吾妻鏡入門第廿六巻

貞應元年壬午(1222)四月小　十三日改元

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 あきのくに　 ちよまつ　　 ぢとうしき　　もっ　　いつくしましゃりょう　 きしん せし　 たま　　　　うんぬん
貞應元年(1222)四月小十九日丁酉。安藝國千与未�@の地頭職を以て嚴嶋社領に寄進令め給ふと云々。

現代語貞応元年(1222)四月小十九日丁酉。安芸国(広島県)千与未の地頭職を厳島神社に寄付しました。

推理�@千与未は、不明。広島県安芸郡府中町千代かも知れない。(読みも不明)

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　ひょうぎ　　きょねんへいかく　いご　　しゅご　ぢとう　　　しょむ　　じょうじょう　さだ　 られ　　　　うんぬん
貞應元年(1222)四月小廿六日甲辰。�ﾘ。評議。去年兵乱以後の守護地頭の所務�@の條々�Aを定め被ると云々。」

とりのこく　きんじつ　 まえはま　 こしごえら　　　うらうら　　しにがも よ　　きた　 のあいだ　　か　　 あや　　　 よっ　　　　まえはま　　をい　　　しちざ　ひゃっけさい　おこなはれ
酉刻、近日、前濱、腰越等の浦々に死鴨寄せ來る之間、彼の恠しに依て、前濱に於て、七座の百恠祭を行被る。

くんみちあそん　 ともすけ　　ちかもと　 ただなり　 しげむね　 ふみもとら これ　 ほうし　　　　　おんし　　とうのこうとうよりたかなり
國道朝臣、知輔、親職、忠業、重宗、文元等之を奉仕す。御使は藤匂當�B頼隆也。

参考�@所務は、領地関係。金銭相続関係は、雑務。
参考�A條々は、箇条書き。
参考�B匂当は、三位以上の家の侍所などに置かれた出納事務員らしい。

現代語貞応元年(1222)四月小二十六日甲辰。晴れです。評定所で会議です。去年の戦乱以後の守護地頭の領地関係を箇条書きに定めましたとさ。」

午後六時頃、最近由比ガ浜や腰越浜などの海岸に鴨の死体が吹き寄せられて来たので、その変異に対し由比ガ浜で七人による百怪祭を行いました。安陪國道さん・安陪知輔・安陪親職・安陪忠業・安陪重宗・安陪文元などがこれを勤めました。代参は藤原匂当頼隆です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とりいぜんに　　　しょりょう　　きいのくにさののしょう　　　ぢとうしき　　もっ　　　　あま　いちごののち
貞應元年(1222)四月小廿七日乙巳。鳥居禪尼が所領の紀伊國佐野庄�@の地頭職を以て、尼一期之後、

しそくちょうせんほっきょうそうでんすべ　のよし　　おお　 られ　　　うんぬん
子息長詮法橋 相傳可き之由、仰せ被ると云々。

か　　　ぜんには　　ろくじょうていいぜんもん　〔ためよし〕　　　いもうと　　 　こうだいしょうけ　　　をぼ　 なり　　よっ　　すうかしょ　　 　ぢとうしき　　　さ　　 せし　 たま　をはんぬ
彼の禪尼者、六條廷尉禪門 〔爲義〕が妹�A。 故右大將家の姨母也。仍て數ケ所の地頭職を避け令め給ひ訖。

しか　　　　しそく ほっきょうぎょうちう　〔ちょうせん　　あに〕　はは　　めい　　そむ　　　　とうしょう　おうりょう
而るに子息 法橋行忠〔長詮が兄〕母の命に背き、當庄を押領す。

あまつさ　きょねん へいらんのとき　　せんとう　　そうら　かっせんいた　　　　れいらくののち　　なおとうしょう　たちかえ　　のよし　　ちょうせんうった　もう　　　　つ　　　かく　　ごと
 剩へ去年 兵乱之時、 仙洞に候ひ合戰致し、 零落之後、猶當庄へ立還る之由、 長詮 訴へ申すに就き此の如し。

ちょうせんは　　かんとう　　　ごきとうの　　ちう　　ぬき　　　　　　うんぬん
 長詮者、關東の御祈祷之忠を抽んずと云々。

参考�@佐野庄（紀州）は、和歌山県新宮市佐野。
参考�A〔爲義〕が妹は、為義の娘で行家の姉。

現代語貞應元年(1222)四月小二十七日乙巳。鳥居禅尼の領地の紀伊国佐野庄の地頭職は、尼が死んだ後は、息子の長詮法橋が相続するように命じました。この禅尼は六条廷尉禅門爲義の妹(娘)で、頼朝様の叔母です。そこで数か所の地頭職を分け与えております。しかし、倅の法橋行忠〔長詮の兄〕は母に逆らって、この荘園を横取りしました。そればかりか、去年の合戦に後鳥羽上皇の方へついて合戦に参加して、落ちぶれた後はになおも、この荘園へ戻ったそうな。長詮が訴えたのでそうしました。長詮は、関東のために祈祷を行いました。

参考　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌───┬───┐
　　熊野新宮女─┬─爲義　　　　　　　　 長範　　湛快　　範快
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　　　 行家　田鶴原女房（鳥居禅尼）─┬─行親　  湛増　　範永
　　　　　　　　　　　　　　　 　┌─┴─┐　　（本宮）
　　　　　　　　　　　　　　　　長詮　　行忠　　　　　　　　

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