吾妻鏡入門第十八巻

建永二年丁卯(1207)正月大

十月廿五日改元承元々年（この年１１月に後鳥羽上皇は、関東への戦勝祈願に最勝四天王院を建立する）

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　しょうぐんけ　つるがおかはちまんぐう　もうでせし　たま　　　　ただ　　かいろう　　をい　　ごようはい　　しんめいっぴきたてま　らる
建永二年(1207)正月大三日己夘。�ﾘ。將軍家�@、鶴岳八幡宮 へ詣令め給ふ。但し廻廊に於て御遥拝�A。神馬一疋奉つ被る。

参考�@將軍家は、実朝。数えで十六歳。
参考�A遥拝は、神殿から離れた場所から遥かに拝む。

現代語建永二年(1207)正月大三日己夘。晴れです。将軍実朝様は鶴岡八幡宮へお参りです。ただし、神殿までいかず回廊から遥拝です。馬一頭を寄付しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しょうぐんけ　　じゅしいじょう　　 じょせし　　たま　　　　うんぬん
建永二年(1207)正月大五日辛亥。將軍家、從四位上に敍令め給ふと云々。

現代語建永二年(1207)正月大五日辛亥。将軍実朝様は、従四位上に任命されましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　　みだいどころ　〔おくるま　にょぼういだしぐるまいちりょう　〕　つるがおかぐう　ぎょさん
建永二年(1207)正月大九日乙酉。將軍家、御臺所〔御車。女房 出車 一兩〕鶴岳宮へ御參す。

じょうぐう　 をい　　ほけきょう　くよう　あ　　 　どうし　　　べっとう ほっきょうていぎょう　 ぐそうら　ぐんさん
上宮に於て法花經供養有り。導師は別當 法橋定曉。供僧等群參す。

現代語建永二年(1207)正月大九日乙酉。将軍実朝様と奥さんの坊門姫〔牛車、女官の裾だし車一両に同乗〕は、鶴岡八幡宮へお参りです。上の宮で法華経を上げる法要がありました。指導僧は八幡宮筆頭の法橋定暁で、お供の坊さん達が群がりつめかけました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　　にしょ　ごしょうじん はじ　　　 ため　　うしお　よく　　たま　　　 おんはまいでなり
建永二年(1207)正月大十八日甲午。將軍家、二所�@御精進始めの爲、潮に浴し�A給ふ。御濱出也。

参考�@二所は、二所詣でといって箱根權現と伊豆山權現の二箇所に詣でる。必ず三島神社にも詣でる。皆、頼朝が平家討伐を祈願した神社。
参考�A潮に浴しは、精進で由比ガ浜へ行って海水で沐浴し身を清めるが、イザナギ以来上の潮で三回、中の潮で三回、下の潮で三回身を洗う。

現代語建永二年(1207)正月大十八日甲午。将軍実朝様は、箱根と伊豆の権現参り二所詣でのためにみそぎを、由比ガ浜へお出になってしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　うのこく　　しょうぐんけ　　にしょ　　ごしんぱつ　　そうしゅう　　ぶしゅう　 だいぜんだいぶ　 あだちのくろううえもんのじょう いか　こしょう
建永二年(1207)正月大廿二日丙申。�ﾘ。夘尅。將軍家、二所へ御進發。相州、武州、大膳大夫、足達九郎右衛門尉已下扈從す。

現代語建永二年(1207)正月大二十二日丙申。晴れです。卯の刻(午前六時頃)箱根・伊豆の権現様参りに出発です。相州義時・武州時房・大膳大夫大江広元・安達九郎右衛門尉景盛以下がお供をしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　さるのこく　 にしょよ　　　かんご
建永二年(1207)正月大廿七日辛丑。�ﾘ。申尅。二所自り還御す。

現代語建永二年(1207)正月大二十七日辛丑。晴れです。申の刻(午後四時頃)に、二所詣でから帰ってきました。

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