんとした決まりや慣例があります。それなのに在住の坊さん達は、お勤めをしていると云ってるが、尚更に仏教にまい進する気はありません。その職の後任に任命されるのは、その職への資格があるとは言っても、その職に任命されるや多くは経験の浅い代理人を使い、力不足の手下を使っている。大切なお願いを勤める職は、それはとんでもない事である。物忌の時や病気の時以外は、代理人を使う事を一切禁止する。聞くところによるとまた、供養料の規則を守らず未納がたまっているのだと、諸堂に対し訴えが出ておる。雑務人と云い、寺の事務の管理と云い、権限のある役です。何故ちゃんと運び納めなければならない税金を遁れ洋とするのだろう。それなので、裁判担当官からその命令が出ていても、一向に実施しなのであろうか。特に厳しい処置をするようにと、なおもそれぞれから訴訟事務員に命令しなさい。それでもなお、不法の雑務人がいたならば、指揮担当者の提出文書に書き出したように、その職務を解任しなさい。
一　諸堂の管理住職に本尊の修理をさせなること。
　　右は、神社の修理を見習って、その命令をすること。
一　仏事の謝礼について
　　右は、お堂を建立する人が、先祖の追善供養をするのに、自分の分をわきまえず、沢山の財産を施業する事は、お寺や坊さんが要求するので、なおも庶民の負担を増加してます。それはかえって悪い根源を招くでしょう。さらに善行の基を作っている事にはなりません。ただ単に人に知られるようにしてるのでしょうか。陰に仏に知られ、表には世間に知らせることが、なんの利益になるでしょう。今後は、仏事を行う人はひたすら清い信心に徹し、贅沢を止めるべきである。

また、鎌倉幕府へ勤務している人々は、家屋の建築や出勤の時の服装などについては、贅沢を止めるようにと、これを決められましたとさ。このほか、厳しい規約が数か条です。壱岐前司後藤基政と小野沢左近大夫入道光蓮が指揮担当です。
一　放生会の見学用臨時席の桟敷は無駄のない質素な物すること
一　ばくちは禁止する事
一　鎌倉内の橋の修理する事、それと家々の前の道は掃除をする事
一　病人や捨て子、死体を道路に捨てる事を禁止し制止する事
一　念仏坊主が女性を呼んで一緒に暮らす事を禁止する
一　坊主が覆面をして鎌倉内を歩き回る事〔町内会役員に命令してこれを禁止しなさい〕
一　鷹狩は、神事として以外は禁止する事
一　伝令の早馬について　異変が起きて連絡のためにする事です。それなのに最近では対した事件でもないのに、緊急だと勝手に決めているのは、とても馬を扱っている担当民に迷惑な事である。であるので、今後は、特別な重大事件以外は、緊急事態の扱いは止めるように、六波羅探題に命令する事。
一　長距離用の人足について　百姓たちが迷惑しています。全面的にやめさせたところ、鎌倉へ出仕してくる御家人達は、かえって困ってしまいました。今後は、食事や日当をあてがってこれを使役しなさい。

三月へ