吾妻鏡入門第四十二巻

建長四年(1252)九月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 しょうぐんけ ごのう　へいゆ ののち　　おんてあし　 あら　　せし　 たま
建長四年(1252)九月大一日壬午。�ﾘ。將軍家御惱平愈之後、御手足を洗い令め給ふ。

現代語建長四年(1252)九月大一日壬午。晴れです。宗尊親王将軍家は、病気が治った後、病の気を払うため手足を洗い清めました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　　　ごふよ　へいゆ　　こと　　 きょうと　　 もうさる　　　　みうらとおとうみろくろうさえもんのじょうときつら　おんし　　な　　じょうらく　　　　うんぬん
建長四年(1252)九月大二日癸未。天�ﾘ。御不豫平愈の事、京都へ申被る。三浦遠江六郎左衛門尉時連 御使と爲し上洛すと云云。

現代語建長四年(1252)九月大二日癸未。空は晴です。病気が治った事を、京都へ伝えられました。三浦遠江六郎左衛門尉佐原時連が、使者として京都へ上るそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　せんじゅほう　　しんどくだいはんにゃきょう けちがん　　　うんぬん
建長四年(1252)九月大四日乙酉。天�ﾘ。千手法・信讀大般若經等 結願すと云云。

現代語建長四年(1252)九月大四日乙酉。空は晴です。千手観音の供養ときちんと読む大般若経が満願しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くもり　うまのこく　　ごのう　ごへいゆ　ののち　　おんもくよく　のぎ　あ　　　　　しか　　　　きょう　　もつにちなり
建長四年(1252)九月大七日戊子。陰。午尅、御惱御平減之後、御沐浴之儀有り。而るに今日は没日也。

およ　　ひなみ な　　 のよし　おんみょうどう しき　　　　かたぶ　もう　　　いへど　　　さんぬ　ついたちおんてあし　 あら　　せし　 たま　 のあいだ　　そ　　はばか　　あ　　　べからずのあいだ
凡そ日次無き之由、陰陽道 頻りに傾け申すと雖も、去る 一日 御手足を洗い令め御ふ之間、其の憚り有る不可之間、

くすけただもちあそんこれ　　はか　　もう
醫家忠茂朝臣之を計り申す。

わかみやべっとうほういん　かじ　　ためさんこうさる　　　　ことおは　　　たいしゅつ　　 うんぬん　　そ　　　ごひょうじょうあ　　　　　ごきとう　のしょう　 おこなはれ
若宮別當法印 加持の爲參候被る。事終りて退出すと云云。其の後評定有り。御祈祷之賞を行被る。

ほういんりゅうべん みののくに いわたきごう　はいりょう　　　こ　　　うえ　　そうｓじょう　　ぶさる　　べ　　　　　うんぬん　　みぎょうしょ　　い
法印隆弁 　 美濃國 岩瀧郷を拝領す。此の上は僧正に補被る可しと云云。御教書に云はく。

　　このたび　　ごのう　　こと　　おんきしゅうちゅう　あた　　　　ごへいゆのじょう　　ほうけんげんじゅうのよし　 こと　 かん　 おぼ　　め さる　ところなり
　今度の御惱の事、御祈修中に當り、御平愈之條、法驗嚴重之由、殊に感じ思し食被る所也。

よっ　　いっそん　すす　 られ　　もっと　　ごじあいあ　　　べ　　ものなり
仍て一村を進め被、尤も御自愛有る可き者也。

現代語建長四年(1252)九月大七日戊子。曇りです。昼の12時頃、病気が良くなったので、穢れを洗い流す沐浴の儀式がありました。しかし、今日は関東では8月の子の日が凶日なのです。お日和について陰陽師の連中がいちゃもんをつけましたが、先日の一日に手足を洗い清めていますので、その支障はないでしょうと、医者の丹波忠茂さんが考慮して云いました。鶴岡八幡宮筆頭の法印隆弁は、加持祈祷のために来ました。その事が終わって引き下がりました。その後、会議があって、加持祈祷の褒賞を与えました。法印隆弁は、美濃国岩滝郷を貰いました。そればかりか、僧正に任命されるように決めました。そのお手紙に言うには、
　今度の病気で、加持祈祷を勤めた処、治ったのは、その法力がすごいからだと、特に感謝しておられるところです。それなので、一村を与えまして、とてもとても感謝している者なのです。

参考没日は、兇、１・２月は辰酉亥、３・４月は未、５月は戌、６・７・８・９月は京都では寅、関東では子、１０月は丑午、１１月は巳、１２月は丑。
参考傾へ申すは、反対する。参考この時期医家は、和気と丹波。参考岩滝郷は、各務原市蘇原宮塚。参考法験厳重は、ご祈祷の結果が良い。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　そうしゅうしつけにはか　びょうのう　　よっ　　きとう　　しゅうさる　　　　うんぬん
建長四年(1252)九月大十六日丁酉。天�ﾘ。相州室家俄に病惱す。仍て祈祷を修被ると云云。

現代語建長四年(1252)九月大十六日丁酉。空は晴です。時頼さんの奥さんが急に具合が悪くなりました。それなので加持祈祷を勤めましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　しょうぐんけ　か　　ふれい　　こと　　とぶら　せし　 たま　　　　さつまのしちろうさえもんのじょう おんしたり
建長四年(1252)九月大十七日戊戌。天�ﾘ。將軍家彼の不例の事を訪ひ令め御ふ。薩摩七郎左衛門尉 御使爲。

現代語建長四年(1252)九月大十七日戊戌。空は晴です。宗尊親王将軍家は、時頼さんの奥さんに病気見舞いをしました。薩摩七郎左衛門尉伊東祐能が代理です。

参考將軍家から見舞いがあった。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　そうしゅう　しつ　 ふれい　 こと　　 へいげん　　　うんぬん
建長四年(1252)九月大十八日己亥。天�ﾘ。相州が室の不例の事、平減すと云云。

現代語建長四年(1252)九月大十八日己亥。空は晴です。時頼さんの奥さんの病気が治りましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　 せんじつ　ごりゅうがん　　よっ　　　 つるおかぐう　　をい　　におうえ　　　おこなはれ
建長四年(1252)九月大廿五日丙午。天�ﾘ。先日の御立願に依て、鶴岡宮に於て仁王會を行被る。

さるのこく　しょうぐんけおんかたが　　　うぶえい　いずみがやつ　てい　 い　　 たま
申刻、將軍家御方違へ。右武衛が泉谷の亭へ入り御ふ。

　ぐぶにん
供奉人

　　　きば
　騎馬

　　　　さがみうこんたいふしょうげんときさだ　　　　さがみしきぶのたいふときひろ
　　相摸右近大夫將監時定　　相摸式部大夫時弘

　　　　おな　　　　はちろうときたか　　　　　　　　　おおくらごんのしょうゆうともひろ
　　同じき八郎時隆　　　　　大藏權少輔朝廣

　　　　びんごのぜんじやすもち　　　　　　　　　　　おおすみぜんじただとき
　　備後前司康持　　　　　　大隅前司忠時

　　　　いせぜんじゆきつな　　　　　　　　　　　　　じょうのくろうやすもり
　　伊勢前司行綱　　　　　　城九郎泰盛

　　　　いやじろうさえもんのじょうちかもり　　　　　 おきのさぶうろうさえもんのじょうゆきうじ
　　弥次郎左衛門尉親盛　　　隱岐三郎左衛門尉行氏

　　　　あだちのさぶろうさえもんのじょうみちうじ　　 むとうさえもんのじょうかげより
　　足立三郎左衛門尉道氏　　武藤左衛門尉景頼

　　　　おのでらさえもんのじょうみちとき　　　　　　かのうのごろうさえもんのじょうためひろ
　　小野寺左衛門尉通時　　　狩野五郎左衛門尉爲廣

　　　かち
　歩行

　　ぎょけん　 えき　 ひと
　御劔の役の人

　　　　ほうじょうろくろうときさだ
　　北條六郎時定

　　つい
　次で

　　　　じょうのしろうときもり　　　　　　　　　　　　　　 なんぶまたじろうときざね
　　城四郎時盛　　　　　　　南部又次郎時實

　　　　いずみのじろうさえもんのじょうゆきあき　　　しぶやのさえもんのじょうたけしげ
　　和泉次郎左衛門尉行章　　澁谷左衛門尉武重

　　　　むとうじろうひょうえんじょうよりはる　　　　　　　といのさえもんしろうさねつな

　　武藤次郎兵衛尉頼泰　　　土肥左衛門四郎實綱

　　　　かとうさぶろうかげつね　　　　　　　　　　　とうのなかつかさしょうゆうたねしげ
　　加藤三郎景經　　　　　　東中務少輔胤重

現代語建長四年(1252)九月大二十五日丙午。空は晴です。先日の祈願として鶴岡八幡宮で仁王経の法会を行いました。午後4時頃、宗尊親王将軍家の方角替えです。右兵衛督教定さんの泉谷の屋敷へ入られました。
お供の人
　乗馬
　　相模右近大夫将監北条時定　相模式部大夫北条時弘
　　同じ八郎北条時隆　　　　　大蔵権少輔結城朝広
　　備後前司三善康持　　　　　城九郎安達泰盛
　　伊勢前司二階堂行綱　　　　隠岐三郎左衛門尉二階堂行氏
　　足立三郎左衛門尉道氏　　　武藤左衛門尉景頼
　　小野寺左衛門尉通時　　　　狩野五郎左衛門尉為広
　歩き
　刀持ちの役の人
　　北条六郎時定
　次に
　　城四郎安達時盛　　　　　　南部又次郎時実
　　和泉次郎左衛門尉二階堂行章　渋谷左衛門尉武重
　　武藤次郎兵衛尉頼泰　　　　土肥左衛門四郎実綱
　　加藤三郎景経　　　　　　　東中務少輔胤重

参考右武衛は、一条教定。泉谷の浄光明寺前に住み、藤谷と呼ばれてたことがある。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　　〔しもつま〕　しゅりのすけふじわらあそんながまさ そつ
建長四年(1252)九月大廿九日庚戌。天�ﾘ。〔下妻〕 修理亮藤原朝臣長政 卒。

現代語建長四年(1252)九月大二十九日庚戌。空は晴です。下妻修理亮藤原長政が亡くなりました。

参考没年記事。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　 かまくらちゅう しょしょ　　こしゅ　 きんぜいすべ　　のよし　　ほうほう　　ぶぎょうにんら　　おお
建長四年(1252)九月大卅日辛亥。天�ﾘ。鎌倉中 所々の沽酒を禁制可し之由、保々の奉行人等に仰す。

よっ　かまきらちゅう　しょしょみんか　　をい　　ちゅう　ところの さけつぼ さんまんななせんにひゃくしちじゅうよくち　　うんぬん　　また　 しょこくいち　 さけ ぜんぶん ちょうじすべ　　のよし　　うんぬん
仍て鎌倉中の所々民家に於て註す所之 酒壷　三万七千二百七十四口と　云云。又、諸國市の酒 全分 停止可し之由と云云。

現代語建長四年(1252)九月大三十日辛亥。空は晴です。鎌倉内でのあちこちでの酒を禁止するように、各町内管理人に命じました。そこで、鎌倉中のあちこちの民家で書き出した酒壺は、37,274個だそうな。又、諸国の市での酒の販売は、全て停止するようにだそうな。

参考沽酒は、酒を売買する事。又はその酒。参考戸主（へぬし）は、間口五丈、奥行き十丈。戸主が集まり保（ほう）という。

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