吾妻鏡入門第卅七巻

寛元四年丙午(1246)十月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらかげる　よ　　　い　　らいめい
寛元四年(1246)十月大六日辛夘。天陰。夜に入り雷鳴。

現代語寛元四年(1246)十月大六日辛卯。空は曇りです。夜になって雷が鳴りました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さしんえい　　　はいしゅをしょうぐんけ　 おんかた　 すす　 らる　　　 まいじょかいせつ　そで　ひるがえ
寛元四年(1246)十月大八日癸巳。左親衛、盃酒於將軍家の御方に進め被る。舞女廻雪の袖を飜す。

現代語寛元四年(1246)十月大八日癸巳。左親衛時頼は、お酒を将軍家頼嗣様にお勧めしました。踊り子が白い小袖を風に舞う雪のようにひらひらと踊りました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　　さしんえいすくがんあ　　　　 よっ　　　　さとだい　 をい　　　　こんや よ　　　にょいりん　　ひほう　　しゅうされ
寛元四年(1246)十月大九日甲午。天�ﾘ。左親衛宿願有るに依て、里第に於て、今夜自り如意輪の秘法を修被

なら　　　だいはんやきょう　しんどくさる　　　　だいなごんほういんりゅうべんりょうじ　かねおこな　うんぬん
并びに大般若經を信讀被る。大納言法印隆弁兩事を兼行うと云々。

現代語寛元四年(1246)十月大九日甲午。空は晴です。左親衛時頼は、願い事があって、自宅で今夜から如意輪観音の密教の祈祷を行わせ、それに大般若経をきちんと祈られました。大納言法印隆弁がどちらも勤めましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さしんえい　　　うだいしょうけ　　　ほけどう　　　まいらる　　　　こうれい　 おんぶつじ　ちょうもんせし　 たま　　　　うんぬん
寛元四年(1246)十月大十三日戊戌。左親衛、右大將家の法花堂へ參被る。恒例の御佛事を聽聞令め給ふと云々。

現代語寛元四年(1246)十月大十三日戊戌。左親衛時頼は、右大将家頼朝様の法華堂へ行きました。毎月恒例の月違い命日法要のお経をお聞きになりましたとさ。

参考［葉黄記242］、関東より時頼使いが上洛して、関東申し次ぎを九条家から西園寺家に変ったとある。(確認済み)

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ばばどの　　　おは　 かさがけあ　　　　しょうぐんこと　ごにゅうきょう　　いて　じうにきなり
寛元四年(1246)十月大十六日辛丑。馬塲殿に御し笠懸有り。將軍殊に御入興。射手十二騎也。

　そ　　うち　　さしんえい　　くどうのろくろうすけみつ　　よこみぞごろうら　　　あ　　　もうさる　　　　うんぬん
其の中、左親衛、工藤六郎祐光、横溝五郎等を擧げ申被ると云々。

　　ほうじょうろくろう　　　　　　　　　　じょうのくろう
　北條六郎　　　　　城九郎

　　とおとうみのろくろう　　　　　　　　こうづけのじうろう
　遠江六郎　　　　　上野十郎

　　たけだのごろさぶろう　　　　　　　さつまのしちろう
　武田五郎三郎　　　薩摩七郎

　　くどうろくろう　　　　　　　　　　　　よこみぞごろう
　工藤六郎　　　　　横溝五郎

　　みうらのごろうさえもんのじょう　　わかさのぜんじ
　三浦五郎左衛門尉　若狹前司

　　さがみのはちろう　　　　　　　　　おがさわらのよいち
　相摸八郎　　　　　小笠原余一

現代語寛元四年(1246)十月大十六日辛丑。馬場殿において笠懸がありました。将軍家頼嗣様は大喜びです。射手は12騎です。その内、左親衛時頼は、工藤六郎祐光・横溝五郎資重を推薦しましたとさ。
　北条六郎時定　　　　　城九郎安達泰盛
　遠江六郎佐原時連　　　上野十郎結城朝村
　武田五郎三郎政綱　　　薩摩七郎伊東祐能
　工藤六郎祐光　　　　　横溝五郎資重
　三浦五郎左衛門尉資村　若狭前司三浦泰村
　相模八郎北条時隆　　　小笠原余一長経

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しょうぐんけ　おんはまいであ　　 べ　　　のよし　　　ごさた　　　　およ
寛元四年(1246)十月大十九日甲辰。將軍家、御濱出有る可き之由、御沙汰に及ぶ。

きょう　しか　　べ　　　いて　　きょうみょうら　　ちう　　　　これ　 せんていさる　　　　するがしきぶのたいふぶぎょうたり　 うんぬん
今日然る可き射手の交名等を注し、之を撰定被る。駿河式部大夫奉行爲と云々。

現代語寛元四年(1246)十月大十九日甲辰。将軍家頼嗣様は、浜へ出たい(射芸を見たい)と言い出しました。今日、それなりの射手の名簿を書き出して、そこから選び出されました。駿河式部大夫三浦家村が指揮担当だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さしんえい　 おんかた　　にょいりんほうけちがん　　　 うんぬん
寛元四年(1246)十月大廿九日甲寅。左親衛の御方の如意輪法結願すと云々。

現代語寛元四年(1246)十月大二十九日甲寅。左親衛時頼さまの9日からの如意輪観音の祈祷が終わりましたとさ。

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