吾妻鏡入門第十七巻

正治三年(1201)辛酉正月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えまのしろうぬし　　　 さきんご　　　おんし　　な　　　　つるがおかぐう　ほうへい　たま　　　　じんめ さんびき　たてまつらる
正治三年(1201)正月大四日乙卯。�ﾘ。江馬四郎主、左金吾が御使と爲し、鶴岳宮へ奉幣し給ひ、神馬三疋を奉被る。

現代語正治三年(1201)正月大四日乙卯。晴れです。江間四郎主北条義時様は、左衛門督頼家様の名代として、鶴岡八幡宮へ幣帛を捧げ、馬を三頭奉納しました。

説明義時はこの時点では、時政の嫡男としてではなく、北条の沼津市側の江間へ分家して江間と名乗っている。時政の嫡男としては、牧の方が生んだ政範と思われる。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かいせい　おんまとはじめなり　おうばんいぜん　　かく　　　ぎ　あ
正治三年(1201)正月大十二日癸亥。快晴。 御的始也。 椀飯以前に此の儀有り。

　いて　　 じうにん　　ゆんば　　　さゆうに　あいわか　 しきがわ　そうら　　　きんごしゅつご　　うこんたいふしょうげんちかひろ おんみす　あ
射手は十人を弓場の左右于相分ち敷皮に候う。金吾出御。右近大夫將監親廣�@御簾を上ぐ。

　　いて
　射手

いちばん　はんがやつのしろうしげとも　　　おざわのじろうしげまさ
一番　榛谷四郎重朝　　　小澤次郎重政�A

にばん　　うんののこたろうゆきうじ　　　　　　ささきのこさぶろうもりすえ
二番　海野小太郎幸氏　　佐々木小三郎盛季

さんばん　もちづきのさぶろうしげたか　　　 なかののごろうよしなり
三番　望月三郎重隆�B　　　中野五郎能成�C

よんばん　しぶやのじろうたかしげ　　　　　 くどうのこじろうゆきみつ
四番　澁谷次郎高重　　　工藤小次郎行光�D

ごばん　　　わだのへいたたねなが　　　　　おな　　　さぶろうとももり
五番　和田平太胤長　　　同じき三郎朝盛

参考�@右近大夫將監親廣は、大江広元の息子で源通親の養子になっているので、源親廣となる。
参考�A小澤次郎重政は、稲毛重成の息子。
参考�B望月三郎重隆は、諏訪一族。
参考�C中野五郎能成は、北信濃中野郷で現長野県中野市中野。
参考�D工藤小次郎行光は、義時の被官となり、津軽の代官になる。

現代語正治三年(1201)正月大十二日癸亥。快晴です。正月初めて弓を射る的始め式です。例年と違って御家人が将軍に御馳走を振る舞う椀飯より前に有りました。射手は十人で弓場の左右に分かれて敷き皮に控えました。左衛門督頼家様のお出ましです。源右近將監親広が御簾をあげました。
　射手は、
一番が榛谷四郎重朝　　小沢次郎重政。
二番が海野小太郎幸氏　佐々木小三郎盛季。
三番が望月三郎重隆　　中野五郎能成。
四番が渋谷次郎高重　　工藤小次郎行光。
五番が和田平太胤長　　同じ和田三郎朝盛。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれかぜしずか　ごしょ　　しんぎょうえ　どうし　　そんぎょうあじゃり
正治三年(1201)正月大十五日丙寅。天晴風静。御所の心經會�@、導師は、尊暁阿闍梨。

　さきんご　　 しゅつごれい　 ごと　　　　ことお　　　　　　　どうし　　おんうまおんころもら　　たま
左金吾の出御例の如し。事訖えて、導師は御馬御衣等を給はる。

みなもとうこんしょうげんちかひろ　えのさこんしょうげんよしひろら　おんふせ　　と　　　　　うんぬん
 源右近將監親廣、　江左近將監能廣等御布施を取ると云々。

参考�@心經會は、般若心経を唱える法要。

現代語正治三年(1201)正月大十五日丙寅。空は晴れて風も静かです。今日は御所で般若心経を称える仏教行事です。指導僧は尊暁阿闍梨。左衛門督頼家様のお出ましは何時もの通りです。行事が終えて、お布施を与えられました。指導僧には馬と着物を与えました。源右近将監親広と大江左近将監能広が布施を手渡しましたとさ。

説明源右近將監親廣と江左近將監能廣は、どちらも広元の子。

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