吾妻鏡入門第廿二巻

建保四年丙子(1216)四月小

建保四年(1216)四月小七日庚刀。廣元朝臣改中原姓。可爲大江氏之由。可申請 勅裁之趣。日來内々談合于都鄙。遂今日属女房。伺許否云々。

読下し                   ひろもとあそん  なかはらせい あらた
建保四年(1216)四月小七日庚刀。廣元朝臣、中原姓を改める。

 おおえし たるべ    のよし ちょくさい  もう  う     べ  のおもむき  ひごろ ないない  とひ に だんごう
大江氏爲可き之由、勅裁を申し請ける可き之趣、日來内々に都鄙于談合す。

つい  きょう にょぼう  ぞく    きょひ   うかが   うんぬん
遂に今日女房に属し、許否を伺うと云々。

現代語建保四年(1216)四月小七日庚寅。広元さんが中原性を変えます。大江性に戻るように、天皇の許しを受けたいと、このところ内々に都の朝廷や鄙の鎌倉将軍に問いかけております。今日とうとう女官を通じて将軍実朝様にその是非を伺いましたとさ。

建保四年(1216)四月小八日辛夘。將軍家御參壽福寺。被備供具於十六羅漢影像云々。

読下し                    しょうぐんけ  じゅふくじ   まい  たま    じうろくらかんようぞう   くぐ を そな  られ    うんぬん
建保四年(1216)四月小八日辛夘。將軍家、壽福寺へ參り御い、十六羅漢影像に供具於備へ被ると云々。

現代語建保四年(1216)四月小八日辛卯。将軍実朝様は寿福寺へお出かけになられ、十六羅漢の絵象とお供え物を上げましたとさ。

建保四年(1216)四月小九日壬辰。於常御所南面。終日令聽断諸人愁訴給。各候于藤御壷。言上子細。義村。善信。行光。仲業等奉行之。

読下し                   つね  ごしょ   なんめん をい   しゅうじつしょにん しゅうそ ちょうだんせし たま
建保四年(1216)四月小九日壬辰。常の御所の南面に於て、終日諸人の愁訴を聽断令め給ふ。

おのおの ふじのおんつぼにそうら  しさい ごんじょう    よしむら  ぜんしん  ゆきみつ なかなりら これ  ぶぎょう
 各、  藤御壷于候ひ、子細を言上す。義村、善信、行光、仲業等之を奉行す。

現代語建保四年(1216)四月小九日壬辰。普段おられる御所の南間で、一日中御家人のつらい事情をお聞きになり採決しました。それぞれ藤の坪庭にかしこまって、事情を申し上げました。三浦義村・三善善信・二階堂行光・右京進仲業が担当しました。

建保四年(1216)四月小十五日丁酉。リ。京都飛脚參。去二日殷富門院崩御之由申之。

読下し                     はれ  きょうと  ひきゃくまい   さんぬ ふつか いんとみもんいんほうぎょのよし  これ  もう
建保四年(1216)四月小十五日丁酉。リ。京都の飛脚參る。去る二日、殷富門院崩御之由、之を申す。

現代語建保四年(1216)四月小十五日丁酉。晴れです。京都からの伝令が来ました。先達ての二日に殷富門院亮子内親王(72)が亡くなられたと報告しました。

建保四年(1216)四月小十七日己亥。廣元朝臣申 大江姓事。有御左右云々。

読下し                     ひろもとあそん  もう  おおえせい  こと  おん そう あ    うんぬん
建保四年(1216)四月小十七日己亥。廣元朝臣が申す大江姓の事、御左右有りと云々。

現代語建保四年(1216)四月小十七日己亥。広元さんが云っている大江性へ戻すことについて、判断が下りました。

建保四年(1216)四月小十九日壬刀。御臺所被修御佛事。坊門殿三十五日也。

読下し                     みだいどころ おんぶつじ  しゅうされ   ぼうもんどの  さんじうどにちなり
建保四年(1216)四月小十九日壬刀。御臺所、御佛事を修被る。坊門殿の三十五日@也。

参考@三十五日は、五七日(いつなのか)で閻魔大王の裁判の日である。

現代語建保四年(1216)四月小十九日壬寅。将軍の奥さんは法要をしました。坊門信清さんに三十五日だからです。

建保四年(1216)四月小廿日癸卯。陰。美作左近大夫朝親爲使節上洛。是依彼崩御事也。

読下し                   くも    みまさかのさこんたいふともちか  しせつ  な   じょうらく
建保四年(1216)四月小廿日癸卯。陰り。美作左近大夫朝親、使節と爲し上洛す。

これ  か   ほうぎょ  こと  よっ  なり
是、彼の崩御の事に依て也。

現代語建保四年(1216)四月小二十日癸卯。曇り。美作左近大夫朝親は、幕府の公式派遣員として京都へ登ります。これは先日の殷富門院の弔問です。

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