吾妻鏡入門第四十二巻
建長四年(1252)十二月小
| 建長四年(1252)十二月小十三日癸亥。天晴。自昨日將軍家御惱。今日戌刻御増氣。仍相州令參給。俄於南門被行土公鬼氣等祭。爲親朝臣奉仕之。出羽前司行義爲奉行。御使右近藏人仲時。 |
読下し そらはれ きのう
よ しょうぐんけ ごのう きょう いのこく おんましけ
建長四年(1252)十二月小十三日癸亥。天晴。昨日自り將軍家御惱。今日戌刻
御増氣。
よっ そうしゅうさん せし
たま にはか みなみもん をい どこう きき ら まつり おこなはれ ためちかあそんこれ ほうし
仍て相州參じ令め給ひ、俄に南門に於て土公鬼氣等の祭を行被る。爲親朝臣之を奉仕す。
でわぜんじゆきよし
ぶぎょうたり おんし うこんくらんどなかとき
出羽前司行義奉行爲。御使は右近藏人仲時。
現代語建長四年(1252)十二月小十三日癸亥。空は晴です。昨日から宗尊親王将軍家が具合が悪いのです。今日、午後8時頃、容態が悪化しました。そこで、時頼さんがやってきて、すぐに南門で土神様と鬼神様のお祓いの祭を行いました。安倍為親さんがこれを勤めました。出羽前司二階堂行義が担当です。将軍の代参は右近蔵人仲時です。
参考土公は、土地についてる神。参考鬼気は、外から来る悪霊。
| 建長四年(1252)十二月小十六日丙寅。天晴。辰刻。日南北西有珥。六尺去之皆在西。色靑赤白之由。司天等申之云云。 |
読下し そらはれ たつのこく ひ なんぼくせい じ あ ろくしゃくこれ
さ みなにし あ
建長四年(1252)十二月小十六日丙寅。天晴。辰刻。日の南北西に珥有り。六尺之を去りて皆西に在り。
いろあおあかしろのよし してんら これ
もう うんぬん
色靑赤白之由、司天等之を申すと云云。
現代語建長四年(1252)十二月小十六日丙寅。空は晴です。午前8時頃、お日様の南西と北西にみみだまが付いています。1.8m離れて全て西にいきました。色は、青と赤と白だと、天文方が報告しましたとさ。
参考珥（じ）は、みみだま。イヤリング。ついでながら滋賀県長浜市高月町渡岸寺88の向源寺の渡岸寺観音堂の国宝の十一面観音像には鼓胴式耳璫（じとう）という太鼓の胴のような形の耳飾りを付けている。菩薩の釈迦が出家してこれをとりはずしたので、如来の耳には穴が開いている。
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建長四年(1252)十二月小十七日丁夘。天晴。將軍家御移徙之後。今日始御參鶴岡八幡宮。雖有御惱餘氣抑御出〔御車御直衣〕云云。 |
読下し そらはれ
しょうぐんけ ごいし ののち きょう はじ つるがおかはちまんぐう ぎょさん
建長四年(1252)十二月小十七日丁夘。天晴。將軍家御移徙之後、今日始めて鶴岡八幡宮へ御參。
ごのう よけ あ いへど
おさ おんいで 〔 おくるま ごのうし 〕 うんぬん
御惱の餘氣有ると雖も抑へて御出〔御車御直衣〕と云云。
ぐぶにん
供奉人
せんじん ずいへい
先陣の随兵
ほうじょうろくろうときさだ
とおとうみろくろうのりとき
北條六郎時定 遠江六郎教時
むつのいやしろうときもち あしかがじろうかねうじ
陸奥弥四郎時茂 足利次郎兼氏
とおとうみのたろうきよとき
みうらのすけもりとき
遠江太郎淸時 三浦介盛時
じょうのくろうやすもり ながいのたろうときひで
城九郎泰盛 長井太郎時秀
おわりのじろうきんとき
むさしのしろうときなか
尾張次郎公時 武藏四郎時仲
おくるま
御車
じょうのじろうよりかげ いずみのしちろうさえもんのじょうかげつね
城次郎頼景 和泉七郎左衛門尉景經
かのうのごろうさえもんのじょうためひろ
あだちのさぶろうさえもんのじょうもとうじ
狩野五郎左衛門尉爲廣 足立三郎左衛門尉元氏
しきぶのひょうえじろうみつやす ちょうのうたさえもんのじょう
式部兵衛次郎光泰 長雅樂左衛門尉
かまたのさぶろう
うなかみのいやじろうたねかげ
鎌田三郎 海上弥次郎胤景
といのしろうさねつな
たけだのしちろうまさひら
土肥四郎實綱 武田七郎政平
ひたちのじろうひょうえのじょうゆきかつ しぶやのさえもんのじょうたけしげ
常陸次郎兵衛尉行雄 澁谷左衛門尉武重
ひごのしろうひょうえのじょうゆきさだ 〔いじょうひたたれ たいけん〕
肥後四郎兵衛尉行定〔已上直垂に帶劔〕
ぎょけん
えき ひと
御劔の役の人
さきのうまごんのかみ 〔 ほい 〕
前右馬權頭〔布衣〕
おんうしろ 〔 ほい 〕
御後〔布衣〕
むつのかみ さがみのかみ
陸奥守 相摸守
おわりぜんじときあき むさしのかみともなお
尾張前司時章 武藏守朝直
むつかもんのすけさねとき さがみうこんたいふしょうげんときさだ
陸奥掃部助實時 相摸右近大夫將監時定
さがみしきぶのたいふときひろ えちごのごろうときいえ
相摸式部大夫時弘 越後五郎時家
あしかがたろういえうじ さどぜんじもとつな
足利太郎家氏 佐渡前司基綱
おやまでわぜんじながむら あいだのじょうすけよしかげ
小山出羽前司長村 秋田城介義景
みかわのぜんじよりうじ さきのおおくらしょうゆうともひろ
三河前司頼氏 前大藏權少輔朝廣
でわぜんじゆきよし しもつけぜんじやすつな
出羽前司行義 下野前司泰綱
さきのだざいしょうにためすけ いずみのぜんじゆきかた
前太宰少貳爲佐 和泉前司行方
いきぜんじやすつな ごとういきぜんじもとまさ
壹岐前司泰綱 後藤壹岐前司基政
いがぜんじときいえ いせぜんじゆきつな
伊賀前司時家 伊勢前司行綱
おおすみぜんじただとき とおとうみじろうさえもんのじょうみつもり
大隅前司忠時 遠江次郎左衛門尉光盛
おおそねさえもんのじょうながやす
むとうさえもんのじょうかげより
大曽祢左衛門尉長泰 武藤左衛門尉景頼
かじわらうえもんのじょうかげとし こうづけごろうひょうえのじょうしげみつ
梶原右衛門尉景俊 上野五郎兵衛尉重光
いやじろうさえもんのじょうちかもり
ぶんごのしろうさえもんのじょうただとき
弥次郎左衛門尉親盛 豊後四郎左衛門尉忠時
でわのじろうさえもんのじょうゆきあり
おおそねじろうさえもんのじょうもりつね
出羽次郎左衛門尉行有 大曽祢次郎左衛門尉盛經
おのでらさえもんのじょうみちとき
ひごのじろうさえもんのじょうためとき 〔 だざい 〕
小野寺左衛門尉通時 肥後次郎左衛門尉爲時〔太宰〕
あまのいずみのごろうさえもんのじょうまさやす
おださえもんのじょうときとも
天野和泉五郎左衛門尉政泰 小田左衛門尉時知
あまのひごさえもんのじょうかげうじ
おしだれさえもんのじょうときもと
天野肥後左衛門尉景氏 押垂左衛門尉時基
あだちのたろうさえもんのじょうもとなお でわとうじさえもんのじょうよりひら
足立太郎左衛門尉元直 出羽藤次左衛門尉頼平
ぜんのうえもんのじょうやすなが ししどいきじろうさえもんのじょういえうじ
善右衛門尉康長 完戸壹岐次郎左衛門尉家氏
ほうきさぶろうきよつね しきぶのひょうえたろうみつまさ
伯耆三郎淸經 式部兵衛太郎光政
こうじん ずいへい
後陣の随兵
でわのさぶろうゆきすけ
えどのしちろうたろうながもと
出羽三郎行資 江戸七郎太郎長元
こうづけじうろうともむら
たけいししろうたねじ
上野十郎朝村 武石四郎胤氏
あそぬまのこじろうみつつな うなかみじろうたねかた
阿曽沼小次郎光綱 海上次郎胤方
とおとうみろくろう さつまのはちろうすけうじ
遠江六郎 薩摩八郎祐氏
たけだのごろさぶろうまさつな
なんぶじろうさねみつ
武田五郎三郎政綱 南部次郎實光
現代語建長四年(1252)十二月小十七日丁卯。空は晴です。宗尊親王将軍家は引っ越し後、今日初めて鶴岡八幡宮へお参りです。病気の残り気があっても、我慢してお出ましだそうな〔牛車で直衣です〕。
お供は、
前を行く武装儀仗兵
北条六郎時定 遠江六郎北条教時
陸奥弥四郎時茂 足利次郎兼氏
遠江太郎北条清時 三浦介盛時
城九郎安達泰時 長井太郎時秀
尾張次郎北条公時 武蔵四郎時仲
牛車
城次郎安達頼景 和泉七郎左衛門尉天野景経
狩野五郎左衛門尉為広 足立三郎左衛門尉元氏
式部兵衛次郎伊賀光泰 長谷部雅楽左衛門尉朝連
鎌田三郎義長 海上弥次郎胤景
土肥四郎実綱 武田七郎政平
常陸次郎兵衛尉二階堂行雄 渋谷左衛門尉武重
肥後四郎兵衛尉大貫行定〔以上は鎧直垂を着て太刀を佩いている〕
太刀持ちの人
前右馬権頭北条政村〔布衣〕
将軍の後ろ〔布衣〕
陸奥守北条重時 相模守北条時頼
尾張前司北条時章 武蔵守北条朝直
陸奥掃部助北条実時 相模右近大夫将監北条時定
相模式部大夫北条時弘 越後五郎北条時家
足利太郎家氏 佐渡前司後藤基綱
小山出羽前司長村 秋田城介安達義景
三河前司新田頼氏 前大蔵権少輔結城朝広
出羽前司二階堂行義 下野前司宇都宮泰綱
前太宰少弐為佐 和泉前司二階堂行方
壱岐前司佐々木泰綱 後藤壱岐前司基政
伊賀前司時家 伊勢前司二階堂行綱
大隅前司島津忠時 遠江次郎左衛門尉佐原光盛
大曽祢左衛門尉長泰 武藤左衛門尉景頼
梶原右衛門尉景俊 上野五郎兵衛尉結城重光
弥次郎左衛門尉親盛 豊後四郎左衛門尉島津忠時
出羽次郎左衛門尉二階堂行有 大曽祢次郎左衛門尉盛経
小野寺左衛門尉通時 肥後次郎左衛門尉為時〔太宰〕
天野和泉五郎左衛門尉政泰 小田左衛門尉時知
天野肥後左衛門尉景氏 押垂左衛門尉時基
足立太郎左衛門尉元直 出羽藤次左衛門尉藤原頼平
善右衛門尉三善康長 宍戸壱岐次郎左衛門尉家氏
伯耆三郎葛西清経 式部兵衛太郎伊賀光政
後ろを行く武装儀仗兵
出羽三郎二階堂行資 江戸七郎太郎長元
上野十郎結城朝村 武石四郎胤氏
阿曾沼小次郎光綱 海上次郎胤方
遠江六郎北条教時 薩摩八郎伊東祐氏
武田五郎三郎政綱 南部次郎実光
| 建長四年(1252)十二月小廿七日丁丑。天晴。立春節分御方違事。御惱餘氣未令散御之間。渡御々所西對北妻云云。奥州被献盃酒御引出物云云。 |
読下し そらはれ りっしゅんせちぶん おんかたたが こと
ごのう よき いま さん せし たま のあいだ
建長四年(1252)十二月小廿七日丁丑。天晴。立春
節分の御方違への事、御惱の餘氣未だ散じ令め御はざる之間、
ごしょ にし
たい きたつま とぎょ うんぬん おうしゅう はいしゅ ひきでもの けん らる うんぬん
々所西の對の北妻に渡御すと云云。奥州、盃酒御引出物を献じ被ると云云。
現代語建長四年(1252)十二月小二十七日丁丑。空は晴です。立春の方角替えについて、病気の残り気がまだ無くなっていないので、御所西の対の屋の北側の濡れ縁にお渡りになられたそうな。重時さんが、酒や引き出物を献上しましたとさ。
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