吾妻鏡入門第五十巻 　

弘長元年(1261)十月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　しょうぐんけさいみょうじ　　おんてい　　にゅうぎょ　　　なかごしょさんぬ　つきよ　　おんざ　あ　　のゆえなり
弘長元年(1261)十月小四日癸巳。�ﾘ。將軍家最明寺の御亭へ入御す。中御所去る月自り御坐有る之故也。

　ぐぶにん
供奉人

　きば
騎馬

　　つちみかどちゅうなごん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぎょうぶきょう　〔むねのりきょう〕
　土御門中納言　　　　　　　　　　刑部卿〔宗教卿〕

　　さぬきのかみただときあそん　　　　　　　　　　　　　　　　　　えちぜんぜんじときひろ
　讃岐守忠時朝臣　　　　　　　　　越前々司時廣

　　だんじょうしょうひつ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしさこんのたいふしょうげんときとお
　彈正少弼　　　　　　　　　　　　武藏左近大夫將監時遠

　　えちごのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのしちろうむねより
　越後四郎　　　　　　　　　　　　相摸七郎宗頼

　　むさしのごろうときただ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　もくごんのかみちかいえ
　武藏五郎時忠　　　　　　　　　　木工權頭親家

　　みかわぜんじよりうじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのぜんじ
　參河前司頼氏　　　　　　　　　　和泉前司

　　ささきいきぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごとういきぜんじ
　佐々木壹岐前司　　　　　　　　　後藤壹岐前司

　　むとうしょうきょうかげより　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわりのかみゆきあり
　武藤少卿景頼　　　　　　　　　　尾張守行有

　かち
歩行

　　さがみのさぶろうときすけ　〔ぎょけんやく〕　　　　　　　　　　　じょうのしろうさえもんのじょうときもり
　相摸三郎時輔〔御釼役〕　　　　　　城四郎左衛門尉時盛

　　おな　　　ろくろうあきもり　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　じゅうろうときかげ
　同じき六郎顯盛　　　　　　　　　同じき十郎時景

　　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　　　　　　　　　　　すおうのごろうさえもんのじょうただかげ
　薩摩七郎左衛門尉祐能　　　　　　周防五郎左衛門尉忠景

　　むとうさえもんのじょうよりやす　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのじゅうろうさえもんのじょうよりつら
　武藤左衛門尉頼泰　　　　　　　　遠江十郎左衛門尉頼連

　　おのでらのしんさえもんのじょうみちつぐ　　　　　　　　　　　みまさかひょうえくらんどいえのり
　小野寺新左衛門尉道継　　　　　　美作兵衛藏人家教

　　かいのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　おきのさぶろうさえもんのじょうゆきかげ
　甲斐三郎左衛門尉　　　　　　　　隱岐三郎左衛門尉行景

　　かまたのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　たけいしのしんさえもんのじょうながたね
　鎌田次郎左衛門尉　　　　　　　　武石新左衛門尉長胤

　　かのうのしろうさえもんのじょうかげしげ
　狩野四郎左衛門尉景茂

どうじつばん　　およ　　　りょうしょかんご　　ぐぶにん　これ　　もよ　　さる
同日晩に及び、兩所還御�@の供奉人之を催お被る。

ごしょのおんかた　　ぐぶにん
御所御方が供奉人

　　えちぜんぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぎょうぶしょうゆう
　越前々司　　　　　　　　　　　　刑部少輔

　　だんじょうしょうひつ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しんさがみのさぶろう
　彈正少弼　　　　　　　　　　　　新相摸三郎

　　さがみのさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさすのごろう
　相摸三郎　　　　　　　　　　　　武藏五郎

　　いずみのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささきいきぜんじ
　和泉前司　　　　　　　　　　　　佐々木壹岐前司

　　むとうしょうきょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　もくごんのかみ
　武藤少卿　　　　　　　　　　　　木工權頭

　　こうづけたいふほうがん
　上野大夫判官

なかごしょ　　おんとも
中御所が御共

　　さがみのたろう　〔おんこしよせ〕　　　　　　　　　　　　　　　　むつさこんのたいふしょうげん
　相摸太郎〔御輿寄〕　　　　　　　　陸奥左近大夫將監

　　さがみのしちろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしさこんのたいふしょうげん
　相摸七郎　　　　　　　　　　　　武藏左近大夫將監

　　えちごのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あいだのじょうすけ
　越後四郎　　　　　　　　　　　　秋田城介

　　みかわのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごとうきぜんじ
　三河前司　　　　　　　　　　　　後藤壹岐前司

　　くないごんのだいゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわりのかみ
　宮内權大輔　　　　　　　　　　　尾張守

参考�@兩所還御は、将軍と妻。

現代語弘長元年(1261)十月小四日癸巳。晴です。宗尊親王将軍家は、最明寺時頼の屋敷へ入りました。奥さんの中御所が先月から来ているからです。
お供の人は、
乗馬が
　土御門中納言顕方　　　　　難波刑部卿宗教卿
　讃岐守島津忠時さん　　　　越前前司北条時広
　弾正少弼極楽寺流北条業時　武蔵左近大夫将監時遠
　越後四郎時方　　　　　　　相模七郎宗頼
　武蔵五郎時忠　　　　　　　木工権頭中原親家
　三河前司新田頼氏　　　　　和泉前司二階堂行方
　佐々木壱岐前司泰綱　　　　後藤壱岐前司基政
　武藤少卿景頼　　　　　　　尾張守二階堂行有
歩き
　相模三郎時輔〔刀持ち〕　　城四郎左衛門尉安達時盛
　同六郎安達顕盛　　　　　　同十郎安達時景
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　周防五郎左衛門尉島津忠景
　武藤左衛門尉頼泰　　　　　遠江十郎左衛門尉頼連
　小野寺新左衛門尉道継　　　美作兵衛蔵人家教
　甲斐三郎左衛門尉為成　　　隠岐三郎左衛門尉二階堂行景(行氏？)
　鎌田次郎左衛門尉行俊　　　武石左衛門尉長胤
　狩野四郎左衛門尉景茂
同日の夜になって、両方の帰りのお供を決めました。
御所将軍の方が
　越前前司北条時広　　　　　刑部少輔北条教時
　弾正少弼極楽寺流北条業時　新相模三郎時村
　相模三郎時輔　　　　　　　武蔵五郎時忠
　和泉前司二階堂行方　　　　佐々木壱岐前司泰綱
　武藤少卿景頼　　　　　　　木工権頭中原親家
　上野大夫判官結城広綱
中御所奥さんのお供は、
　相模太郎時宗〔輿を寄せる〕陸奥左近大夫将監塩田義政
　相模七郎宗頼　　　　　　　武蔵左近大夫将監時遠
　越後四郎時方　　　　　　　秋田城介安達泰盛
　三河前司新田頼氏　　　　　後藤壱岐前司基政
　宮内権大輔長井時秀　　　　尾張守二階堂行有

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　しょうぐんけ やまのうちよ　　かんご
弘長元年(1261)十月小五日甲午。天�ﾘ。將軍家 山内自り還御す。

現代語弘長元年(1261)十月小五日甲午。空は晴です。宗尊親王将軍家は山内から帰りました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おんじょうじそうごう せんちょうそうじょう　いげ　すうやから ひょうじょうしょ　れっさん　　　ほんじ　　そしょう　　こと　　よっ　　なり
弘長元年(1261)十月小十九日戊申。園城寺僧綱 仙朝僧正 以下數輩 評定所へ列參す。本寺の訟訴の事に依て也。

さんぬ　じゅうさんにち　げちゃくせし　うんぬん
去る 十三日 下着令むと云々。

参考園城寺は、三井寺。

現代語弘長元年(1261)十月小十九日戊申。三井寺園城寺の役付きの僧(僧綱)の仙朝僧正以下数人が政務事務所評定所に並びました。三井寺の訴訟事の用事です。先日の十三日に着いたそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　まんどころちょうや　いげ　おくおく　ことはじ　　　うんぬん
弘長元年(1261)十月小廿一日庚戌。天�ﾘ。政所 廳屋以下屋々の事始めと云々。

参考政所廳屋は、3月13日に燒失。7月22日再建決定。

現代語弘長元年(1261)十月小二十一日庚戌。空は晴です。政務事務所の庁舎以下の建物の再建始め式です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おんじょうじそうごうら　きらく　　　うんぬん
弘長元年(1261)十月小廿四日癸丑。園城寺僧綱等歸洛すと云々。

現代語弘長元年(1261)十月小二十四日癸丑。三井寺園城寺の役僧達は帰りましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くも　　　　くめ　ごらん　れい　　ごと
弘長元年(1261)十月小廿九日戊午。陰り。貢馬御覽例の如し。

参考貢馬は、陸奥の國から朝廷へ提出する馬を文治元年から頼朝が藤原秀衡に命じて鎌倉で一旦受け取り、朝廷へ提出することにした。但しピンハネ有り。

現代語弘長元年(1261)十月小二十九日戊午。曇りです。朝廷へ献上する馬の将軍御覧式は、例の通りです。

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