吾妻鏡入門第卅一巻 　

嘉禎三年丁酉(1237)五月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごしょ　　　をい　　おんうらあ　　　　 これ たいふほうがんさだかず　　さんぬ　はるのころじょうらく
嘉禎三年(1237)五月小十五日乙丑。御所に於て御占有り。是 大夫判官定員、 去る春之比上洛す。

なんにち　きさんすべ　　や　  のよし　　うんぬん
何日に歸參可き哉之由と云々。

こんげつじうはっくにち　さんちゃくすべ のむね　はるかた　 やすさだ　すけとしら　いちどう　　これ　　もう　　　 ともすけ じうろくしちにちのあいだ　うんぬん
今月十八九日に參着可き之旨、�ﾘ賢、泰貞、資俊等一同に之を申す。知輔 十六七日之間と云々。

現代語嘉禎三年(1237)五月小十五日乙丑。御所で占いがありました。これは、大夫判官藤原定員は、去る二月に京都へ行ってますが、鎌倉へ帰ってくるのが、何時がお日和が良いかなのだそうな。今月十八・十九日に鎌倉着が良いと安陪晴賢・泰貞・資俊が一緒に申しあげました。でも、安陪知輔は十六・十七日だと云いましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さだかずきょうとよ　　　きさん　　　　さんぬ　つき にじうにさんよっか　あいだ　　ひ　　いろ　 こと らくちゅうこれ　 あやし
嘉禎三年(1237)五月小十九日己巳。定員京都自り歸參す。去る月 廿二三四日の間、日の色の事 洛中之を怪む。

にじうにさんにち そらはれ　ひ　 いろあか　 いわしみず ぎょうこうあ　　　　よっ　　そ　　　　さた　な
 廿三日　天霽 日の色赤。石�C水 行幸有るに依て其の沙汰無し。

よくじつ　　てんもんどう　〔すえなお　よしみつ　なりつね〕　てんぺんのむねそうもんせし　　のよし　　ごぜん　　をい　　これ　　もう　　　　うんぬん
翌日、天文道〔季尚、良光、業經〕天變之旨奏聞令む之由。御前に於て之を申すと云々。

現代語嘉禎三年(1237)五月小十九日己巳。藤原定員が京都から帰って来ました。「先月の二十二・二十三日の太陽の色については京都でも怪しんでいました。二十三日は、空が晴れましたけどお日様は赤でした。但し、石清水八幡宮への行幸があったので、何も指示はありませんでした。翌日に天文方の季尚・良光・業経が、天変だと天皇に上申しました。」と将軍に報告しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　さんぬ　つき にじうさんにち にちげつとも　あかき　　こと　　おんみょうのかみこれのりあそん　そうしょくのよし　　きょうとよ　　　これ　　もう
嘉禎三年(1237)五月小廿九日己夘。霽。去る月　廿三日 々月共に赤黄の事、 陰陽頭惟範朝臣、 薄蝕之由、京都自り之を申す。

のぶかた　もう　じょうこれ　　ふごう
宣賢の申す状之に苻合す。

よっ　　かぞえのかみもろかずあそん　 ぶぎょう　　な　　　　 にちようさい　 こんじ すべ　　のよしおお　　らる　　　　かく　 ほかおんいの　な
仍て 主計頭師員朝臣を奉行と爲し、日曜祭を勤仕可し之由仰せ被る。此の外御祈り無し。

はたまたすえなおあそんもう　　　い　　　　　　かすみ　うつされ　ひ　　いろ　　あかき　　さだ　　　　　　なら　　なり
將又季尚朝臣申して云はく。霞に映被る日の色が赤黄は定まれる習ひ也。

かつう　けんきゅう　すけもと　　はるみつら はくしょく のよし　　もう　　　いへど　　　すえひろあそん さら　　へん　　あらざるのむねこれ　　もう　　　　うんぬん
且は 建久に資元、�ﾘ光等 薄蝕之由を申すと雖も、季弘朝臣 更に變に 非 之旨之を申すと云々。

現代語嘉禎三年(1237)五月小二十九日己卯。晴れました。先月二十三日の太陽と月がどちらも赤や黄色だった事について、陰陽寮の長官の惟範さんが、薄い日食だと京都から伝えてきました。安陪宣賢の行ってた事と合ってました。そこで、主計頭中原師員さんが担当して、太陽を慰める日曜祭を勤めるように、仰せになられました。その他のお祈りはありません。
またまた、安陪季尚さんが言いだしました。「霞に映える太陽の色は赤か黄色に決まっているのはあたりまでだよ。建久年間に資元・晴光等が薄い日食だと云ってるにもかかわらず、安陪季弘さんがなおも異常では無いと云い張っていましたよ。」だとさ。

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