吾妻鏡入門第十八巻

元久元年甲子(1204)三月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　きょうと　　ししゃまい　　　　さんぬ　つきはつか　　けんにんよねん　 あらた　げんきゅうがんねん　な
元久元年(1204)三月大一日甲子。�ﾘ。京都の使者參る。去る月廿日。建仁四年を改め 元久元年 と爲す。

また　　おな　　 にじうごにち　　じょうこうてんのうじ　　ぎょうこう　　　　これ　　こんどうしゅうり　　くよう　　　うんぬん
又、同じき廿五日、上皇天王寺へ御幸す。是、金堂修理の供養と云々。

現代語元久元年(1204)三月大一日甲子。晴れです。先月の二十日に建仁四年を元久元年に改元しました。又、同じ二十五日に後鳥羽上皇は天王寺へ行幸されました。これは金堂修理の開眼供養に出席だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　つるがおかぐう しんじ　　ほうえ れい　　ごと　　　　するがのかみすえとき ほうへい　　おんし　　な
元久元年(1204)三月大三日丙寅。霽。 鶴岳宮 神事・法會例の如し。 駿河守季時 奉幣の御使と爲す。

現代語元久元年(1204)三月大三日丙寅。晴れました。鶴岡八幡宮の上巳の節句の神事と法要は何時もの通りです。駿河守中原季時が、幣を捧げる代参です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　むさしのかみともまさ　ひきゃく とうちゃく　　　もう　　　　い
元久元年(1204)三月大九日壬申。�ﾘ。武藏守朝雅が飛脚 到着す。申して云はく。

さんぬ　がっぴ　 うたのすけたいらのこれもと　　しそんら　いがのくに　　た　　　　　ちうぐうおさおな　 これみつ しそくら いせのくに　　た　　　　　おのおの　はんぎゃく　　　うんぬん
去る月日、 雅樂助平惟基 が子孫等伊賀國で起つ。中宮長同じ度光子息等伊勢國に起つ。　各　叛逆すと云々。

か　　りょうごく　しゅごにん　やまのうちしゅどうぎょうぶのじょうつねとし　しさい　　あいたず　　　　のところ　　　そう　な　　　かっせん　くはだ
彼の兩國 守護人　 山内首藤刑部丞經俊　 子細を相尋ねる之處、左右無く合戰を企つ。

つねとし むぜい　　よっ　　とうぼう　　　　のかん　　きょうとら　 にかこく　　　りょりょう　　　 すずかのせき　　はちみねさん　ら　　どうろ　　かこ
經俊無勢に依て逃亡する之間、凶徒等二ケ國を虜領し、鈴鹿關、八峯山�@等の道路を固む。

よっ　　じょうらくのひと な　　　　うんぬん
仍て上洛之人無しと云々。

参考�@八峯山は、八峯街道と呼ばれ、現在の三重県四日市市富田町から大谷知町、平津町、三重郡菰野町、八風山、永源寺高野町、八日市市、近江八幡市と通じる。これによって、伊勢から近江への鈴鹿の関を通る東海道と間道の八峯街道を押さえたので、伊賀越えが出来ない。

現代語元久元年(1204)三月大九日壬申。晴れです。京都の平賀武蔵守朝雅の伝令が着いて、報告するのには、「先だっての事ですが、雅楽助平惟基の子孫達が伊賀の国で蜂起しました。中宮長の同じ平度光のせがれたちも伊勢の国で蜂起しました。それぞれ、鎌倉への反逆だそうです。この二つの国の守護人をしている山内首藤刑部丞三郎経俊が、事情を聴こうとしたら、有無を言わせず戦い仕掛けてきました。山内経俊は、軍勢が少ないので逃げ出してしまったので、叛逆の連中は東海道の鈴鹿の関と、伊賀越えの八峰山を封鎖してしまったので、京都へ行けなくなってしまいました。」だとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　きょうと　　ひきゃく　きらく
元久元年(1204)三月大十日癸酉。霽。京都の飛脚歸洛す。

むほんにん　　こと　　か　　　くに　　はっこう　　　　きゅうだんせし　べ　　 のよし　　ともまさ　　おお　　らる　　　　うんぬん
謀叛人の事、彼の國へ發向し、糺彈令め可し之由、朝雅に仰せ被ると云々。

現代語元久元年(1204)三月大十日癸酉。晴れました。京都からの伝令が帰りました。謀反人については、その国へ攻め込み調べるように、平賀朝雅に命じましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ばくふ　　をい　　　　てんだい しかん　　だんぎ 　　はじ　　らる
元久元年(1204)三月大十五日戊寅。幕府に於て、天台止觀�@の談議を始め被る。

あまみだいどころ ごちょうもん　　な　　　　　しょうぐん　おんかたとぎょ　　　 うんぬん
尼御臺所 御聽聞を爲す。將軍の御方渡御すと云々。

参考�@天台止観は、摩訶止観の異称。摩訶止観（まかしかん）は、仏教の論書の1つで、止観（禅定の1種）についての解説書。10巻。594年に中国荊州（現在の湖北省）玉泉寺で天台宗の開祖智��によって講義され、弟子の章安灌頂によってまとめられた。ウィキペディアから

現代語元久元年(1204)三月大十五日戊寅。幕府の御所で、天台宗の禅定についての講義を始めました。尼御台所政子様がお聞きになります。将軍実朝様もご出席になりましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちんぜい　　のうぐ　　 こと　　かもんのかみにゅうどうじゃくにん かんじょうせし　べ　　のよし　　 おお　 つか　 さる　　　　うんぬん
元久元年(1204)三月大廿二日乙酉。鎭西の乃貢の事、　掃部頭入道寂忍　勘定令む可し之由、仰せ遣は被ると云々。

現代語元久元年(1204)三月大二十二日乙酉。九州の年貢について、掃部頭入道寂忍中原親能が数値を監督するように、云い伝えましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　　しょうちょうじゅいん　　ぎょさん
元久元年(1204)三月大廿七日庚寅。將軍家、 勝長壽院 へ御參す。

現代語元久元年(1204)三月大二十七日庚寅。将軍実朝様は、勝長寿院へお参りです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 いが　　　　いせ りょうごく　　へいし　　　むほん　　こと　　そ　　　ご　　そう　もうさすのかん　　すこぶ　　ごふしん　な　　　　あらず
元久元年(1204)三月大廿九日壬辰。伊賀、伊勢兩國の平氏の謀叛の事、其の後左右申不之間、頗る御不審無きに非。

よっ　　きょう　ちゅうや　　ぞうしきら　　　つか　 され　　むさしのかみともまさ　 げち　　したが　　　はっこうすべ　 のむね　　かさ　　　　けいき　　　ごけにんのなか　　 おお　　らる　　　 うんぬん
仍て今日晝夜の雜色等を遣は被、武藏守朝雅の下知に随い、發向可し之旨、重ねて京畿の御家人之中へ仰せ被ると云々。

ひろもとあそん これ　 ぶぎょう
廣元朝臣之を奉行す。

現代語元久元年(1204)三月大二十九日壬辰。伊賀・伊勢の両国での平氏の謀反について、その後どうするか決めていないのは、とても信頼に欠けます。そこで今日、昼番と夜番の雑用を派遣して、平賀武蔵守朝雅の命令に従って出発するように、なおも関西の御家人達へ命令を出されましたとさ。

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