吾妻鏡入門第二十巻

建暦二年壬申(1212)八月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　つるがおか　ほうじょうえ　 しょうぐんけ　　ごさんぐうれい　　ごと
建暦二年(1212)八月大十五日戊子。�ﾘ。鶴岳の放生會。將軍家、御參宮例の如し。

これ　 さき　　　あまみだいどころなら　　　みだいどころ　〔おのおのおくるま〕　 ぶがく　　み　　 ため　　かいろう　　わた　 たま
是に先だち尼御臺所并びに御臺所〔 各 御車〕舞樂を覽ん爲、廻廊へ渡り御う。

現代語建暦二年(1212)八月大十五日戊子。鶴岡八幡宮で生き物を放つ儀式放生会です。将軍実朝様のお参りは何時もの通りです。これより前に尼御台所政子様と奥さんの坊門姫〔それぞれ牛車〕は、舞楽の奉納を見るために、回廊にお出でになられました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くもり　しょうぐんけおんいで　　ばぼ　　ぎ　ら　また　　れい　　ごと
建暦二年(1212)八月大十六日己丑。陰。將軍家御出。馬塲の儀等又、例の如し。

現代語建暦二年(1212)八月大十六日己丑。曇りです。八幡宮祭礼の二日目への将軍実朝様もお出でです。競馬や流鏑馬などの馬場での奉納は何時もの通りです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いがのぜんじともみつ　　わだのさえもんのじょうよしもり　　ほくめん　さんのま　ところ　そうら　べ　　　のよし　　きょう　ぶしゅう つた　　おお　　らる
建暦二年(1212)八月大十八日辛夘。伊賀前司朝光、和田左衛門尉義盛、北面の三間の所に候う可き之由、今日武州傳へ仰せ被る。

か　　　ところは　　きんじゅう　　そうしら　　えら　　　　けちばん しこうせし　　　　うんぬん
彼の所者、近習の壯士等を撰び、結番祠候令むと云々。

しか　　　くだん　りょうにん　　すくろう　　な　　　　いへど　　いにしへ　ものがり　き　　　め され　 ため　　これ　 くは　　らる　ところなり
而るに件の兩人、宿老を爲すと雖も、古の物語を聞き召被ん爲、之を加へ被る所也。

現代語建暦二年(1212)八月大十八日辛卯。伊賀前司朝光・和田左衛門尉義盛は、将軍私邸の北面の三の間へ詰めるようにと、今日武州時房を通して伝えてきました。その場所は、将軍のそばに仕える若者達を選んで、順番を決めて詰めさせている所だそうな。それなのにその二人は重臣ではありますが、昔話を聞きたいので、そこへの勤務に加えたのです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たかがり　 きんだんすべ　　よし　　しゅごぢとう　ら　　おお　　らる
建暦二年(1212)八月大十九日壬辰。鷹狩を禁断可き由、守護地頭等に仰せ被る。

ただ　　しなののくに　すはだいみょうじん　おんにえたか　をい　　は　　　めん　　らる　　のよし　　うんぬん
但し、信濃國 諏方大明神 御贄鷹に於て者、免ぜ被る之由と云々。

現代語建暦二年(1212)八月大十九日壬辰。鷹狩を禁止するように（殺生禁断）守護地頭達へ命令をさせました。但し、信濃国の諏訪神社へのお供えの鷹狩の獲物は許すようにとのことだとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さがみのくに かたおか　 さきとり　ら　　 やしろ　こと　　しょうぐんけ　ごきとうしょ　たるべ　　　のよし　　きょう これ　　さだ　　らる
建暦二年(1212)八月大廿二日乙未。相摸國片岡�@、前取�A等の社の事、將軍家御祈祷所爲可き之由、今日之を定め被る。

これ　　としょのじょうぶぎょう
之を圖書允奉行す。

参考�@片岡は、神奈川県平塚市片岡1241の片岡神社、前は雷電社。
参考�A前取は、神奈川県平塚市四之宮4-14-26の前鳥神社。

現代語建暦二年(1212)八月大二十二日乙未。相模国の片岡神社と前鳥神社の社殿について、将軍実朝様の祈祷をする神社にするよう、今日お決めになられました。清原図書允清定が担当です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おんじぶつどう　　をい　　　　こうれい　 もんじゅこう　 おこな　らる
建暦二年(1212)八月大廿五日戊戌。御持佛堂に於て、恒例の文殊講を行は被る。

現代語建暦二年(1212)八月大二十五日戊戌。将軍実朝様の御本尊を祀る持仏堂で、恒例になってる文殊菩薩を祈る講義を行いました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あだちのさえもんのじょう　こうづけのくに　ぶぎょう　　じたい もう　　 こと　　 きょう そ　　　さた　あ
建暦二年(1212)八月大廿七日庚子。安達左衛門尉、 上野國の奉行を辞退申す事、今日其の沙汰有り。

おんきょな　　　　 こと　　けんだん　おこな　べ　　　のよし　　うんぬん
恩許無し。殊に檢断を行う可し之由と云々。

現代語建暦二年(1212)八月大二十七日庚子。安達左衛門尉景盛は、上野国の管理者を辞退したいと云ってることについて、今日、将軍実朝様の裁断がありました。許されません。特に今後も管理するようにとの事だとさ。

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