吾妻鏡入門第四十四巻

建長六年(1254)四月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 みのこく　いご　あめふ　　　　いのこく　　こと　　　　ごがん　　よっ　　　　てんちさいへんさい　おこなはれ
建長六年(1254)四月小四日丙午。�ﾘ。巳刻以後雨降る。亥尅、殊なる御願に依て、天地災變祭を行被る。

ためちかあそんこれ　　ほうし　　　　おんし　　　あきうこんたいふしげちか　　　さいぶん　　そう　さきのだいないきしげのりあそん　 せいしょ　 げんえほういんなり
爲親朝臣之を奉仕す。御使は安藝右近大夫重親。祭文の草は前大内記茂範朝臣。�C書は嚴惠法印也。

はなは　あめ　ひまつり　おこなはれ　こと しか　べからずのよし　 もうせし　 のやからあ　　　　いへど　　　とういん　ございい　のとき
甚だ雨の日祭を行被る事 然る不可之由、申令む之輩有ると雖も、當院御在位之時、

かんげんさんねんさんがつ　ほくゆう　おまつり　　よしみつあそん　ほうしのひ　　はなは　あめ　いへど　　さた　あ　　　　　　　これ　 すいこうさる　　　 うんぬん
　寛元三年三月　北遊の御祭、良光朝臣奉仕之日、甚だ雨と雖も沙汰有りて、之を遂行被ると云々。

現代語建長六年(1254)四月小四日丙午。晴れです。午前10時以後雨が降りました。
午後10時頃、特別な願いがあって、天地災変祭を行いました。安倍為親さんがこれを勤めました。代参は安芸右近大夫重親。神様に捧げる文章の案分は前大内記茂範さん。清書は厳恵法印です。大雨の日に祭を行うのは、よろしくないと文句を垂れる連中もいたけど、現在の後嵯峨院が天皇だった時の寛元3年(1245)3月、陰陽道の祭祀の一つ北遊のお祭りを良光さんが勤めた日も、大雨だけれども、命令があってこれを実行しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうふくじちんじゅ　 しょしん　 しんでんじょうとう
建長六年(1254)四月小十八日庚申。聖福寺鎭守の諸神の々殿上棟す。

いはゆる　しんけん　たけのうち　ひらの　　いなり　　 すみよし　　かしま　　　すわ　　　 いず　　　はこね　　 みしま　　　ふじ　　 えびすしゃら　うんぬん
所謂、神驗・武内・平野・稻荷・住吉・鹿嶋・諏方・伊豆・箱根・三嶋・冨士・夷社等と云々。

これ　　そう　　　 かんとう ちょうきゅう　べっ　　　そうしゅう　りょうけんそく　 そくさい えんめい　 ためなり　　よっ　　か　 きょうだい りょうにん のみょうじ　 もっ　　　　　じごう　　も　さる　　　　うんぬん
是、惣じて關東 長久。別して相州が兩賢息�@の々災 延命の爲也。仍て彼の兄弟 兩人之名字を以て�A、寺号に摸被ると云々。

さんぬ　じうににちことはじ　　あ　　　　うんぬん　　さがのくに おおばのみくりや　のうち　 そ　　 ち　　 ぼくさる　ところなり　　わかみやべっとうそうじょう だいかんじん　うんぬん
去る十二日事始め有りと云々。相摸國 大庭御厨之内に其の地�Bを卜被る所也。 若宮別當僧正　大勸進と云々。

参考�@相州時頼の両賢息は、聖寿丸時宗と福寿丸宗政。
参考�A兄弟両人の名字を以ては、聖寿丸と福寿丸を守る寺、聖福寺。
参考�B相摸國 大庭御厨之内に其の地をは、聖福寺の地は鎌倉市稲村ガ崎五丁目39辺りに石碑と公園がある。とすると稲村ケ崎までが大庭御厨内なのであろうか？

現代語建長六年(1254)四月小十八日庚申。聖福寺を守る色々の神様の神殿の棟上げ式です。いわゆるそれは、神験・武内(竹之内宿祢)・平野神社・稲荷社・住吉大社・鹿島神宮・諏訪大社・伊豆山権現・箱根権現・三島大社・冨士浅間神社・夷社などだそうな。これは全て、鎌倉幕府の武運長久。特別に時頼さんの二人の息子の息災延命のためです。それなので、二人の子供の幼児名を使って、寺の名前にしたんだそうな。先達ての12日に作事始めがあったんだそうな。相模国の大庭御厨内にその土地を占い指定したのです。鶴岡八幡宮筆頭僧正隆弁が建設寄付集めの総元締めだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かまくらちゅう　ぞうにんなら　　　　ひごけにん のやから　 ぶぎょうにん　 せいばい　したが　ざること
建長六年(1254)四月小廿七日己巳。鎌倉中の雜人并びに非御家人之輩、奉行人の成敗に從は不事、

こと　 いさめ　　さた　あ　　　ベ　　 こと　　そ　　　ほう　　さだ　　られ　まんどころ　おお　 らる　　　 うんぬん
殊に誡の沙汰有る可き事、其の法を定め被、政所に仰せ被る�@と云々。

参考�@政所へ仰せらるは、刑法は侍所が担当ではないのか？法制度なので政所にしたのか？

現代語建長六年(1254)四月小二十七日己巳。鎌倉中の一般人それに御家人ではない侍の連中で、奉行人(何奉行？)の決定に従わない時は、特に厳しく罰するように、その制度を決めるように、政務事務所へ命令しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひょうじょう　　さいごくしょうこう　　　ぢとうら　　　しょむ　　こと　　　そ　　　さた　あ
建長六年(1254)四月小廿九日辛未。評定�@。西國庄公の地頭等の所務�Aの事、其の沙汰有り。

これほんぢとう　　しょむは　　　おうじゃくのゆいしょ　　よ　　　べ　　　　ことさら　せんき　のれい　おい　　しんぎ　　 ひほう　　 や　　　せし　 べ　　 なり
是本地頭�Bの所務者、往昔之由緒に依る可し。故に先規之例を追、新儀の非法を止め令む可き也。

しんぢとうは　りっぽう　　さだ　　らる　　　のうえは　　　そ　　ほかまった　らんすい　ちょうじすべ　なりてへ
新地頭者率法を定め被る之上者、其の外全く濫吹を停止可き也者り。

こ　おもむき　ぞん　　　げち　　　くわ　　べ　　　のよし　　すなは　ごほう　　ひきつけ　あいふれらる　　　うんぬん
此の趣を存じ下知を加う可き之由、即ち五方の引付に相觸被ると云々。」

また　 からぶね　 こと　さた　あ　　　　　そ　　いんずう　 さだ　 らる　　　　すなは　きょうこれ　　　しぎょうさる
又、唐船�Cの事沙汰有り。其の員數を定め被る。即ち今日之を施行被る。

　　からぶねは　　ごそう　のほかこれ　 お　　べからず　　はや　 はきゃくせし　　べ
　唐船者、五艘之外之を置く不可。速く破却令む可し。

　　　　　　　　けんちょうろくねんしがつにじうくにち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かんたん
　　　　建長六年四月廿九日　　　　　　　　　　　　　　　　　　勸湛

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さねつな
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　實綱

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　じゃくあ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　寂阿

　　　　　　ちくぜんぜんじどの
　　　筑前々司殿

　　　　　　おおたみんぶたいふどの
　　　大田民部大夫殿

参考�@評定は、時宗の時代には評定はごとうびになる。
参考�A所務は、権限。
参考�B本地頭は、承久の乱以前からの地頭。新補地頭は承久の乱以後。新は反別五升。十一町につき一町。本地頭が新分も欲しがると両様兼帯というがあってはならないが現実にはある。
参考�C唐船は、外海洋大型船。あて先人は大宰府の奉行人。この船の制限は貿易の独占化を示す？

現代語建長六年(1254)四月小二十九日辛未。政務会議。関西以西の庄園や国衙領に配備された地頭の権限について、その検討がありました。承久の乱以前の元からの地頭の権限は、昔からの言い伝えによって処理するように。特に前々からの例を守り、勝手に新しい課税をしてはならない。承久の乱以後に任命された新地頭は規則で決められているので、その他の全ての過徴を止めるように。この趣旨を理解して命令をするように、すぐに五班の裁判担当官に命じましたとさ。」
また、外洋船の建造について決定がありました。その製造許可数を決めました。すぐに今日この規則は実施します。

　外洋船は、五艘以外に置いてはならない。すぐに破壊するように。
　　　建長6年4月29日　　　　　　　勧湛
　　　　　　　　　　　　　　　　　実綱
　　　　　　　　　　　　　　　　　寂阿
　　筑前前司二階堂行泰　　殿
　　大田民部大夫三善康連　殿

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