吾妻鏡入門第五十巻 　

文應二年辛酉(1261)正月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　はれ　　おうばん　〔そうしゅうぜんしつ　　おんさた　〕　　　りょうこくし　いげ　ほい　　き　　しゅっし　　ま　　とうざい　さむらい　そうら
文應二年(1261)正月大一日癸亥。霽。垸飯〔相州禪室の御沙汰〕。兩國司以下布衣を着て出仕す。先ず東西の侍に候う。

つぎ　　おんじこく　　もう　　いだ　　ののち　　ていじょう　とうざいに あいわか　 ちゃくざ
次に御時尅を申し出す之後、庭上の東西于相分れ着座す。

にしざ
西座

　　むさしのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわりのぜんじ
　武藏前司　　　　　　　　　　　尾張前司

　　とおとうみぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えちごのかみ
　遠江前司　　　　　　　　　　　越後守

　　ぎょうぶしょうゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ぢぶごんのだいゆう
　刑部少輔　　　　　　　　　　　治部權大輔

　　あいだのじょうすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いきぜんじ　　〔　ささき　〕
　秋田城介　　　　　　　　　　　壹岐前司〔佐々木〕

　　いずみのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 なはぎょうぶしょうゆう
　和泉前司　　　　　　　　　　　那波刑部少輔

　　ぬいどののとう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くないごんのだいゆう
　縫殿頭　　　　　　　　　　　　宮内權大輔

　　ごとういきぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 つしまぜんじ
　後藤壹岐前司　　　　　　　　　對馬前司

　　いがぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひゅうがぜんじ
　伊賀前司　　　　　　　　　　　日向前司

　　すおうぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かずさぜんじ
　周防前司　　　　　　　　　　　上総前司

　　むとうしょうきょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 かがぜんじ
　武藤少卿　　　　　　　　　　　加賀前司

　　かいのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こうづけのすけ
　甲斐守　　　　　　　　　　　　上野介

　　おおたしんみんぶのたいふ　　　　　　　　　　　　　　　いずのたろうさえもんのじょう
　太田新民部大夫　　　　　　　　伊豆太郎左衛門尉

　　しきぶのたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　さとうみんぶのたいふ
　式部太郎左衛門尉　　　　　　　佐藤民部大夫

　　ちょうのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぜんのごろうさえもんのじょう
　長左衛門尉　　　　　　　　　　善五郎左衛門尉

　　かぢのしちろううえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　ちょうないさえもんのじょう
　加地七郎右衛門尉　　　　　　　長内左衛門尉

　　ひたちのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 じょうのしろうさえもんのじょう
　常陸二郎左衛門尉　　　　　　　城四郎左衛門尉

　　さつまのしちろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　むとううこんしょうげん
　薩摩七郎左衛門尉　　　　　　　武藤右近將監

　　ちくぜんのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　ではのしちろうさえもんのじょう
　筑前三郎左衛門尉　　　　　　　出羽七郎左衛門尉

　　じょうのごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　 ぜんのろくろうさえもんのじょう
　城五郎左衛門尉　　　　　　　　善六郎左衛門尉

　　じょうのろくろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのさぶろうさえもんのじょう
　城六郎　　　　　　　　　　　　和泉三郎左衛門尉

　　じょうのいやくろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　じょうのじゅうろう
　城弥九郎　　　　　　　　　　　城十郎

　　こうづけのたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　 えっちゅうのじろうさえもんのじょう
　上野太郎左衛門尉　　　　　　　越中次郎左衛門尉

　　いせのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　とおとうみのじゅうろうさえもんのじょう
　伊勢三郎左衛門尉　　　　　　　遠江十郎左衛門尉

　　いきのさぶろうさえもんのじょう　〔ささき〕　　　　　　　　　　といのしろうさえもんのじょう
　壹岐三郎左衛門尉〔佐々木〕　　　土肥四郎左衛門尉

　　むとうのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　 こうづけのさぶろうさえもんのじょう
　武藤二郎左衛門尉　　　　　　　上野三郎左衛門尉

　　かずさのたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　ごとうのじろうさえもんのじょう
　上総太郎左衛門尉　　　　　　　後藤二郎左衛門尉

　　すおうのごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　しなののじろうさえもんのじょう
　周防五郎左衛門尉　　　　　　　信濃二郎左衛門尉

　　おおそねのたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　ひごのさぶろううえもんのじょう

　大曾祢太郎左衛門尉　　　　　　肥後三郎右衛門尉

　　かまたのとしょさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　おのでらしんさえもんのじょう
　鎌田圖書左衛門尉　　　　　　　小野寺新左衛門尉

　　かずさのさぶろううえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　しきぶのじろうさえもんのじょう
　上総三郎右衛門尉　　　　　　　式部二郎左衛門尉

　　しきぶのさえもんさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　びんごのたろう
　式部左衛門三郎　　　　　　　　備後太郎

　　かずさのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 たけいしのしんさえもんのじょう
　上総四郎　　　　　　　　　　　武石新左衛門尉

　　やまだのひこじろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やべのへいじうまじろう
　山田彦次郎　　　　　　　　　　矢部平次馬二郎

　　こうづけのろくろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぜんのろくろうさえもんじろう
　上野六郎　　　　　　　　　　　善六郎左衛門二郎

　　かいのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 おきのしろうひょうえのじょう
　甲斐三郎左衛門尉　　　　　　　隱岐四郎兵衛尉

ひがしざ
東座

　　えちごのうまのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えちぜんぜんじ
　越後右馬助　　　　　　　　　　越前々司

　　むつさこんのたいふしょうげん　　　　　　　　　　　　　 おわりさこんのたいふしょうげん
　陸奥左近大夫將監　　　　　　　尾張左近大夫將監

　　だんじょうしょうひつ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しんさがみのさぶろう
　彈正少弼　　　　　　　　　　　新相摸三郎

　　むさしさこんのたいふしょうげん　　　　　　　　　　　　 みんぶごんのだいゆう
　武藏左近大夫將監　　　　　　　民部權大輔

　　さがみのさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　 しちろう
　相摸三郎　　　　　　　　　　　同じき七郎

　　とおとうみうまのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 とおとうみのしちろう
　遠江右馬助　　　　　　　　　　遠江七郎

　　するがのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えちごのしろう
　駿河四郎　　　　　　　　　　　越後四郎

　　するがのごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしのごろう
　駿河五郎　　　　　　　　　　　武藏五郎

　　とおとうみしゅりのすけさぶろう　　　　　　　　　　　　　　えちごのまたたろう
　遠江修理亮三郎　　　　　　　　越後又太郎

　　むさしのはちろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　 くろう
　武藏八郎　　　　　　　　　　　同じき九郎

　　しょうゆうさこんのたいふ　　　　　　　　　　　　　　　　　　もくごんのかみ
　少輔左近大夫　　　　　　　　　木工權頭

　　にったみかわのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　じょきょう
　新田參河前司　　　　　　　　　助　教　　参考助教は、律令下の大学寮の明経道の大学博士につぐ令外の官職。この時期は名誉職。

　　ちょっこう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おおくらしょうゆう
　直　講　　　　　　　　　　　　大藏少輔　参考直講は、律令下の大学寮の明経道の大学博士・助教を補佐する令外の官職。

　　しもうさぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 なかつかさごんのしょうゆう
　下総前司　　　　　　　　　　　中務權少輔

　　すおうしゅりのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 みのひょうえのたいふ
　周防修理亮　　　　　　　　　　美濃兵衛大夫

　　あきうこんのたいふ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ながいのほうがんだい
　安藝右近大夫　　　　　　　　　長井判官代

　　しょうゆうじろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なはじろう
　少輔二郎　　　　　　　　　　　那波二郎

　　あきかもんのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みまさかさこんのたいふ
　安藝掃部助　　　　　　　　　　美作左近大夫

　　のとうこんのくらんど　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひょうえくらんど
　能登右近藏人　　　　　　　　　兵衛藏人

　　このえくらんど　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおすみしゅりのすけ
　近衛藏人　　　　　　　　　　　大隅修理亮

　　かいきおおいのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あかつかくらんど
　皆吉大炊助　　　　　　　　　　赤塚藏人

　　おおすみおおいのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　そうみんぶのたいふ
　大隅大炊助　　　　　　　　　　宗民部大夫

　　おおすみくらんど　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　じんさぶろうさえもんのじょう
　大隅藏人　　　　　　　　　　　進三郎左衛門尉

　　びんごのやくしまる　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおたわさえもんのじょう
　備後藥師丸　　　　　　　　　　大多和左衛門尉

　　きいのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　かわごえのこじろう
　紀伊二郎左衛門尉　　　　　　　河越小二郎

　　いがのさえもんじろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおたのしろうさえもんのじょう
　伊賀左衛門二郎　　　　　　　　大田四郎左衛門尉

　　すおうのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 かじのろくろうさえもんのじょう
　周防三郎左衛門尉　　　　　　　加治六郎左衛門尉

　　ぶんごのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　ひごのしろうさえもんのじょう　　　〔　おおみ　〕
　豊後三郎左衛門尉　　　　　　　肥後四郎左衛門尉〔大見〕

　　かまたのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　いとうのじろうさえもんのじょう
　鎌田二郎左衛門尉　　　　　　　伊東二郎左衛門尉

　　ひごのしんさえもんのじょう　　〔　あまの　〕　　　　　　　　　ひらがさぶろうさえもんのじょう
　肥後新左衛門尉〔天野〕　　　　 平賀三郎左衛門尉

　　あべのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 やべのごろうさえもんのじょう
　阿部左衛門尉　　　　　　　　　野部五郎左衛門尉

　　おおたわのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　はぎわらうえもんのじょう
　大多和新左衛門尉　　　　　　　萩原右衛門尉

　　かまたのじろうひょうえのじょう　　　　　　　　　　　　　　　おきのしろうひょうえのじょう
　鎌田二郎兵衛尉　　　　　　　　隱岐四郎兵衛尉

　　みむらのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　 ちょうのうえもんのじょう
　三村左衛門尉　　　　　　　　　長右衛門尉

　　さつまのじゅうろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　 ろくろうひょうえのじょう
　薩摩十郎左衛門尉　　　　　　　六郎兵衛尉

　　だいがくのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おがわのさえもんのじょう
　大學允　　　　　　　　　　　　小河左衛門尉

　　すおうのろくろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 あだちのさぶろううえもんのじょう
　周防六郎左衛門尉　　　　　　　足立三郎右衛門尉

　　こうさいのまたたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あさみのさこんしょうげん
　香西又太郎　　　　　　　　　　阿佐美左近將監

　　ひらがのしろううえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　 げんたさえもんのじょう
　平賀四郎右衛門尉　　　　　　　源太左衛門尉

　　ひるかわのしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　かのうのはちろうさえもんのじょう
　蛭河四郎左衛門尉　　　　　　　狩野八郎左衛門尉

　　ちょうのうたさえもんさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　こいずみのしろうさえもんのじょう
　長雅樂左衛門三郎　　　　　　　小泉四郎左衛門尉

　　ふじたのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　さぶろうさえもんのじょう
　藤田二郎左衛門尉　　　　　　　三郎左衛門尉

　　いがのろくろうさえもんじろう　　　　　　　　　　　　　　　　つしまのさえもんじろう
　伊賀六郎左衛門二郎　　　　　　對馬左衛門二郎

　　おおすがのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 しきぶのはちろうさえもんさぶろう
　大須賀新左衛門尉　　　　　　　式部八郎左衛門三郎

　　おおいずみのくろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひごのさえもんじろう　　〔おおみ〕
　大泉九郎　　　　　　　　　　　肥後左衛門二郎〔大見〕

　　いなげのさこんしょうげん　　　　　　　　　　　　　　　　　かわわのさえもんしろう
　稻毛左近將監　　　　　　　　　河匂左衛門四郎

　　かのうのさえもんしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　ふせべのくないさえもんたろう
　狩野左衛門四郎　　　　　　　　布施部宮内左衛門太郎

　　かのうのさえもんろくろう
　狩野左衛門六郎

しょうぐんけなんめん　 しゅつご　　ちゅうなごんおんみす　あ　　　　おんひきでものつね　　ごと　　　　ぎょけん　むさしのぜんじともなお　　ごちょうど　えちごのかみさねとき
將軍家 南面へ出御。中納言 御簾を上ぐ。御引出物恒の如し。御劔は武藏前司朝直。御調度は越後守實時。

おんむかばき　あいだのじょうすけやすもり
 御行騰は 秋田城介泰盛。

　いちのおんうま　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　あいはらのうえもんのじょう
　一御馬　新相摸三郎時村　　　　粟飯原右衛門尉

　　にのおんうま　　さがみのさぶろうときすけ　　　　　　　 すわのしろうひょうえのじょう
　二御馬　相摸三郎時輔　　　　　諏方四郎兵衛尉

　さんのおんうま　　えちごのしろうあきとき　　　　　　　　　　あんどうくないさえもんのじょう
　三御馬　越後四郎顯時　　　　　安東宮内左衛門尉

　よんのおんうま　じょうのしろうさえもんのじょうときもり　　　おな　　　　ごろうさえもんのじょうしげかげ
　四御馬　城四郎左衛門尉時盛　　同じき五郎左衛門尉重景

　　ごのおんうま　　とおとうみのしちろうときもと　　　　　　　おおくらのじろうさえもんのじょう
　五御馬　遠江七郎時基　　　　　大倉二郎左衛門尉

ひつじのこく　しょうぐんけ　さがみぜんしつ　　てい　　みゆきはじ
 未尅。 將軍家、相摸禪室が亭へ御行始め。参考相摸禪室は、時頼。

ごしょ　おんかた
御所の御方

　　むさしのぜんじともなお　　　　　　　　　　　　　　　　　ぎょうぶしょうゆうのりとき
　武藏前司朝直　　　　　　　　　刑部少輔教時

　　いだんじょうしょうひつなりとき　　　　　　　　　　　　　　おわりさこんのたいふしょうげんきんとき
　彈正少弼業時　　　　　　　　　尾張左近大夫將監公時

　　とおとうみうまのすけきよとき　　　　　　　　　　　　　　　しんさがみのさぶろうときむら
　遠江右馬助�C時　　　　　　　　新相摸三郎時村

　　えちごのしろうあきとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのしちろうむねより
　越後四郎顯時　　　　　　　　　相摸七郎宗頼

　　あいだのじょうすけやすもり　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　ろくろうあきもり
　秋田城介泰盛　　　　　　　　　同じき六郎顯盛

　　いずみのぜんじゆきかた　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　じろうさえもんのじょうゆきあき
　和泉前司行方　　　　　　　　　同じき次郎左衛門尉行章

　　なかつかさごんのしょうゆうしげのり　　　　　　　　　　　 もくほんのかみちかいえ
　中務權少輔重教　　　　　　　　木工權頭親家

　　にったみかわのぜんじよりうじ　　　　　　　　　　　　　　　ささきいきぜんじやすつな
　新田參河前司頼氏　　　　　　　佐々木壹岐前司泰綱

　　ごとういきぜんじもとまさ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いがぜんじときいえ
　後藤壹岐前司基政　　　　　　　伊賀前司時家

　　ひゅうがぜんじすけやす　　　　　　　　　　　　　　　　　ひたちのじろうさえもんのじょうゆききよ
　日向前司祐泰　　　　　　　　　常陸次郎左衛門尉行�C

　　すおうのごろうさえもんのじょうただかげ　　　　　　　　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし
　周防五郎左衛門尉忠景　　　　　薩摩七郎左衛門尉祐能

　　しなののじろうさえもんのじょうとききよ　　　　　　　　　　むとうさえもんのじょうよりやす
　信濃二郎左衛門尉時�C　　　　　武藤左衛門尉頼泰

　　おのでらのしんさえもんのじょうゆきみち　　　　　　　　たけいしのしんさえもんのじょうながたね
　小野寺新左衛門尉行通　　　　　武石新左衛門尉長胤

　　かとうさえもんのじょうかげつね　　　　　　　　　　　　　　かずさのたろうさえもんのじょうながつね
　加藤左衛門尉景經　　　　　　　上総太郎左衛門尉長經

　　おきのしろうひょうのじょうゆきかど　　　　　　　　　　　　 かいのさぶろうさえもんのじょうためなり
　隱岐四郎兵衛尉行廉　　　　　　甲斐三郎左衛門尉爲成

　　かまたのじろうさえもんのじょうゆきとし
　鎌田二郎左衛門尉行俊

なかごしょ　　おんかた
中御所の御方

　　とおとうみのぜんじときなお　　　　　　　　　　　　　　　　 じぶごんのだいゆうよりうじ
　遠江前司時直　　　　　　　　　治部權大輔頼氏

　　むつさこんのたいふしょうげんよしまさ　　　　　　　　　　さがみのしちろうむねより
　陸奥左近大夫將監義政　　　　　民部權大輔時隆

　　さがみのさぶろうときすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　 とおとうみのしちろうときもと
　相摸三郎時輔　　　　　　　　　遠江七郎時基

　　むさしのごろうときただ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 くないごんのだいゆうときひで
　武藏五郎時忠　　　　　　　　　宮内權大輔時秀

　　むとうしょうきょうかげより　　　　　　　　　　　　　　　　　 つしまのぜんじうじのぶ
　武藤少卿景頼　　　　　　　　　對馬前司氏信

　　すおうのぜんじただつな　　　　　　　　　　　　　　　　　しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ
　周防前司忠綱　　　　　　　　　式部太郎左衛門尉光政

　　じょうのしろうさえもんのじょうときもり　　　　　　　　　　　おな　　　　ごろうさえもんのじょうしげかげ
　城四郎左衛門尉時盛　　　　　　同じき五郎左衛門尉重景

　　ちくぜんのさぶろうさえもんのじょうゆきざね　　　　　　 でわのしちろうさえもんのじょうゆきより
　筑前三郎左衛門尉行實　　　　　出羽七郎左衛門尉行頼

　　といのしろうさえもんのじょうさねつな　　　　　　　　　　むとううこんのしょうげんよりむら
　土肥四郎左衛門尉實綱　　　　　武藤右近將監頼村

　　じょうのしろうさえもんのじょうときもり　　　　　　　　　　　おおそねのたろうさえもんのじょうながより
　上総三郎右衛門尉義泰　　　　　大曽祢太郎左衛門尉長頼

　　かまたのさぶろうさえもんのじょうよしなが
　鎌田三郎左衛門尉義長

　おんひきでもの　　えき　　ひと　　ぎょけん　　じぶごんのだいゆうよりうじ
 御引出物 の役の人。御釼は治部權大輔頼氏

　　さきん　　さこんのたいふしょうげんよしまさ
　砂金は左近大夫將監義政

　　はね　　さこんのたいふしょうげんきんとき
　羽は左近大夫將監公時

　いちのおんうま　むさしのごろうときただ　　　　　　　　　　　おおせのさぶろうさえもんのじょうこれただ
　一御馬　武藏五郎時忠　　　　　大瀬三郎左衛門尉惟忠

　　にのおんうま　ひたちのさえもんのじょうゆききよ　　　　　いずみのじろうさえもんのじょうゆきあき
　二御馬　常陸左衛門尉行�C　　　和泉次郎左衛門尉行章

　さんのおんうま　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　おな　　じゅうろうさえもんのじょうすけひろ
　三御馬　薩摩七郎左衛門尉祐能　同じき十郎左衛門尉祐廣

かんごののち　　みやすんどころみゆきはじ　　〔おな　　てい〕
還御之後、御息所御行初め〔同じ亭〕。

現代語文応二年(1261)正月大一日癸亥。将軍への御馳走の振る舞い〔相州禅室時頼の負担〕。両国司相模守政村・武蔵守長時以下は布衣(狩衣の正装)を着て、幕府へ出仕です。まで東西の侍所に待機です。次にお出ましの時間だと告げたので、庭の東西に分かれて席(床几)に着きました。
西の座
　武蔵前司大仏流北条朝直　　　尾張前司名越流北条時章
　遠江前司大仏流北条時直　　　越後守金沢流北条実時
　刑部少輔名越流北条教時　　　治部権大助足利頼氏
　秋田城介安達泰盛　　　　　　壱岐前司佐々木泰綱
　和泉前司二階堂行方　　　　　那波刑部権少輔政茂
　縫殿頭中原師連　　　　　　　宮内権大夫長井時秀
　後藤壱岐前司基政　　　　　　対馬前司佐々木氏信
　伊賀前司時家　　　　　　　　日向前司伊東祐泰
　周防前司島津忠綱　　　　　　上総前司大曾祢長泰
　武藤少卿景頼　　　　　　　　加賀前司二階堂行頼
　甲斐守狩野為成　　　　　　　上野介結城広綱
　太田新民部大夫　　　　　　　伊豆太郎左衛門尉実保
　式部太郎左衛門尉伊賀光政　　佐藤民部大夫行幹
　長左衛門尉朝連　　　　　　　善五郎左衛門尉三善康家
　加地七郎右衛門尉佐々木氏綱　長内左衛門尉
　常陸次郎左衛門尉二階堂行清　城四郎左衛門尉安達時盛
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　　武藤右近将監兼頼
　筑前三郎左衛門尉二階堂行実　出羽七郎左衛門尉二階堂行頼
　城五郎重景　　　　　　　　　善六郎左衛門尉
　城六郎安達顕盛　　　　　　　和泉三郎左衛門尉二階堂行章
　城弥九郎安達長景　　　　　　城十郎時景
　上野太郎左衛門尉梶原景綱　　越中次郎左衛門尉(宇都宮)横田朝景
　伊勢三郎左衛門尉頼綱　　　　遠江十郎頼連
　佐々木壱岐三郎左衛門尉頼綱　土肥四郎左衛門尉実綱
　武藤二郎左衛門尉頼泰　　　　上野三郎左衛門尉重義
　上総太郎左衛門尉長経　　　　後藤二郎左衛門尉
　周防五郎左衛門尉島津忠景　　信濃二郎左衛門尉時清
　大曽祢太郎左衛門尉長泰　　　内藤肥後三郎左衛門尉太宰為成
　鎌田図書左衛門尉信俊　　　　小野寺新左衛門尉行通
　上総三郎右衛門尉足利満氏　　式部二郎左衛門尉伊賀光長
　式部左衛門三郎　　　　　　　備後太郎
　上総四郎　　　　　　　　　　武石新左衛門尉長胤
　山田彦次郎　　　　　　　　　矢部平次馬二郎
　上野六郎梶原　　　　　　　　善六郎左衛門二郎
　甲斐三郎左衛門尉為成　　　　隠岐四郎兵衛尉行廉(長)

東の座
　越後右馬助時親　　　　　　　越前前司長井時広
　陸奥左近大夫将監塩田義政　　尾張左近大夫将監名越公時
　弾正少弼業時　　　　　　　　新相模三郎時村
　武蔵左近大夫将監時仲　　　　民部権大輔時隆
　相模三郎時輔　　　　　　　　相模七郎宗頼
　遠江右馬之助清時　　　　　　遠江七郎時基
　駿河四郎兼時　　　　　　　　越後四郎顕時
　駿河五郎通時　　　　　　　　武蔵五郎大仏流北条時忠
　遠江修理亮三郎　　　　　　　越後又太郎
　武蔵八郎頼直　　　　　　　　武蔵九郎朝貞
　少輔左近大夫佐房　　　　　　木工権頭中原親家
　新田三河前司頼氏　　　　　　助教
　直講教隆　　　　　　　　　　大蔵少輔遠山景朝
　下総前司行経　　　　　　　　中務権少輔重教
　周防修理亮　　　　　　　　　美濃兵衛大夫
　安芸右近大夫親経　　　　　　長井判官代
　少輔二郎　　　　　　　　　　那波二郎
　安芸掃部助　　　　　　　　　美作左近大夫泰茂
　能登右近蔵人仲家　　　　　　兵衛蔵人美作家教
　近衛蔵人　　　　　　　　　　大隅修理亮島津久時
　皆吉大炊助文幸　　　　　　　赤塚蔵人資茂
　大隅大炊助　　　　　　　　　宗民部大夫
　大隅蔵人　　　　　　　　　　進三郎左衛門尉宗長
　備後薬師丸　　　　　　　　　大多和左衛門尉義清
　紀伊二郎左衛門尉為経　　　　河越小二郎
　伊賀左衛門二郎　　　　　　　大田四郎左衛門尉
　周防三郎左衛門尉島津忠行　　加治六郎左衛門尉
　豊後三郎左衛門尉忠直　　　　大見肥後四郎左衛門尉行定
　鎌田二郎左衛門尉行俊　　　　伊東二郎左衛門尉盛時
　天野肥後新左衛門尉景氏　　　平賀三郎左衛門尉惟時
　阿部左衛門尉　　　　　　　　野部五郎左衛門尉
　大多和新左衛門尉　　　　　　萩原右衛門尉定仲
　鎌田二郎兵衛尉　　　　　　　隠岐四郎左衛門尉行久
　三村左衛門尉時親　　　　　　長右衛門尉
　薩摩十郎左衛門尉　　　　　　六郎兵衛尉
　大学允　　　　　　　　　　　小川左衛門尉時仲
　周防六郎左衛門尉島津忠頼　　足立三郎右衛門尉元氏
　香西又太郎　　　　　　　　　阿佐美左近将監
　平賀四郎右衛門尉　　　　　　源太左衛門尉
　蛭河四郎左衛門尉　　　　  　狩野八郎左衛門尉
　長雅樂左衛門三郎政連　　　　小泉四郎左衛門尉頼行
　藤田二郎左衛門尉　　　　　　清三郎左衛門尉
　伊賀六郎左衛門二郎　　　　　　對馬左衛門二郎
　大須賀新左衛門尉朝氏　　　　　式部八郎左衛門三郎
　大泉九郎長氏　　　　　　　　　大見肥後左衛門二郎
　稲毛左近將監　　　　　　　　　河匂左衛門四郎
　狩野左衛門四郎景茂　　　　　　布施部宮内左衛門太郎
　狩野左衛門六郎

宗尊親王将軍家が南面へお出ましです。中納言が御簾を巻き上げました。将軍への引き出物はいつも通りです。刀は武蔵前司朝直。弓矢は越後守実時。乗馬袴は秋田城介安達泰盛。
　一の馬は、新相模三郎時村と粟飯原右衛門尉
　二の馬は、相模三郎時輔　と諏訪四郎兵衛尉
　三の馬は、越後四郎顕時　と安東宮内左衛門尉景光
　四の馬は、城四郎左衛門尉時盛と同城五郎左衛門尉重景
　五の馬は、遠江七郎時基　と大倉二郎左衛門尉
午後2時頃、宗尊親王将軍家は、相模禅室時頼の屋敷へお出かけ始め式です。
御所将軍のお供
　武蔵前司大仏流北条朝直　刑部少輔名越流北条教時
　弾正少弼業時　　　　　　尾張左近大夫将監名越公時
　遠江右馬之助清時　　　　新相模三郎時村
　越後四郎顕時　　　　　　相模七郎宗頼
　秋田城介安達泰盛　　　　同六郎安達顕盛
　和泉前司二階堂行方　　　同和泉次郎左衛門尉二階堂行章
　中務権少輔重教　　　　　木工権頭中原親家
　新田三河前司頼氏　　　　佐々木壱岐前司泰綱
　後藤壱岐前司基政　　　　伊賀前司時家
　日向前司伊東祐泰　　　　常陸次郎左衛門尉二階堂行清
　周防五郎左衛門尉島津忠景　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能
　信濃二郎左衛門尉時清　　武藤左衛門尉頼泰
　小野寺新左衛門尉行通　　武石左衛門尉長胤
　加藤左衛門尉景経　　　　上総太郎左衛門尉大曽祢長経
　隠岐四郎兵衛尉二階堂行廉(長)　甲斐三郎左衛門尉為成
　鎌田二郎左衛門尉行俊
中御所お妾さんのお供
　遠江前司大仏時直　　　　治部権大輔足利頼氏
　陸奥左近大夫将監塩田義政　民部権大輔佐助時隆
　相模三郎得宗時輔　　　　遠江七郎名越時基
　武蔵五郎大仏流北条時忠　宮内権大輔長井時秀
　武藤少卿景頼　　　　　　対馬前司佐々木氏信
　周防前司島津忠綱　　　　式部太郎左衛門尉伊賀光政
　城四郎左衛門尉安達時盛　同五郎左衛門尉安達重景
　筑前三郎左衛門尉二階堂行実　出羽七郎左衛門尉二階堂行頼
　土肥四郎左衛門尉実綱　　武藤右近将監頼村
　上総三郎右衛門尉大曽祢義泰　大曽根太郎左衛門尉長頼
　鎌田三郎左衛門尉義長
引き出物を差し出す役の人。刀は治部権大輔足利頼氏。砂金は陸奥左近大夫将監塩田義政。鷲の羽は尾張左近大夫将監名越公時。
　一の馬は、武蔵五郎大仏流北条時忠　　　と　大瀬三郎左衛門尉惟忠
　二の馬は、常陸次郎左衛門尉二階堂行清　と　和泉次郎左衛門尉二階堂行章
　三の馬は、薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　　と　同十郎左衛門尉伊東祐広
お帰りの後で、将軍の奥さん御息所のお出かけ始めです〔同じ時頼の屋敷〕。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　おうばん　〔おうしゅうぜんもん　さた　〕　　つちみかどちゅうなごんおんみす　　あ
文應二年(1261)正月大二日甲子。�ﾘ。垸飯〔奥州禪門沙汰〕。土御門中納言御簾を上ぐ。

　　ぎょけん　　　　ぎょうぶしょうゆうのりとき
　御釼は、刑部少輔教時

　　ごちょうど　　　　さこんのたいふしょうげんきんとき
　御調度は、左近大夫將監公時

　　おんむかばき　　だざいのごんのしょうにかげより
　御行騰は、大宰權少貳景頼

　いちのおんうま　さがみのさぶろうときすけ　　　　　　　　　 くどうのさぶろううえもんのじょうみつやす
　一御馬　相摸三郎時輔　　　　　　工藤三郎右衛門尉光泰

　　にのおんうま　むさしのごろうときただ　　　　　　　　　　　　つしまのじろうひょうえじょう
　二御馬　武藏五郎時忠　　　　　　對馬二郎兵衛尉〔本�@〕

　さんのおんうま　かじわらのたろうさえもんのじょうかげつな　　おな　　　ごろうかげかた
　三御馬　梶原太郎左衛門尉景綱　　同じき五郎景方

　よんのおんうま　すおうのごろうさえもんのじょうただかげ　　　おな　　　ろくろうさえもんのじょうただより
　四御馬　周防五郎左衛門尉忠景　　同じき六郎左衛門尉忠頼

　　ごのおんうま　いずものじろうさえもんのじょうときみつ　　　　おな　　　ろくろうよしやす
　五御馬　出雲次郎左衛門尉時光　　同じき六郎義泰

参考�@対馬の「本」は、元がこの人で誰が代りをしたか分からない。

現代語文応二年(1261)正月大二日甲子。晴れです。将軍への御馳走の振る舞い〔奥州禅門重時の負担〕。土御門中納言顕方が御簾を巻き上げました。刀の献上は、刑部少輔名越流北条教時。弓矢の献上は、尾張左近大夫将監名越公時。乗馬袴は、太宰権少弐武藤景頼。
　一の馬は、相模三郎得宗時輔　　　と　工藤三郎右衛門尉光泰
　二の馬は、武蔵五郎大仏流北条時忠　と　対馬二郎兵衛尉〔本〕
　三の馬は、梶原太郎左衛門尉景綱　　と　同五郎梶原景方
　四の馬は、周防五郎左衛門尉島津忠景と　同六郎左衛門尉島津忠頼
　五の馬は、出雲次郎左衛門尉時光　　と　同六郎義泰

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 くもり　おうばん　〔そうしゅう　　　おんさた　〕　　　おんみすやく　 こうもんこれ　 こう
文應二年(1261)正月大三日乙丑。陰。垸飯〔相州の御沙汰〕。御簾役、黄門之に候ず。

ぎょけん　えちごのかみさねとき　ごちょうど　さこんたいふしょうげんきんとき　おんむかばき　　いずみのぜんじゆきかた
御釼は越後守實時。御調度は左近大夫將監公時。御行騰は和泉前司行方。

　いちのおんうま　とおとうみのしちろうときもち　　　　　　　　 しきぶのじろうさえもんのじょうみつなが
　一御馬　遠江七郎時基　　　　　　式部二郎左衛門尉光長

　　にのおんうま　　えちごのしろうあきとき　　　　　　　　　　　かすやのさえもんのじょうさぶろうゆきむら
　二御馬　越後四郎顯時　　　　　　糟屋左衛門三郎行村

　さんのおんうま　でわのしちろうさえもんのじょうゆきより　　　おな　　　　はちろうさえもんのじょうゆきよ
　三御馬　出羽七郎左衛門尉行頼　　同じき八郎左衛門尉行世

　よんのおんうま　じょうのろくろうあきもり　　　　　　　　　　　　 おな　　　　くろうながかげ
　四御馬　城六郎顯盛　　　　　　　同じき九郎長景

　　ごのおんうま　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　　　 いがのうえもんさぶろうともふさ
　五御馬　新相摸三郎時村　　　　　伊賀右衛門三郎朝房

きた　　なぬかつるがおかはちまんぐうに　ぎょさんあるべ　　　　　ぐぶ　　そうにんずう　　れい　　まか　 ちゅう　もうせし　　べ　　　のむねおお　　くださる
來る七日　鶴岳八幡宮 于御參有可し。供奉の惣人數、例に任せ注し申令む可し之旨仰せ下被る。

ゆきかたぶぎょうたり
行方奉行爲。

現代語文応二年(1261)正月大三日乙丑。曇りです。将軍への御馳走の振る舞い〔相州政村の負担〕。御簾の巻き上げは、土御門中納言顕方がしました。刀の献上は、越後守金沢実時。弓矢の献上は、尾張左近大夫将監名越公時。乗馬袴は、和泉前司二階堂行方。
　一の馬は、遠江七郎名越時基　　　　　と　式部二郎左衛門尉伊賀光長
　二の馬は、越後四郎金沢顕時　　　　　と　糟谷左衛門三郎行村
　三の馬は、出羽七郎左衛門尉二階堂行頼と　同八郎左衛門尉二階堂行世
　四の馬は、城六郎安達顕盛　　　　　　と　同九郎長景
　五の馬は、新相模三郎時村　　　　　　と　伊賀右衛門三郎朝房
今度の七日は、鶴岡八幡宮にお詣りをするので、お供の名簿をいつも通りに書き出すように、仰せになられました。二階堂行方が担当です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 なのか　　 くよう　　　こと　　　ごてん　 にんずう　 もっ　うけたまわり　　めししん
文應二年(1261)正月大四日丙寅。七日の供養の事、御點�@の人數を以て　奉　を召進ず。

しか　　さいみょうじどのきんだち　　おんこと　　さんじょう　ごと　　のしだい　に　の　　らる　　べ　　　あ
而るに最明寺殿公達�Aの御事、散状の如き之次第于載せ被る可きこと有り�B。

いはゆる　さがみのたろう　　おな　　　　しろう　　おな　　　　さぶろう　　おな　　　　しちろうかく　　ごと　　　 これ　 ぜんしつないない　おぼ　　め　　ところなり
所謂、相摸太郎・同じき四郎・同じき三郎・同じき七郎此の如し�C。是、禪室内々に思し食す所也。

とうじ　　かきざま　　すこぶ　ぎょい　　たが　　　　うんぬん　　くどうのさぶろううえもんのじょうみつもと　そ　おもむき　え　　　　こと　　よしを　えつしゅう　　つ　　　うんぬん
當時の書樣、頗る御意に違うと云々。工藤三郎右衛門尉光泰 其の趣を 得て、事の由於越州に告ぐと云々。

えつしゅうほう　　　い　　　　　　このたび　さんじょう　　をい　 は　　ひとびとすで　　しん　たてまつ　をはんぬ　こ　　うえ　　いまさら かきあらため　あた　　ざるか
越州報じて云はく。今度の散状に於て者、人々既に進じ奉り 訖。　此の上、今更 書改に 能は不歟。

じき　うけたまわ　ぞん　　　　ののち　　こうご　　　てい　　あらた　べ　　　のよし　　うんぬん
直に承り　存ずる之後、向後の躰を改む可き之由と云々。

かく　　こよきょう　　かぎらず　　さんぬ　とし すなは　あんどうさえもんのじょうみつなり　つ　　　もう　　むね　 かく　 ごと　　　　うんぬん
此の事今日に不限。去る年 則ち 安東左衛門尉光成　告げ申す旨も此の如しと云々。

はなは　えつちゅう　しょぞん　あらざ　か
太だ 越州の 所存に非る歟。

むとうしょうきょう いちどうのあいだ　さんぬ　としふゆのころ　　ぜんしつ　　ごぜん　　をい　　　いささ　いとま　もう　　　　よっ　　　　とっぴ　　　　うんぬん
武藤少卿　一同之間、去る年冬之比、禪室の御前に於て、聊か暇を申すに依て、突鼻す�Dと云々。

およ　 たろうどの　あにのうえ　つかれるべ　　 よしこれ　 おお　 らる
凡そ太郎殿 兄之上に着被可きの由�E之を仰せ被る。

参考�@御點は、将軍が名簿に了解の点を付ける。
参考�A最明寺殿公達は、出家した時頼とその子供達。
参考�B散状の如き之次第于載せ被る可き有りは、回覧する名簿に載せたい事がある。
参考�C相摸太郎・同じき四郎・同じき三郎・同じき七郎此の如しは、太郎時宗(母は正妻季光女)・四郎宗政(母時宗に同じ)・三郎時輔(母は妾)・七郎宗頼(母は正妻重時女)の順に書けと云ってる。本当の生まれ順は�@時輔�A時宗�B宗政�C宗時�D政頼�E時厳�F宗頼。
参考�D突鼻は、叱られた。
参考�E凡そ太郎殿 兄之上に云々は、時頼は時宗を兄の時輔より上座にするよう言ってる。

現代語文応二年(1261)正月大四日丙寅。七日の八幡宮お参りについて、将軍がチェックした名簿に基づいて承知の返事を出させました。しかし、最明寺殿時頼は自分の子供達については、回覧する名簿に載せたい事があります。それは、相模太郎時宗・四郎宗政・三郎時輔・七郎宗頼の順の通りに書け。これは、禅室時頼が内々に望んでいるからです。今の書き順は全然意にそぐわないんだそうな。工藤三郎左衛門尉光泰がその趣旨を心得て、その内容を越州実時に伝えたそうな。
越州実時が報告するのには、「今回の名簿については、人々が既に見知って返答し終えました。それなので、今更掻きなおすわけにはいきません。よく承知いたしましたので、今後は直すようにします。」だとさ。
このような事は今日に限りません。去年にも、そう安東左衛門尉光成が命令を受け継いできたときにもこれと同様でしたとさ。全く越州実時の思うようにいきません。武藤少卿景頼も同様に思ったので、去年の十二月に禅室時頼の前で、不服なので辞退したいと云って叱られましたとさ。
ようは、太郎北条時宗を兄時輔の上座にするようにと、云っておられるのです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　しょうぐんけ　ごきとう　はじ　　　　いずみのぜんじゆきかた これ　　ぶぎょう
文應二年(1261)正月大五日丁夘。�ﾘ。將軍家御祈祷始め。和泉前司行方　之を奉行す。

また　　きた　ここのかおんまりはじ　あ　　　べ　　　のよし　　うんぬん
又、來る九日御鞠始め有る可き之由と云々。

しか　　　　かか　 いっぽんか　　　あいだ　 おお　くだされ　ため　きょうみょう　ちゅう　しん　べ　　のむね　 ゆきかたおお　を ひらおかさえもんのじょうさねとし　　つた
而るに懸り一本�@枯れるの間、仰せ下被ん爲、交名を 注し進ず可き之旨、行方仰せ於　平岡左衛門尉實俊に　傳う。

よっ　 これ　ちゅう　しん　　　そ　　なか　　ごてん　 くだれをはんぬ
仍て之を注し進ず。其の中に御點を下被訖。

　 ぎょうぶしょうゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えちぜんぜんじ
　刑部少輔　　　　　　　　　　 越前々司

　とおとうみのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしのごろう
　遠江守　　　　　　　　　　　 武藏五郎

　あいだのじょうすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　でわのたいふほうがん
　秋田城介　　　　　　　　　　 出羽大夫判官

　こ　ひとびと　　おお　　　　　　きた　ここのかおんまりはじ　　あ　　べ
此の人々に仰せて、來る九日御鞠始め有る可き。

かか　 いっぽん　　きじついぜん　　たず　　しん　　べ　　　のよし　　おお　 くださる　のおもむき　これ　　かきくだされ　えつしゅうほう　　　　うんぬん
懸り一本、期日以前に尋ね進ず可き之由、仰せ下被る之 趣、之を書下被、越州 奉ず�Aと云々。

参考�@懸り一本は、懸りの庭(蹴鞠用のグランド)の木。東北(艮)に桜、東南(巽)に柳、西南(坤)に楓、西北(乾)に松を植える。
参考�A越州奉ずは、将軍の命を受けて実時が出す。文章の終わりに「依仰執達如件　実時奉」と書かれる。

現代語文応二年(1261)正月大五日丁卯。晴れです。宗尊親王将軍家の初の御祈祷です。御所奉行の和泉前司二階堂行方がこれを担当します。また、来る九日には、蹴鞠始めをするようにとのことだそうな。しかし、蹴鞠用の庭の四方の飾り木の一本が枯れているので、取り替えるように命令するため、名簿を書いて出すように、和泉前司二階堂行方が小侍所の平岡左衛門尉実俊に伝えました。それで、これを書き出し進上しました。その中にチェックを入れてよこしました。
　刑部少輔名越流北条教時　越前前司長井時広
　遠江守北条時直　　　　　武蔵五郎時忠
　秋田城介安達泰盛　　　　出羽大夫判官二階堂行有
この人々に命じて、来る九日の蹴鞠始めをするようにとのこと。
枯れた木は、期日以前に探し求めて来るように、仰せになられた内容を、越州実時が命じられて書きましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　　ねうし　りょうこく　　らいめいさんど
文應二年(1261)正月大六日戊辰。霽。子丑の兩尅、雷鳴三度。

きょう　　おおたわさえもんのじょう　　もっ　　　　あす　ほい　　　ぐぶにん　　くわ　　べ　　　のよしおお　　いださる　　　　ゆきかたこれ　　ぶぎょう
今日、大多和左衛門尉を以て、明日布衣の供奉人に加う可き之由仰せ出被る。行方�@之を奉行す。

参考�@行方は、御所奉行の和泉前司二階堂行方。

現代語文応二年(1261)正月大六日戊辰。晴れました。午前零時と二時頃の時間に雷が三度鳴りました。今日、大多和左衛門尉義清を使って、明日布衣にお供に入るようにと仰せ出されました。御所奉行の和泉前司二階堂行方がこれを担当します。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　  はれ　 しょうぐんけ　つるがおかはちまんぐう　ぎょさん
文應二年(1261)正月大七日己巳。�ﾘ。將軍家、鶴岡八幡宮に御參。

 ぐぶにん
供奉人

　くげ
公卿

　つちみかどちゅうなごん　〔あきかたきょう〕　　　　　　　　　　　ろくじょうにい　〔あきうじきょう〕
　土御門中納言〔顯方卿〕　　　　　　六條二位〔顯氏卿〕

　ぼうもんさんみ　〔もとすけきょう〕
　坊門三位〔基輔卿〕

てんじょうびと
殿上人

　いちじょうちゅうじょうよしきよあそん　〔おんあおばいぜん〕　　れいぜいしょうしょうたかしげあそん
　一條中將能�C朝臣〔御襖陪膳�@〕　　　冷泉少將隆茂朝臣

　なかみかどしょうしょうむねよあそん　　〔おんくつやく〕　　　　にじょうしょうしょうまさありあそん
　中御門少將宗世朝臣〔御沓役〕　　　二條少將雅有朝臣

　なかみかどしんしょうしょうさねのぶあそん　　　　　　　　　さぬきのかみもろひらあそん　〔おんかさやく〕
　中御門新少將實信朝臣　　　　　　讃岐守師平朝臣〔御笠役〕

　ぼうじょうちゅうじょうきんあつあそん　　　　　　　　　　　　　からはししょうしょうともただ
　坊城中將公敦朝臣　　　　　　　　唐橋少將具忠

　いちじょうじじゅうきんふゆ
　一條侍從公冬

さきがけ
前駈

　なかつかさごんのしょうゆうしげのり　〔おんしじやく〕　　　　あきかもんのすけたいふちかさだ
　中務權少輔重教〔御榻�A役〕　　　　安藝掃部助大夫親定

　あかつかさこんくらんどすけしげ
　赤塚左近藏人資茂

　ほい
布衣

　むさしのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　ごろう
　武藏前司　　　　　　　　　　　　同じき五郎

　おわりのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　さこんのたいふしょうげん
　尾張前司　　　　　　　　　　　　同じき左近大夫將監

　とおとうみぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　おな　　　うまのすけ
　遠江前司　　　　　　　　　　　　同じき右馬助

　えちごのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　しろう
　越後守　　　　　　　　　　　　　同じき四郎

　さがみのたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  　 おな　　　さぶろう
　相摸太郎　　　　　　　　　　　　同じき三郎

　おな　　　しちろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぎょうぶしょうゆう
　同じき七郎　　　　　　　　　　　刑部少輔

　　じぶごんのだいゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だんじょうしょうひつ　〔ぎょけんやく〕
　治部權大輔　　　　　　　　　　　彈正少弼〔御釼役〕

　しんさがみのさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みんぶごんのだいゆう
　新相摸三郎　　　　　　　　　　　民部權大輔

　とおとうみのしちろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なはぎょうぶしょうゆう
　遠江七郎　　　　　　　　　　　　那波刑部少輔�B

　いずみのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くないごんのしょうゆう
　和泉前司　　　　　　　　　　　　宮内權大輔

　　ささきいきぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むとうしょうきょう
　佐々木壹岐前司　　　　　　　　　武藤少卿

　　ごとういきぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　じろうさえもんのじょう
　後藤壹岐前司　　　　　　　　　　同じき次郎左衛門尉

　　もくごんのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いがぜんじ
　木工權頭　　　　　　　　　　　　伊賀前司

　　かずさのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　さぶろうさえもんのじょう
　上総前司　　　　　　　　　　　　同じき三郎左衛門尉

　　ぬいどののとう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひゅうがぜんじ
　縫殿頭�C　　　　　　　　　　　　　日向前司

　　すおうぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おな　　　ろくろうさえもんのじょう
　周防前司　　　　　　　　　　　　同じき六郎左衛門尉

　　かいのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おおすみしゅりのすけ
　甲斐守　　　　　　　　　　　　　大隅修理亮

　　しきぶのたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　じょうのろくろう
　式部太郎左衛門尉　　　　　　　　城六郎

　　ひたちのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　しなののじろうさえもんのじょう
　常陸二郎左衛門尉　　　　　　　　信濃二郎左衛門尉

　　むとううこんしょうげん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おおたわのさえもんのじょう
　武藤右近將監　　　　　　　　　　大多和左衛門尉

　　さつまのしちろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 といのしろうさえもんのじょう　〔おんくつ〕
　薩摩七郎左衛門尉　　　　　　　　土肥四郎左衛門尉〔御沓〕

　　いずのたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　 でわのはちろうさえもんのじょう
　伊豆太郎左衛門尉　　　　　　　　出羽八郎左衛門尉

　　かまたのさぶろうさえもんのじょう　〔おんかさ〕　　　　　　　かまたのずしょさえもんのじょう
　鎌田二郎左衛門尉〔御笠〕　　　　 鎌田圖書左衛門尉

　　ぜんのごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　 しんさぶろうさえもんのじょう
　善五郎左衛門尉　　　　　　　　　進�D三郎左衛門尉

　　ひらがのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 おのでらのしんさえもんのじょう
　平賀三郎左衛門尉　　　　　　　　小野寺新左衛門尉

　　ちょうじうえもんのじょう
　長�E次右衛門尉

たいけん
帶釼

　　でわのしちろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　 いずみのさぶろうさえもんのじょう
　出羽七郎左衛門尉　　　　　　　　和泉三郎左衛門尉

　　むとうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 じょうのごろうさえもんのじょう
　武藤左衛門尉　　　　　　　　　　城五郎左衛門尉

　　すおうのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 かとうさえもんのじょう
　周防五郎左衛門尉　　　　　　　　加藤左衛門尉

　　かずさのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　しろう
　上総二郎左衛門尉　　　　　　　　同じき四郎

　　かまたのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 しきぶのじろうさえもんのじょう
　鎌田三郎左衛門尉　　　　　　　　式部二郎左衛門尉

　　おきのしろうひょうえのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　 たけいしのしんさえもんのじょう
　隱岐四郎兵衛尉　　　　　　　　　武石新左衛門尉

　　おおそねたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　 さつまのじゅうろうさえもんのじょう
　大曽祢太郎左衛門尉　　　　　　　薩摩十郎左衛門尉

　　ひごのしろうさえもんのじょう
　肥後四郎左衛門尉

参考�@御襖陪膳は、将軍がふすまの向うで飯を食べるのを手伝う。
参考�A榻は、牛車を前へ降りる時、牛を放して長柄を乗せる台。これに座って沓を履く。
参考�B那波は、大江広元の子孫。
参考�C縫殿頭は、「ぬいどののとう」と読み「蔵人」も「かみ」と読まず「とう」と読む。
参考�D進は、進士で元は京都の大学を出た者を指すが、この時点では大学は無いので、先祖に誰か居てそれからの読みだと思われる。
参考�E長は、長谷部。

現代語文応二年(1261)正月大七日己巳。晴れです。宗尊親王将軍家は鶴岡八幡宮に初詣です。お供の人は、
公卿が　　土御門中納言顕方さん　　六条二位顕氏さん　坊門三位基輔さん
殿上人が　一条中将能清さん〔将軍がふすまの向うで飯を食べるのを手伝う役。〕　冷泉少将雅有さん　
　　　　　中御門少将宗世さん〔将軍の沓持ち〕　二条少将雅有さん
　　　　　中御門新少将実信さん　　　　　　　　讃岐守師平さん〔将軍に差しかける日笠を持つ〕
　　　　　坊城中将公敦さん　　　　　　　　　　唐橋少将具忠
　　　　　一条侍従公冬
先払いの連中
　　　　　中務権少輔重教〔牛車の踏み台持ち〕　安芸掃部助大夫規定
　　　　　赤塚左近蔵人資茂
布衣〔狩衣の正装〕
　武蔵前司大仏流北条朝直　　　同五郎時忠
　尾張前司名越流北条時章　　　同左近大夫将監公時
　遠江前司大仏流北条時直　　　同右馬助清時
　越後守金沢流北条実時　　　　同四郎時方
　相模太郎北条時宗　　　　　　同三郎時輔
　同七郎宗頼　　　　　　　　　刑部少輔教時
　治部権大輔頼氏　　　　　　　弾正少弼業時〔刀持ち〕
　新相模三郎時村　　　　　　　民部権大輔時隆
　遠江七郎時基　　　　　　　　那波刑部少輔政茂
　和泉前司二階堂行方　　　　　宮内権大輔時秀
　佐々木壱岐前司泰綱　　　　　武藤少卿景頼
　後藤壱岐前司基政　　　　　　同次郎左衛門尉
　木工権頭中原親家　　　　　　伊賀前司小田時家
　上総前司大曽祢長泰　　　　　同三郎大曽祢義泰
　縫殿頭中原師連　　　　　　　日向前司伊東祐泰
　周防前司島津忠綱　　　　　　同周防六郎左衛門尉島津忠頼
　甲斐守狩野為成　　　　　　　大隅修理亮島津久時
　式部太郎左衛門尉伊賀光政　　城六郎安達顕盛
　常陸二郎左衛門尉二階堂行雄　信濃二郎左衛門尉二階堂時清
　武藤右近将監頼村　　　　　　大多和左衛門尉義清
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　　土肥四郎左衛門尉実綱〔沓持ち〕
　伊豆太郎左衛門尉実保　　　　出羽八郎左衛門尉
　鎌田二郎左衛門尉行俊〔笠持ち〕　鎌田図書左衛門尉信俊
　善五郎左衛門尉三善康家　　　進三郎左衛門尉宗長
　平賀三郎左衛門尉惟時　　　　小野寺新左衛門尉行通
　長次右衛門尉
太刀を佩いている人
　出羽七郎左衛門尉二階堂行頼　和泉三郎左衛門尉二階堂行章
　武藤左衛門尉頼泰　　　　　　城五郎左衛門尉安達重景
　周防五郎左衛門尉島津忠景　　加藤左衛門尉景経
　上総二郎左衛門尉　　　　　　同上総四郎
　鎌田三郎左衛門尉義長　　　　式部二郎左衛門尉伊賀光長
　隠岐四郎兵衛尉二階堂行廉　　武石新左衛門尉長胤
　大曽祢太郎左衛門尉長泰　　　薩摩十郎左衛門尉
　肥後四郎左衛門尉大見行定

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　  まえはま　をい　おんまとはじめ　いて のこころ あ　　　　さがみのたろうどの かんりんせし　 たま
文應二年(1261)正月大九日辛未。前濱�@に於て御的始の射手之試み�A有り。相摸太郎殿 監臨令め給ふ�B。

くどうのさぶろうさえもんのじょうみつやす　おんとも　そうら　これ　 ぶぎょう　　　　こ　　　ほか　　なんぶのじろう　おがさわらのひこじろうらおんともたり
工藤三郎左衛門尉光泰�C 御共に候ひ之を奉行す。此の外、南部二郎・小笠原彦二郎等御共爲。

えちごのかみさねときこしょう　　　しそくしろうぬし　　ひらおかさえもんのじょうさねとし　　あいぐ　　ゆきむか　　　　おな　　　　ぶぎょう　　　うんぬん
越後守實時故障し�D、子息四郎主�E、平岡左衛門尉實俊を相具し行向ひて同じく奉行すと云々。

　いて　じゅうににん　　ひとごど　これ　　い
射手は十二人、一五度�F之を射る。

いちばん　にのみやのいやじろう
一番　二宮弥二郎

　　　　　　　よこちのさえもんじろう
　　　横地左衛門二郎

　にばん　くわばらのへいない
二番　桑原平内

　　　　　　すきのひょうえしろう
　　　周枳兵衛四郎

さんばん　しぶあのしんさえもんのじょう
三番　澁谷新左衛門尉

　　　　　　もちづきのよいち
　　　望月余一

よんばん　よこみぞのいやしち
四番　横溝弥七

　　　　　　ひらしまのいやごろう  
　　　平嶋弥五郎

　ごばん　ほんまのいやしろうさえもんのじょう
五番　本間弥四郎左衛門尉

　　　　　　こじまのまたじろう
　　　小嶋又次郎

ろくばん　ひらいのまたじろう
六番　平井又二郎

　　　　　　こそのえおくろう  
　　　小曽六郎

いをは　　　ののち　　さだ　　おお　　られ　　い　　　　　　　このたびつと　　せし　　にんずういくならざるのうえ　　おのおの　よろ　　　みなまい　　せし　　てへ
射訖る之後、定め仰せ被て云はく。今度勤め令む人數幾不之上は、　各　宜しく皆參り令め者り。

参考�@前濱は、以前の鎌倉市史(昭和30年代)に高柳光尊が書いた時は「前浜」を八幡宮の前の浜と称していたが、権五郎神社の前の浜と解釈され、由比ガ浜側だけである。
参考�A試みは、テスト。
参考�B相摸太郎殿監臨は、北条時宗が小侍所所司として監督。
参考�C工藤光泰は、得宗被官。
参考�D實時故障しは、別当の実時が北条時宗を目立たせるためにわざと欠席。
参考�E子息四郎主は、金沢流北条顕時。
参考�F一五度は、四十九巻正元二年(1260)正月十二日・十四日の記事により、一五度は、二本づつ五度で、二五度は二本づつ五度を二回らしい。

現代語文応二年(1261)正月大九日辛未。鎌倉西側の浜の由比ガ浜で、正月の的始めの射手の試し打ちがありました。相模太郎北条時宗が小侍所所司として観察をしました。得宗被官の工藤三郎左衛門尉光泰がお供をして指揮担当しました。この他に、南部二郎実光と小笠原彦二郎政氏がお供です。越後守実時は具合が悪いと云って、息子の四郎時方が平岡左衛門尉実俊をお供にして立ち会って同様に指揮担当しましたとさ。
射手は12人で、二本を五度射ました。
　一番　二宮弥二郎時光
　　　　横地左衛門二郎長重
　二番　桑原平内盛時
　　　　周枳兵衛四郎頼泰
　三番　渋谷新左衛門尉朝重
　　　　望月余一師重
　四番　横溝弥七忠景
　　　　平島弥五郎助経
　五番　本間弥四郎左衛門尉忠時
　　　　小島又次郎家範
　六番　平井又二郎有家
　　　　小曽六郎隆俊
試射が終わって、決め事を仰せになられました。今回参加してくれた人は、いくらもおりませんので、それぞれ宜しく皆さんが参加してください。」と云いました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　はれ　　さくじつ　　　いて　のうち　　くわばらへいない　よこみぞいやしちら　さわ　　　　もう　　のあいだ　　きょよう　あ
文應二年(1261)正月大十日壬申。�ﾘ。昨日の射手之中、桑原平内・横溝弥七等障りを申す之間、許容有り。

　こ　　ほか　　いて　　もっ　　　ごばんたるべ　　　よし　　うんぬん
此の外の射手を以て、五番爲可きの由と云々。」

きょう　　　ごしょ　　おんまりはじめなり　　ていい　さんにんにんずう　　つら
今日、御所の御鞠始也。廷尉三人人數に列なる。

いはゆる　　でわのたいふほうがんいくあり　〔げぐく　　〕　　　たいふほうがんひろつな〔しょうくく　　〕　　たいふほうがんいえうじ　らなり
所謂、出羽大夫判官行有〔下括り〕。大夫判官廣綱〔上括り〕。大夫判官家氏等也。

ここ　ぎょうぶきょう　かたぶ　もう　　　　い　　　　　しょうくく　　　かいこう　のれい　あ　　　　いへど　　きちじ　あらず
爰に刑部卿 傾け申して云はく。上括りは邂逅之例有ると雖も吉事に非。

もっと　しんしゃく　あ　　べ　　　　うんぬん　　しか　　　　にじょうしょうほうまさあり　もう　　　い
尤も斟酌有る可きと云々。而るに二條少將雅有　申して云はく。

じょうげんにねんじゅうにがつふつか　まさつねきょう　き　　　ごと　　は　　よりときしらあお　はかま　しょうくく　　おそ　　　げびいし　　しょうくく　　　　こと　　つね　　ぎ　　あらず
承元二年十二月二日　雅經卿が記の如き者、頼時白襖の袴に上括り。凡そ檢非違使の上括りの事は常の儀に非。

けまり　のときはばか　な　　か　　ごしらかわいん　おんとき　　つなより　ともやす　しょうくく　　　とういん　　おんとき　　　いちろうほうがんしげすけおな　　　　またこれ　　あ
蹴鞠之時憚り無き歟。後白河院の御時、綱頼・知康は上括り。當院の御時は、一臈判官重輔同じく又之を上ぐ。

しからずんば　なにごと　　あ　　　　や　　うんぬん
　然者　何事や有らん哉と云々。

　　これすなは　でわは　なんばのおしえ　　つ　　　こうづけ　しかがは　にじょうのせつ　したが
是則ち出羽者難波之訓に就き、上野・足利者、二條之説に随う。

ふたり　　ちょうじゃ　　こんげん　いちりゅうの　くでん　　う　　　いへど　　　しようりょうよう　の　こじつ　　かん　　いだ　　ものか　
二人の長者は、根元は一流之口傳を受くと雖も、枝葉兩樣之故實を勘じ出す者歟。

　そ　　じゃせい　　ひとこれ　　べん　　がた　　　　うんぬん
其の邪正は人之を弁じ難しと云々。

現代語文応二年(1261)正月大十日壬申。晴れです。昨日の射手の内、桑原平内盛時と横溝弥七忠景とが、支障を云いだしたので許可されました。これ以外の射手が出演して5番にするとの事です。」
今日は、御所での蹴鞠始めです。検非違使の三人がメンバーに入りました。それは、出羽大夫判官二階堂行有〔袴は足首括り〕。大夫判官結城広綱〔袴は膝下括り〕。大夫判官足利家氏です。そしたら、刑部卿難波流宗教がいちゃもんを着けて云いました。「膝下括りはたまにはあるとは言っても縁起の良い事には使いません。ちゃんと考えるべきです。」しかし、二条少将飛鳥井流雅有は云いました。「承元二年(1208)十二月二日、雅経さんの蹴鞠略記での書きようには、頼時は白の狩衣に膝下括りです。だいたい檢非違使の膝下括りは普段の事ではありません。蹴鞠の時は問題ないですねー。後白河院の時代に、綱頼や鼓判官知康は膝下括りでした。今の後深草院の時は、六位の蔵人判官重輔が同様に膝下括りでした。そういう訳で、なんという事はありません。」だとさ。
こレを聞いてすぐに出羽大夫判官二階堂行有は難波流の教えを守り、上野大夫判官結城広綱と大夫判官足利家氏は、飛鳥井流のそれぞれの説に合せました。
二人の流派は、元は一つの流派を受け継いできましたが、子葉が増えると新しい理屈を云いだすのなんだろうか。その正負は論じようがないとのことです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　おんまとはじめ　　いて　じゅうにん　　ふたごど　これ　　い
文應二年(1261)正月大十四日丙子。霽。御的始。射手十人。二五度�@之を射る。

きょう　　えちごのかみせっしせず　　さがみたろうどのいっしょ　　これ　　ぶぎょうせし　　たま　　　　うんぬん
今日、越後守出仕不�A。相摸太郎殿一所に之を奉行令め給ふと云々。

いちばん　にのみやのいやじろうときみつ　　　　　　　　よこちのさえもんじろうながしげ
一番　二宮弥次郎時光　　　　　横地左衛門次郎長重

　にばん　ほんまのいやしろうさえもんのじょうただとき　こじまのいやじろういえのり
二番　本間弥四郎左衛門尉忠時　小嶋弥次郎家範

さんばん　もちづきのよいちもろしげ　　　　　　　　　　　　すきのひょうえしろうよりはる
三番　望月余一師重　　　　　　周枳兵衛四郎頼泰

よんばん　ひらいのまたじろうありいえ　　　　　　　　　　　こそのろうろうたかとし
四番　平井又次郎有家　　　　　小曾六郎隆俊

　ごばん　しぶやのしんさえもんのじょうともしげ　　　　　　ひらしまのいやごろうすけつね
五番　澁谷新左衛門尉朝重　　　平嶋弥五郎助經

参考�@二五度は、二本づつ五度を二回。
参考�A越後守は、実時欠席し、相摸太郎北条時宗の手柄とした。

現代語文応二年(1261)正月大十四日丙子。晴れました。的始めです。射手は十人で、二本づつ五度を二回射ました。今日は、越後守実時は出仕しないので、相模太郎北条時宗さんがすべてを指揮担当しましたとさ。
　一番　二宮弥二郎時光　　　　　横地左衛門二郎長重
　二番　本間弥四郎左衛門尉忠時　小島又次郎家範
　三番　望月余一師重　　　　　　周枳兵衛四郎頼泰
　四番　平井又二郎有家　　　　　小曽六郎隆俊
　五番　渋谷新左衛門尉朝重　　　平島弥五郎助経

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 らいげつなのか　みやすんどころ　つるがおかはちまんぐう　ぎょさん　あ　　べ　　　　よっ　　　　　ぐぶ　　にんずう　ちゅう　　しんらんすべ
文應二年(1261)正月大廿五日丁亥。來月七日　御息所�@鶴岡八幡宮へ御參有る可きに依て、供奉の人數を注し進覽可し。

ただ　　いなかびと　ごと　　　　をい　　は　　　か　　　くわ　　べからず　のよし　こさむらいどころ　おお　　らる　　　　ゆきかたこれ　　つた　　　　うんぬん
但し田舎人に如きに於て者、書き加う不可之由、小侍所に仰せ被る。行方之を傳う�Aと云々。

すなは　これ　ちゅう　しんじょうさる　　　　うんぬん
則ち之を注し進上被ると云々。

参考�@御息所(みやすんどころ)は、将軍が天皇の子なので、その奥さんをそう呼ぶ。
参考�A行方之を傳うは、将軍が行方に言いつけ、行方が小侍所へ伝えた。

現代語文応二年(1261)正月大二十五日丁亥。来月の七日に、将軍の奥さん御息所が鶴岡八幡宮へ初詣をするので、お供の名簿を書き出すようにとのこと。ただし、地方の人については、書き加えて臥いけないと、小侍所へ和泉前司二階堂行方が伝えました。すぐにこれを書き出して届けますとのこと。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　らいげつ　のしょ　　ごしょうじん　はじ　　らる　　べ
文應二年(1261)正月大廿六日戊子。�ﾘ。來月二所の御精進を始め被る可し。

よっ　　さんろうのにんずう　ちゅうせし　　しんらんすべ　　のよし　　おお　　いださる　　　　うんぬん　　かつう　こ　　しゅう　みやすんどころ　ごさんぐう　　　ぐぶ　　かね　　べ
仍て參籠之人數を注令め進覽可し之由、仰せ出被ると云々。且は此の衆 御息所 御參宮の供奉を兼る可し。」

きょう　　　わかのおんえ　はじ　　　　だい　　　　とうし　　かみやがわにい　　〔あきうじ　　のうし〕　　　　こうじ　　なかみかどじゅじゅうむねよあそん　〔　ほい　〕　なり
今日、和歌御會始め。題は�@。讀師�Aは紙屋河二位〔顯氏。直衣〕。講師は中御門侍從宗世朝臣〔布衣〕也。

うだいべんにゅうどうしんかん　〔きゅうたい〕　　　そうしゅう　ぶしゅう　　えちぜんぜんじときひろ　さこんのたいふしょうげんよしまさ　　いきぜんじもとまさ　　かもんのすけのりもと
右大弁入道眞觀〔裘袋�B〕・相州・武州・越前々司時弘・左近大夫將監義政・壹岐前司基政・掃部助範元・

かまたのじろうさえもんのじょうゆきとし　〔いじょう　ほい　〕　ら　こ　　　せき　　かま
鎌田次郎左衛門尉行俊〔已上布衣〕等此の席に搆う。

参考�@題は、下に後で書こうと明けておいたのがあったと思われる。
参考�A読師(とうし)は、元は「どくし」か「とくし」から訛ったと思われる。
参考�B裘袋は、法王、法親王、門跡など高位の僧の用いる「法衣（ほうえ）」のこと。

現代語文応二年(1261)正月大二十六日戊子。晴れです。来月、箱根・走湯山の二所権現詣での精進潔斎を始めました。それで、一緒にお詣りに行く名簿を書き出して御覧に入れるようにと云いだしましたとさ。そのメンバーは将軍奥方の鶴岡八幡宮参拝のお供も兼ねるようにと。」
今日、和歌の歌始めをしました。題は？読み手は紙屋河二位〔顕氏で直衣〕。審判は中御門侍従宗世さん〔狩衣〕です。右大弁入道真観〔高位の法衣〕・相州政村・武州朝直・越前前司時弘・左近大夫将監塩田義政・壱岐前司後藤基政・掃部助押垂範元・鎌田次郎左衛門尉行俊〔以上は狩衣〕らがこの席にまざりました。

二月へ