吾妻鏡入門第二十巻

建暦二年壬申(1212)四月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　いぬのこく　しょうぐんけごびょうのう　 しか　　　　こごしょひがしつら　はしらね　 をい　　なはひら
建暦二年(1212)四月小六日壬午。�ﾘ。戌尅。將軍家御病惱。而して小御所東面の柱根に於て花開く。

よっ　　てんちさいへん　きき　ら　　まつり　おこな　　　べ　　　のよし　 そうしゅうこれ　 もう　　せし　　たま
仍て天地災變�@鬼氣等の祭を行はる可き之由、相州之を申さ令め給ふ。

また　つるがおかぐそうら おお　　うけたまは　だいはんにゃきょう　てんどく
又、鶴岳供僧等仰せを奉りて大般若經を轉讀す。

参考�@天地災変祭は、宿曜道に九種152例あり、星宿信仰に関しての天変地異の祈願。

現代語建暦二年(1212)四月小六日壬午。晴れです。戌の刻(午後八時頃)将軍実朝様が病気です。それに小御所の東側の柱の付け根に優曇華の花が咲きました。こりゃ大変とばかりに天地災変祭と鬼気祭をしてお祓いをした方が良いと相州義時さんが申されました。又、鶴岡八幡宮の坊さんに命じてわざわいを除去する大般若経の摺り読みをしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 とらのこく　　ごしょ　　をい　　　 ちかとも　 やすさだおんまつりら　ほうし
建暦二年(1212)四月小八日甲申。�ﾘ。寅尅。御所に於て、親職、泰貞御祭等を奉仕す。

そうしゅう　〔 ほい 〕　　そ　　ところ　　むか　　せし　　たま
相州〔布衣〕其の所へ向は令め給ふ。

現代語建暦二年(1212)四月小八日甲申。晴れです。寅の刻(午前四時頃)、御所で安陪親職と安陪泰貞が天地災変祭と鬼気祭の祈りを捧げました。相州義時さん〔普段着〕が、そこへ立ち会いました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　  しょうぐんけ　　おねがい　 な　　　　おおくらごう　　いちしょうち　　ぼく　　　　いちじ　　けいし せし　　たま
建暦二年(1212)四月小十八日癸卯（甲午）。�ﾘ。將軍家の御願と爲し、大倉郷に一勝地を卜し、一寺を經始�@令め給ふ。

きょう うまのこく　りっちゅうじょうとうなり　　これ　 くんおんふとく　　むく　　られ　 ため　 うんぬん　 そうしゅう　 ぶしゅう　　だいかんれいらさんこうさる
今日午尅、立柱上棟也。是、君恩父徳に報い被ん爲と云々。相州、武州、大官令等參向被る。

いぬのこく　 こ　 ところ　 をい　 すいじんなら　　　　しちざ　　どくうまつり　おこな　らる　　　　きちざくらんどこれ　　ぶぎょう
戌尅、此の所に於て水神并びに七座の土公祭を行は被る。橘三藏人之を奉行す。

参考�@經始は、測量をして工事にかかること。

現代語建暦二年(1212)四月小十八日甲午。晴れです。将軍実朝様の祈願として、大倉郷に縁起の良い地を占って、寺を一つ立てるため測量をして工事を始めました。今日の午の刻(正午頃)に建前の式典です。これは、天皇家への恩と父の徳をたたえるためなんだそうな。相州義時さん・武州時房さん・大官令大江広元さんが立ち会いました。戌の刻(午後八時頃)この場所で、水神様と七人の陰陽師による土地神様へのお祭りを行いました。橘三蔵人惟広が担当しました。

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