吾妻鏡入門第五十一巻

弘長三年(1263)正月小

参考�@陸奥左近大夫將監義宗(政)は、塩田流北条義政の間違い。
参考�A武藏式部大輔時(朝)房は、時房ではなく朝房の間違い。

読下し　　　　　　　　　　　　くもり　おうばん　〔そうしゅうぜんしつ　　おんさた〕　そうしゅう　いげ　　ほい　　　き　　　　しゅっし　　つね　　ごと
弘長三年(1263)正月小�B一日壬午。陰。垸飯〔相州禪室が御沙汰〕。相州以下布衣を着ての出仕、常の如し。

さる　　じこく　ののち　おのおのていじょう　お　　れつ　　ざ
申の時刻之後、　各　庭上に降り列に座す�C。

参考�B正月小は、小の月は29日しかない。
参考�C庭上に降り列に座すは、座席が決まっていたようだ。

　　さまごんのかみときむね　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのしろうむねまさ
　左馬權頭時宗　　　　　　　　　　　　相摸四郎宗政

　　むさしのぜんじともなお　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわりのぜんじときあき
　武藏前司朝直　　　　　　　　　　　　尾張前司時章

　　 えちぜんぜんじときひろ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのさぶろうときすけ
　越前々司時廣　　　　　　　　　　　　相摸三郎時輔

　　おな　　　 しちろうむねより　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのぜんじ
　同じき七郎宗頼　　　　　　　　　　　遠江前司

　　さがみさこんのたいふしょうげんときむら　　　　　　　　　　　　　とおとうみうまのすけきよとき
　相摸左近大夫將監時村　　　　　　　　遠江右馬助�C時

　  なかつかさだいゆうのりとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みんぶごんのだいゆうときたか
　中務大輔教時　　　　　　　　　　　　民部權大輔時隆

　　おわりさこんのたいふしょうげんきんとき　　　　　　　　　　　　　むつさこんのたいふしょうげんよしまさ
　尾張左近大夫將監公時　　　　　　　　陸奥左近大夫將監義政

　　ぎょうぶしょうゆうときもと　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさししきぶのだいゆうともふさ
　刑部少輔時基　　　　　　　　　　　　武藏式部大輔朝房

　　だんじょうしょうひつなりとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えちごのしろうあきとき
　彈正少弼業時　　　　　　　　　　　　越後四郎顯時

　　むさしのごろうときただ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むつのじゅうろうただとき
　武藏五郎時忠　　　　　　　　　　　　陸奥十郎忠時

　　するがのしろうかねとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしのはちろうよりなお
　駿河四郎兼時　　　　　　　　　　　　武藏八郎頼直

　　するがのごろうみちとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　びぜんのたろうむねなが
　駿河五郎通時　　　　　　　　　　　　備前太郎宗長

　　とおとうみのしろうまさふさ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしのくろうともさだ
　遠江四郎政房　　　　　　　　　　　　武藏九郎朝貞�B

参考�B武藏九郎朝貞までが、北条氏。

　　くないごんのだいゆうときひで　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なわぎょうぶごんのしょうゆうまさしげ
　宮内權大輔時秀�C　　　　　　　　　　那波刑部權少輔政茂�D

参考�C宮内權大輔時秀は、大江氏の分家。
参考�D那波刑部權少輔政茂は、大江氏の分家。

　　あいだのじょうすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのぜんじ
　秋田城介　　　　　　　　　　　　　　和泉前司

　　ささきいきぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むとうしょうきょう
　佐々木壹岐前司　　　　　　　　　　　武藤少卿

　　ごとういきぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おやまでわぜんじ
　後藤壹岐前司　　　　　　　　　　　　小山出羽前司

　　ぬいどののとう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えっちゅうぜんじ
　縫殿頭　　　　　　　　　　　　　　　越中前司

　　ながとのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひゅうがぜんじ
　長門前司　　　　　　　　　　　　　　日向前司

　　かがぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささきつしまのかみ
　加賀前司　　　　　　　　　　　　　　佐々木對馬守

　  なかつかさごんのしょうゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うつのみやいわみぜんじ
　中務權少輔　　　　　　　　　　　　　宇都宮石見前司

　はたけやまこうづけさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　もくごんのかみ
　畠山上野三郎　　　　　　　　　　　　木工權頭

　　するがさこんおたいふ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　のとのくらんど
　駿河右近大夫　　　　　　　　　　　　能登藏人

　　みまさかさえもんたいふ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なわのごろう
　美作左衛門大夫　　　　　　　　　　　那波五郎

　　じょうのしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さどしんさえもんのじょう
　城四郎左衛門尉　　　　　　　　　　　佐渡新左衛門尉

　　こうづけさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　じょうのろくろうひょうえのじょう
　上野三郎左衛門尉　　　　　　　　　　城六郎兵衛尉

　　ささきいきのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　じょうのいやくろう
　佐々木壹岐三郎左衛門尉　　　　　　　城弥九郎

　　えっちゅうのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごとういきさえもんのじょう
　越中次郎左衛門尉　　　　　　　　　　後藤壹岐左衛門尉

　　えっちゅうのごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　ながとのさぶろうさえもんのじょう
　越中五郎左衛門尉　　　　　　　　　　長門三郎左衛門尉

　　しなののさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えっちゅうのろくろうさえもんのじょう
　信濃左衛門尉　　　　　　　　　　　　越中六郎左衛門尉

　　ごとういきのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのさぶろうさえもんのじょう
　後藤壹岐次郎左衛門尉　　　　　　　　遠江三郎左衛門尉

　　おおすみしゅりのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちくぜんのさぶろうさえもんのじょう
　大隅修理亮　　　　　　　　　　　　　筑前三郎左衛門尉

　　おおすみおおいのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおそねたろう
　大隅大炊助　　　　　　　　　　　　　大曽祢太郎

　　ひたちのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　すおうのごろうさえもんのじょう
　常陸左衛門尉　　　　　　　　　　　　周防五郎左衛門尉

　　ちくぜんのごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　かじわらこうづけのたろうさえもんのじょう
　筑前五郎左衛門尉　　　　　　　　　　梶原上野太郎左衛門尉

　　いせのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おきのしろうひょうえのじょう
　伊勢次郎左衛門尉　　　　　　　　　　隱岐四郎兵衛尉

　　かいのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　いせのさぶろうさえもんのじょう
　甲斐三郎左衛門尉　　　　　　　　　　伊勢三郎左衛門尉

　　ぼうの○ろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かとうさえもんのじょう
　□□□郎左衛門尉　　　　　　　　　　加藤左衛門尉

　　たけいしのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　おのでらのしろうさえもんのじょう
　武石新左衛門尉　　　　　　　　　　　小野寺四郎左衛門尉

　 きいのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おのでらしんさえもんのじょう
　紀伊次郎左衛門尉　　　　　　　　　　小野寺新左衛門尉

　　じんざぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 かいのごろうさえもんのじょう
　進三郎左衛門尉　　　　　　　　　　　甲斐五郎左衛門尉

　　ないとうひごのろくろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　ささきまごしろうさえもんのじょう
　内藤肥後六郎左衛門尉　　　　　　　　佐々木孫四郎左衛門尉

　　でわにはちろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　いがのしろうさえもんのじょう
　出羽八郎左衛門尉　　　　　　　　　　伊賀四郎左衛門尉

　　かのうのしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　 いとうのはちろうさえもんのじょう
　狩野四郎左衛門尉　　　　　　　　　　伊東八郎左衛門尉

　　びんごのたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しなののほうがんじろうさえもんのじょう
　備後太郎　　　　　　　　　　　　　　信濃判官次郎左衛門尉

　　いがしきぶのはちろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　さつまのしちろうさえもんのじょう
　伊賀式部八郎左衛門尉　　　　　　　　薩摩七郎左衛門尉

　　ひらがのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　 びんごのじろう
　平賀三郎左衛門尉　　　　　　　　　　備後次郎

　　すおうのしちろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 びんごのさぶろう
　周防七郎　　　　　　　　　　　　　　備後三郎

　　あまのひごのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　 おな　　　ひごのしろうさえもんのじょう
　天野肥後三郎左衛門尉　　　　　　　　同じき肥後四郎左衛門尉

　　あだちのうえもんごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささきかぢのたろうさえもんのじょう
　足立右衛門五郎　　　　　　　　　　　佐々木加地太郎左衛門尉

しょうぐんけ　なんめん　しゅつご　つちみかどだいなごんさんしん　　　おんみすさんかけん　あ
將軍家　南面へ出御。 土御門大納言 參進し、御簾三箇間を上ぐ。

つぎ　しんもつ　ぎょけん　むさしのぜんじともなお　ごちょうど　なかつかさだいゆうのりとき　おんむかばきくつ　くないごんのだいゆうときひで
次に進物。御劔は武藏前司朝直。 御調度は 中務大輔教時。　御行騰沓は宮内權大輔時秀。

　いちのおんうま　むさしのごろうときただ　　　　　　　　　　　　　 おかむらのさぶろうひょうえのじょう
　一御馬　武藏五郎時忠　　　　　　　　岡村三郎兵衛尉

　　にのおんうま　じょうのろくろうひょうえのじょうあきもり　　　　　おな　　　くろうながかげ
　二御馬　城六郎兵衛尉顯盛　　　　　　同じき九郎長景

　さんのおんうま　でわのはちろうさえもんのじょうゆきよ　　　　　 おな　　　くろうむねゆき
　三御馬　出羽八郎左衛門尉行世　　　　同じき九郎宗行

　よんのおんうま　ささきいきのさぶろうさえもんのじょうよりつな　おな　　　しろうさえもんのじょうながつな
　四御馬　佐々木壹岐三郎左衛門尉頼綱　同じき四郎左衛門尉長綱

　　ごのおんうま　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　　　　　すわのしろうさえもんのじょう
　五御馬　相摸三郎時輔　　　　　　　　諏方四郎左衛門尉

ひつじのこく　しょういぐんけ みゆきはじ　　　そうしゅうぜんしつ　てい　 にゅうご　　ぐぶにん
 未刻、　將軍家　御行始め。相州禪室が 亭へ入御。供奉人。

ごしょのおんかた
御所御方

　　むさしのぜんじともなお　〔ぎょけんやく〕　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　ごろうときただ
　武藏前司朝直〔御劔役〕　　　　　　　 同じき五郎時忠

　　おわりのぜんじときあき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　さこんのたいふしょうげんきんとき
　尾張前司時章　　　　　　　　　　　　同じき左近大夫將監公時

　　さまごんのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えちぜんぜんじときひろ
　左馬權頭　　　　　　　　　　　　　　越前々司時廣

　　さがみのさぶろうときすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぎょうぶしょうゆうときもと
　相摸三郎時輔　　　　　　　　　　　　刑部少輔時基

　　えちごのしろうあきとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むつのじゅうろうただとき
　越後四郎顯時　　　　　　　　　　　　陸奥十郎忠時

　　あいだのじょうすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　くろうながかげ
　秋田城介泰盛　　　　　　　　　　　　同九郎長景

　　いずみのぜんじゆきかた　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささきいきぜんじやすつな
　和泉前司行方　　　　　　　　　　　　佐々木壹岐前司泰綱

　  なかつかさごんのしょうゆうしげのり　　　　　　　　　　　　　　　　えっちゅうぜんじよりなり
　中務權少輔重教　　　　　　　　　　　越中前司頼業

　　ごとういきぜんじもとまさ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ひょうがぜんじすけやす
　後藤壹岐前司基政　　　　　　　　　　日向前司祐泰

　　ぬいどののとうもろつら　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 みまさかさこんくらんどむねのり
　縫殿頭師連　　　　　　　　　　　　　美作左近藏人宗教

　　おのでらのしろうさえもんのじょうみちとき　　　　　　　　　　　　 ひたちさえもんのじょうゆききよ
　小野寺四郎左衛門尉通時　　　　　　　常陸左衛門尉行�C

　　しなののさえもんのじょうとききよ　　　　　　　　　　　　　　　　　 すおうのさぶろうさえもんのじょうただかげ
　信濃左衛門尉時�C　　　　　　　　　　周防三郎左衛門尉忠景

　　ちくぜんのさぶろうさえもんのじょうゆきざね　　　　　　　　　　 じんざぶろうさえもんのじょうむねなが
　筑前三郎左衛門尉行實　　　　　　　　進三郎左衛門尉宗長

　　かとうさえもんのじょうかげつね　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かいのさぶろうさえもんのじょうためなり
　加藤左衛門尉景經　　　　　　　　　　甲斐三郎左衛門尉爲成

　　 いとうのはちろうさえもんのじょうすけみつ　　　　　　　　　　　　かのうのしろうさえもんのじょうかげしげ
　伊東八郎左衛門尉祐光　　　　　　　　狩野四郎左衛門尉景茂

　　ささきつしまのしろうさえもんのじょうむねつな　　　　　　　　　　おおみひごのしろうさえもんのじょうゆきさだ
　佐々木對馬四郎左衛門尉宗綱　　　　　大見肥後四郎左衛門尉行定

なかごしょのおんかた〔はちようのおくるま　おんぞ　　いださる　　〕
中御所御方〔八葉御車　御衣を出被る〕

　  なかつかさだいゆうのりとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さがみさこんのたいふしょうげんときむら
　中務權大輔教時　　　　　　　　　　　相摸左近大夫將監時村

　　みんぶごんのだいゆうときたか　　　　　　　　　　　　　　　　　　 むさししきぶのだいゆうともふさ
　民部權大輔時隆　　　　　　　　　　　武藏式部大夫朝房

　　とおとうみうまのすけきよとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのしちろうむねより
　遠江右馬助�C時　　　　　　　　　　　相摸七郎宗頼

　　ぎょうぶごんのしょうゆうまさしげ　　　　　　　　　　　　　　　　　　くないごんのだいゆうときひで
　刑部權少輔政茂　　　　　　　　　　　宮内權大輔時秀

　　ながとのぜんじときとも　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささきつしまぜんじうじのぶ
　長門前司時朝　　　　　　　　　　　　佐々木對馬前司氏信

　はたけやまこうづけさぶろうくにうじ　　　　　　　　　　　　　　　　おおすみしゅりのすけひさとき
　畠山上野三郎國氏　　　　　　　　　　大隅修理亮久時

　　じょうのしろうさえもんのじょうときもり　　　　　　　　　　　　　　　　 ごとういきぜんじもとより
　城四郎左衛門尉時盛　　　　　　　　　後藤壹岐前司基頼

　 おのでらしんさえもんのじょうみちつぐ　　　　　　　　　　　　　　かじわらたろうさえもんのじょうかげつな
　小野寺新左衛門尉道継　　　　　　　　梶原太郎左衛門尉景綱

　　いせのじろうさえもんのじょうゆきつね　　　　　　　　　　　　　たけいしのしんさえもんのじょうながたね
　伊勢次郎左衛門尉行經　　　　　　　　武石新左衛門尉長胤

　しなののほうがんじろうさえもんのじょうゆきむね　　　　　　　　 しまづすおうのしちろうさだかた
　信濃判官次郎左衛門尉行宗　　　　　　嶋津周防七郎定賢

おんひきでもの　ぎょけん　おわりのぜんじときあき　　さきん　　さこんのたいふしょうげんときむら　　はね　　あいだのじょうすけやすもり
御引出物。御釼は尾張前司時章。 砂金は 左近大夫將監時村。 羽は秋田城介泰盛。

　いちのおんうま　さがみの しちろうむねより　　　　　　　　　　 へいしんさえもんのじょうよりつな
　一御馬　相摸七郎宗頼　　　　　　　　平新左衛門尉頼綱

　　にのおんうま　ちくぜんさえもんのじょうゆきざね　　　　　　　 おな　　　ごろうさえもんのじょうゆきしげ
　二御馬　筑前左衛門尉行實　　　　　　同じき五郎左衛門尉行重

参考名付け親が一字あげるのを偏諱。通字は親から子へ。系字は兄弟が同じ文字を使う。

現代語弘長三年(1263)正月小一日壬午。曇りです。宗尊親王将軍家への御馳走のふるまい〔相州禅室時頼の提供〕。相州政村以下布衣〔狩衣で武家の正装〕を着て出勤してきたのは、いつも通りです。午後四時頃以後にそれぞれ庭に降りて列を作って座りました。
　左馬権頭北条時宗　　　　　　　　　　　　相模四郎北条宗政
　武蔵前司大仏流北条朝直　　　　　　　　　尾張前司名越時章
　越前前司北条時広　　　　　　　　　　　　相模三郎北条時輔
　同七郎北条宗頼　　　　　　　　　　　　　遠江前司大仏流北条時直
　相模左近大夫将監北条時村　　　　　　　　遠江右馬助北条清時
　中務大輔名越流北条教時　　　　　　　　　民部権大輔佐助流北条時隆
　尾張左近大夫将監名越公時　　　　　　　　陸奥左近大夫将監塩田義政
　刑部少輔名越流北条時基　　　　　　　　　武蔵式部大夫大仏流北条朝房
　弾正少弼極楽寺流北条業時　　　　　　　　越後四郎金沢流北条顕時
　武蔵五郎大仏流北条時忠　　　　　　　　　陸奥十郎極楽寺流北条忠時
　駿河四郎伊具流北条兼時　　　　　　　　　武蔵八郎大仏流北条頼直
　駿河五郎伊具流北条通時　　　　　　　　　備前太郎宗長
　遠江四郎大仏政房　　　　　　　　　　　　武蔵九郎大仏流北条朝貞
　宮内権大輔長井時秀　　　　　　　　　　　那波刑部権少輔政茂
　秋田城介安達泰盛　　　　　　　　　　　　和泉前司二階堂行
　佐々木壱岐前司泰綱　　　　　　　　　　　武藤少卿景頼
　後藤壱岐前司基政　　　　　　　　　　　　小山出羽前司長村
　縫殿頭中原師連　　　　　　　　　　　　　越中前司(宇都宮)横田頼業
　長門前司笠間時朝　　　　　　　　　　　　日向前司宇佐美祐泰
　加賀前司二階堂行頼　　　　　　　　　　　佐々木対馬守氏信
　中務権少輔重教　　　　　　　　　　　　　宇都宮石見前司宗朝
　畠山上野三郎国氏　　　　　　　　　　　　木工権頭中原親家
　駿河右近大夫　　　　　　　　　　　　　　能登蔵人
　美作左衛門大夫宗教　　　　　　　　　　　那波五郎
　城四郎左衛門尉安達時盛　　　　　　　　　佐渡新左衛門尉基通
　上野三郎左衛門尉結城広綱　　　　　　　　城六郎兵衛尉安達顕盛
　佐々木壱岐三郎左衛門尉頼綱　　　　　　　城弥九郎安達長景
　越中次郎左衛門尉(宇都宮)横田朝景　　　　後藤壹岐左衛門尉基頼
　越中五郎左衛門尉(宇都宮)横田長員　　　　長門三郎左衛門尉笠間朝景
　信濃左衛門尉時清　　　　　　　　　　　　越中六郎左衛門尉(宇都宮)横田時業
　後藤壹岐次郎左衛門尉基広　　　　　　　　遠江三郎左衛門尉泰盛
　大隅修理亮島津久時　　　　　　　　　　　筑前三郎左衛門尉二階堂行実
　大隅大炊助　　　　　　　　　　　　　　　大曽祢太郎長経
　常陸左衛門尉行清　　　　　　　　　　　　周防五郎左衛門尉島津忠景
　筑前五郎左衛門尉二階堂行重　　　　　　　梶原上野太郎左衛門尉景綱
　伊勢次郎左衛門尉二階堂行経　　　　　　　隠岐四郎兵衛尉二階堂行廉
　甲斐三郎左衛門尉為成　　　　　　　　　　伊勢三郎左衛門尉頼綱
　□□□郎左衛門尉　　　　　　　　　　　　加藤左衛門尉景経
　武石新左衛門尉長胤　　　　　　　　　　　小野寺四郎左衛門尉通時
　紀伊次郎左衛門尉為経　　　　　　　　　　小野寺新左衛門尉行通
　進三郎左衛門尉宗長　　　　　　　　　　　甲斐五郎左衛門尉為定
　内藤肥後六郎左衛門尉時景　　　　　　　　佐々木孫四郎左衛門尉泰信
　出羽八郎左衛門尉二階堂行世　　　　　　　伊賀四郎左衛門尉景家
　狩野四郎左衛門尉景茂　　　　　　　　　　伊東八郎左衛門尉祐光
　備後太郎　　　　　　　　　　　　　　　　信濃判官次郎左衛門尉二階堂行宗
　伊賀式部八郎左衛門尉仲光　　　　　　　　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能
　平賀三郎左衛門尉惟時　　　　　　　　　　備後次郎
　周防七郎島津定賢　　　　　　　　　　　　備後三郎
　天野肥後三郎左衛門尉　　　　　　　　　　同肥後四郎左衛門尉
　足立右衛門五郎　　　　　　　　　　　　　佐々木加地太郎左衛門尉実綱
宗尊親王将軍家は、公邸の南面へお出ましです。土御門大納言顕方さん(村上源氏)が進み出て、御簾を三間分上げました。次に将軍への献上品です。刀は武蔵前司大仏流北条朝直。弓矢は中務大輔北条教時。乗馬袴と乗馬沓は宮内権大輔長井時秀です。
　一頭目の馬は、武蔵五郎大仏流北条時忠　　と岡村三郎兵衛尉
　二頭目の馬は、城六郎兵衛尉安達顕盛　　　と城弥九郎安達長景
　三頭目の馬は、出羽八郎左衛門尉二階堂行世と出羽九郎二階堂宗行
　四頭目の馬は、佐々木壱岐三郎左衛門尉頼綱と佐々木壱岐四郎左衛門尉長綱
　五頭目の馬は、相模三郎北条時輔　　　　　と諏訪四郎左衛門尉
午後二時頃、宗尊親王将軍家のお出かけ始めです。相州禅室時頼の屋敷へ入りました。お供は
将軍の側
　武蔵前司大仏流北条朝直〔刀持ち〕　同武蔵五郎大仏流北条時忠
　尾張前司名越流北条時章　　　　　　同尾張左近大夫将監名越公時
　左馬権頭北条時宗　　　　　　　　　越前前司北条時広
　相模三郎北条時輔　　　　　　　　　刑部少輔名越時基
　越後四郎金沢顕時　　　　　　　　　陸奥十郎極楽寺忠時
　秋田城介安達泰盛　　　　　　　　　城弥九郎安達長景
　和泉前司二階堂行方　　　　　　　　佐々木壱岐前司泰綱
　中務権大輔重教　　　　　　　　　　越中前司(宇都宮)横田頼業
　後藤壱岐前司基政　　　　　　　　　日向前司宇佐美祐泰
　縫殿頭中原師連　　　　　　　　　　美作左近蔵人宗教
　小野寺四郎左衛門尉通時　　　　　　常陸左衛門尉行清
　信濃左衛門尉時清　　　　　　　　　周防三郎左衛門尉島津忠景
　筑前三郎左衛門尉二階堂行実　　　　進三郎左衛門尉宗長
　加藤左衛門尉景経　　　　　　　　　甲斐三郎左衛門尉為成
　伊東八郎左衛門尉祐光　　　　　　　狩野四郎左衛門尉景茂
　佐々木対馬四郎左衛門尉宗綱　　　　大見肥後四郎左衛門尉行定
将軍奥さん中御所側〔八葉の牛車で出だし衣を出す〕
　中務大輔北条教時　　　　　　　　　相模左近大夫将監北条時村
　民部権大輔時隆　　　　　　　　　　武蔵式部大輔大仏朝房
　遠江右馬助清時　　　　　　　　　　相模七郎宗頼
　那波刑部権少輔政茂　　　　　　　　宮内権大輔長井時秀
　長門前司笠間時朝　　　　　　　　　佐々木対馬前司氏信
　畠山上野三郎国氏　　　　　　　　　大隅修理亮島津久時
　城四郎左衛門尉安達時盛　　　　　　後藤壱岐前司基頼
　小野寺新左衛門尉道継　　　　　　　梶原太郎左衛門尉景綱
　伊勢次郎左衛門尉行経　　　　　　　武石新左衛門尉長胤
　信濃判官次郎左衛門尉二階堂行宗　　嶋津周防七郎定賢
お土産の引き出物は、刀が尾張前司名越流北条時章。砂金は相模左近大夫将監北条時村。鷲の羽は、秋田城介安達泰盛
　一頭目の馬は、相模七郎宗頼　　　　　　　と平新左衛門尉頼綱
　二頭目の馬は、筑前三郎左衛門尉二階堂行実と筑前五郎左衛門尉二階堂行重

読下し　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　おうばん　〔そうしゅう　おんさた〕　　おんみす　つちみかどだいなごん　　ぎょけん　おわりのぜんじときあき
弘長三年(1263)正月小二日癸未。天�ﾘ。垸飯〔相州御沙汰〕。御簾は土御門大納言。　御劔は 尾張前司時章。

ごちょうど　　えちぜんぜんじときひろ　　おんむかばき　いずみのぜんじゆきかた
御調度は越前々司時廣。　御行騰は　和泉前司行方。

いちのおんうま　さがみさこんのたいふしょうげんときむら　　　　 よもだのしんざぶろうさえもんのじょう
　一御馬　相摸左近大夫將監時村　　　　四方田新三郎左衛門尉

　にのおんうま　えちごのしろうあきとき　　　　　　　　　　　　　　　かすやのさえもんさぶろうゆきむら
　二御馬　越後四郎顯時　　　　　　　　糟屋左衛門三郎行村

さんのおんうま　じょうのろくろうひょうえのじょうあきもり　　　　　　おな　　　くろうながかげ
　三御馬　城六郎兵衛尉顯盛　　　　　　同九郎長景

よんのおんうま　でわのはちろうさえもんのじょうゆきよ　　　　　　おな　　　くろうむねゆき
　四御馬　出羽八郎左衛門尉行世　　　　同九郎宗行

　ごのおんうま　えちごのろくろうさねまさ　　　　　　　　　　　　　　いがのうえもんじろう
　五御馬　越後六郎實政　　　　　　　　伊賀右衛門次郎

きょう　　 がんたん　しゅっしにんずう　 もっ　　つるがおかぎょさん　　ぐぶ　　ため　　げてんさるょ
今日、元日の出仕人數を以て、鶴岡　御參の供奉の爲、下点被る。

現代語弘長三年(1263)正月小二日癸未。空は晴です。宗尊親王将軍家への御馳走のふるまい〔相州常盤政村の提供〕。御簾は土御門大納言顕方さんが上げました。将軍への献上の刀が尾張前司名越流北条時章。弓矢は越前前司北条時広。乗馬袴は和泉前司二階堂行方です。
　一頭目の馬は、相模左近大夫将監北条時村　と四方田新三郎左衛門尉
　二頭目の馬は、越後四郎金沢顕時　　　　　と糟谷左衛門三郎行村
　三頭目の馬は、城六郎兵衛尉安達顕盛　　　と城弥九郎安達長景
　四頭目の馬は、出羽八郎左衛門尉二階堂行世と出羽九郎二階堂宗行
　五頭目の馬は、越後六郎金沢実政　　　　　と伊賀右衛門次郎
今日、元旦の出勤したメンバーを指定して、鶴岡八幡宮お参りのお供として、名簿に印をつけました。

読下し　　　　　　　　　　　　　そらはれ　おうばん　〔ぶしゅう　おんさた〕　　　おんみす　つちみかどだいなごん　　ぎょけん　なかつかさごんのだいいゆうのりとき
弘長三年(1263)正月小三日甲申。天�ﾘ。垸飯〔武州御沙汰〕。御簾は土御門大納言。　御劔は　中務權大輔教時。

ごちょうど　　さこんのたいふしょうげんきんとき　　おんむかばき　だざいごんのしょうにかげより
御調度は　左近大夫將監公時。　御行騰は　太宰權少貳景頼。

いちのおんうま　さがみのしちろうむねより　　　　　　　　　　　　　 あんどうくないさえもんのじょうかげみつ
　一御馬　相摸七郎宗頼　　　　　　　　安東宮内左衛門尉景光

　にのおんうま　かじわらのたろうさえもんのじょうかげつな　　　　おな　　　ごろうかげかた
　二御馬　梶原太郎左衛門尉景綱　　　　同じき五郎景方

さんのおんうま　かいのさぶろうさえもんのじょうためなり　　　　　 おな　　　ごろうさえもんのじょうためさだ
　三御馬　甲斐三郎左衛門尉爲成　　　　同じき五郎左衛門尉爲定

よんのおんうま　こうづけのさぶろうさえもんのじょうしげよし　　　おな　　　さえもんごろうむねみつ
　四御馬　上野三郎左衛門尉重義　　　　同じき左衛門五郎宗光

　ごのおんうま　むつのじゅうろうただとき　　　　　　　　　　　　　　まきののたろうひょうえのじょう
　五御馬　陸奥十郎忠時　　　　　　　　牧野太郎兵衛尉

現代語弘長三年(1263)正月小三日甲申。空は晴です。宗尊親王将軍家への御馳走のふるまい〔執権相州極楽寺長時の提供〕。御簾は土御門大納言顕方さんが上げました。将軍への献上の刀が中務権大輔北条教時。弓矢は尾張左近大夫将監名越公時。乗馬袴は太宰権少弐武藤景頼です。
　一頭目の馬は、相模七郎北条宗頼　　と安東宮内左衛門尉景光
　二頭目の馬は、梶原太郎左衛門尉景綱と梶原五郎景方
　三頭目の馬は、甲斐三郎左衛門尉為成と甲斐五郎左衛門尉為定
　四頭目の馬は、上野三郎左衛門尉重義と上野左衛門五郎宗光
　五頭目の馬は、陸奥十郎極楽寺忠時　と牧野太郎兵衛尉

読下し　　　　　　　　　　　　つるがおか　ぎょさん　　ぐぶにん　　こと　　あいもよお　　　　うんぬん
弘長三年(1263)正月小五日丙戌。鶴岡へ御參の供奉人の事、相催さると云云。

現代語弘長三年(1263)正月小五日丙戌。鶴岡八幡宮へのお参りのお供について、催促しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　そらはれ　しょうぐんけ　つるがおかはちまんぐう　ぎょさん
弘長三年(1263)正月小七日戊子。天�ﾘ。將軍家、 鶴岡八幡宮へ 御參。

ぐぶにん
供奉人

おんくるま
御車

　　じょうのいやくろうながかげ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　でわのはちろうさえもんのじょうゆきよ
　城弥九郎長景　　　　　　　　　　　　出羽八郎左衛門尉行世

　　ごとういきのじろうさえもんのじょうもとひろ　　　　　　　　　　　　ながとのさぶろうさえもんのじょうともかげ
　後藤壹岐次郎左衛門尉基廣　　　　　　長門三郎左衛門尉朝景

　　いせのさぶろうさえもんのじょうよりつな　　　　　　　　　　　　　かじわらさぶろうさえもんのじょうかげうじ
　伊勢三郎左衛門尉頼綱　　　　　　　　梶原三郎左衛門尉景氏

　　しまづすおうのしちろうさだかた　　　　　　　　　　　　　　　　　えっちゅうのじろうさえもんのじょうともかげ
　嶋津周防七郎定賢　　　　　　　　　　越中次郎左衛門尉朝景

　　たけいしのしんさえもんのじょうながたね　　　　　　　　　　　　えっちゅうのごろうさえもんのじょうながかず
　武石新左衛門尉長胤　　　　　　　　　越中五郎左衛門尉長員

　　こうづけさぶろうさえもんのじょうしげよし　　　　　　　　　　　　いがのしろうさえもんのじょうかげいえ
　上野三郎左衛門尉重義　　　　　　　　伊賀四郎左衛門尉景家

　　かのうのしろうさえもんのじょうかげしげ　　　　　　　　　　　　　ひらがのさぶろうさえもんのじょうこれとき
　狩野四郎左衛門尉景茂　　　　　　　　平賀三郎左衛門尉惟時

　　さつまのしちろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　さどしんさえもんのじょうもとみち
　薩摩七郎左衛門尉祐能　　　　　　　　佐渡新左衛門尉基通

　　しなののほうがんじろうさえもんのじょうゆきむね
　信濃判官次郎左衛門尉行宗

　　　 いじょう じゅうしちにん　ひたたれ　き　　 たいけん　　 おくるま　　さゆう　　そうら
　　以上 十七人。 直垂を着て帶劔し、御車の左右に候う。

つい　おんうしろし じゅうくにん　〔　ほい　〕
次で 御後 四十九人〔布衣〕

　　むさしのぜんじともなお　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　しきぶのたいふともふさ
　武藏前司朝直　　　　　　　　　　　　同じき式部大夫朝房

　　おな　　　ごろうときただ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　はちろうよりなお
　同じき五郎時忠　　　　　　　　　　　同じき八郎頼直

　　 えちぜんぜんじときひろ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  なかつかさごんのだいゆうのりとき
　越前々司時廣　　　　　　　　　　　　中務權大輔教時

　　おわりさこんのたいふしょうげんきんとき　　　　　　　　　　　　　さがみさこんのたいふしょうげんときむら
　尾張左近大夫將監公時　　　　　　　　相摸左近大夫將監時村

　　みんぶごんのだいゆうときたか　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　しろうむねふさ
　民部權大輔時隆　　　　　　　　　　　同じき四郎宗房

　　さがみのさぶろうときすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　しちろうむねより
　相摸三郎時輔　　　　　　　　　　　　同じき七郎宗頼

　　ぎょうぶしょうゆうときもと　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみうまのすけきよとき
　刑部少輔時基　　　　　　　　　　　　遠江右馬助�C時

　　えちごのしろうあきとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むつのじゅうろうただとき
　越後四郎顯時　　　　　　　　　　　　陸奥十郎忠時

　　なわぎょうぶごんのしょうゆうまさしげ　　　　　　　　　　　　　　　くないごんのだいゆうときひで
　那波刑部少輔政茂　　　　　　　　　　宮内權大輔時秀

　　ささきいきぜんじやすつな　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　さぶろうさえもんのじょうよりつな
　佐々木壹岐前司泰綱　　　　　　　　　同じき三郎左衛門尉頼綱

　　えっちゅうぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ながとのぜんじときとも
　越中前司頼業　　　　　　　　　　　　長門前司時朝

　　ごとういきぜんじもとまさ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　たろうさえもんのじょうもとより
　後藤壹岐前司基政　　　　　　　　　　同じき太郎左衛門尉基頼

　　もくごんのかみちかいえ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　さえもんくらんどむねのり
　木工權頭親家　　　　　　　　　　　　同じき左衛門藏人宗教

　　ぬいどののとうもろつら　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うさみひゅうがぜんじすけやす
　縫殿頭師連　　　　　　　　　　　　　宇佐美日向前司祐泰

　はたけやまこうづけさぶろう　　　　　　　　　　　　いわみのぜんじむねとも
　畠山上野三郎　　　　　　　　　　　　石見前司宗朝

　 ひたちさえもんのじょうゆききよ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちくぜんのさぶろうさえもんのじょうゆきざね
　常陸左衛門尉行�C　　　　　　　　　　筑前三郎左衛門尉行實

　　じょうのろくろうひょうえのじょうあきもり　　　　　　　　　　　　　　おおすみしゅりのすけひさとき
　城六郎兵衛尉顯盛　　　　　　　　　　大隅修理亮久時

　　しなののさえもんのじょうとききよ　　　　　　　　　　　　　　　　　 すおうのごろうさえもんのじょうただかげ　〔ごちょうどやく〕
　信濃左衛門尉時�C　　　　　　　　　　周防五郎左衛門尉忠景〔御調度役〕

　　いずみのろくろうさえもんのじょうかげむら　　　　　　　　　　　 おな　　　しちろうさえもんのじょうかげつね
　和泉六郎左衛門尉景村　　　　　　　　同じき七郎左衛門尉景經

　 きいのじろうさえもんのじょうためつね　　　　　　　　　　　　　　　かじわらたろうさえもんのじょうかげつな
　紀伊次郎左衛門尉爲經　　　　　　　　梶原太郎左衛門尉景綱

　　 じんざぶろうさえもんのじょうむねなが　　　　　　　　　　　　　 かとうさえもんのじょうかげつね　〔おんくつてなが〕
　進三郎左衛門尉宗長　　　　　　　　　加藤左衛門尉景經〔御沓手長〕

　　おのでらのしんさえもんのじょうみちつぐ　　　　　　　　　　　　 かいのさぶろうさえもんのじょうためなり
　小野寺新左衛門尉道継　　　　　　　　甲斐三郎左衛門尉爲成

　　いとうのはちろうさえもんのじょうすけみつ　　　　　　　　　　　 ささきのまごしろうさえもんのじょうやすのぶ
　伊東八郎左衛門尉祐光　　　　　　　　佐々木孫四郎左衛門尉泰信

　　いがしきぶのはちろうさえもんのじょうなかけみつ　　　　　　　 おおみひごのしろうさえもんのじょうゆきさだ
　伊賀式部八郎左衛門尉仲光　　　　　　大見肥後四郎左衛門尉行定

　　ささきかぢのたろうさえもんのじょうさねつな
　佐々木加地太郎左衛門尉實綱

現代語弘長三年(1263)正月小七日戊子。空は晴です。宗尊親王将軍家は、鶴岡八幡宮へお参りです。
お共の人は
牛車
　城弥九郎安達長景　　　　　　　　　　出羽八郎左衛門尉二階堂行世
　後藤壱岐次郎左衛門尉基広　　　　　　長門三郎左衛門尉笠間朝景
　伊勢三郎左衛門尉頼綱　　　　　　　　梶原三郎左衛門尉景氏
　嶋津周防七郎定賢　　　　　　　　　　越中次郎左衛門尉(宇都宮)横田朝景
　武石新左衛門尉長胤　　　　　　　　　越中五郎左衛門尉(宇都宮)横田長員
　上野三郎左衛門尉重義　　　　　　　　伊賀四郎左衛門尉景家
　狩野四郎左衛門尉景茂　　　　　　　　平賀三郎左衛門尉惟時
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　　　　　　佐渡新左衛門尉後藤基通
　信濃判官次郎左衛門尉二階堂行宗
　　以上の十七人は、鎧直垂を着て太刀を佩き、牛車の左右で警備する。
次いで将軍の後ろに従うのは、四十九人〔正装の狩衣〕
　武蔵前司大仏流北条朝直　　　　　　　同武蔵式部大夫大仏流北条朝房
　同武蔵五郎大仏流北条時忠　　　　　　同武蔵八郎大仏流北条頼房
　越前前司北条時広　　　　　　　　　　中務大輔北条教時
　尾張左近大夫将監名越公時　　　　　　相模左近大夫将監北条時村
　民部権大輔佐助流北条時隆　　　　　　同四郎佐助流北条宗房
　相模三郎時輔　　　　　　　　　　　　同相模七郎宗頼
　刑部少輔名越流北条時基　　　　　　　遠江右馬助大仏流北条清時
　越後四郎金沢流北条顕時　　　　　　　陸奥十郎極楽寺流北条忠時
　那波刑部権少輔政茂　　　　　　　　　宮内権大輔長井時秀
　佐々木壱岐前司泰綱　　　　　　　　　同三郎左衛門尉佐々木頼綱
　越中前司(宇都宮)横田頼業　　　　　　長門前司笠間時朝
　後藤壱岐前司基政　　　　　　　　　　同太郎左衛門尉後藤基頼
　木工権頭藤原親家　　　　　　　　　　同左衛門蔵人藤原宗教
　縫殿頭中原師連　　　　　　　　　　　宇佐美日向前司祐泰
　畠山上野三郎国氏　　　　　　　　　　石見前司宇都宮宗朝
　常陸左衛門尉二階堂行清　　　　　　　筑前三郎左衛門尉二階堂行実
　城六郎兵衛尉安達顕盛　　　　　　　　大隅修理亮島津久時
　信濃左衛門尉二階堂時清　　　　　　　周防五郎左衛門尉島津忠景〔弓矢持ち〕
　和泉六郎左衛門尉天野景村　　　　　　同七郎左衛門尉天野景経
　紀伊次郎左衛門尉為経　　　　　　　　梶原太郎左衛門尉景綱
　進三郎左衛門尉宗長　　　　　　　　　加藤左衛門尉景経〔乗馬沓持ち〕
　小野寺新左衛門尉道継　　　　　　　　甲斐三郎左衛門尉狩野為成
　伊東八郎左衛門尉祐光　　　　　　　　佐々木孫四郎左衛門尉泰信
　伊賀式部八郎左衛門尉仲光　　　　　　大見肥後四郎左衛門尉行定
　佐々木加地太郎左衛門尉実綱

読下し　　　　　　　　　　　　　まえはま　 をい　 おんまと　　いて　　えらばる　　　さてんきゅう　しょろう　　よっ　　しゅっしされず
弘長三年(1263)正月小八日己丑。前濱に於て御的の射手を撰被る。左典廐、所勞に依て出仕不被。

じゅうはちにん　いちごど　い　お　　　　　　　たいさん　　　うんぬん
 十八人で 一五度射訖へて、退散すと云云。

　いちばん　やましろのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　 はやかわのじろたろう
　一番　山城三郎左衛門尉　　　　　　　早河次郎太郎

　　にばん　しぶやのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　よこちのさえもんじろう
　二番　澁谷新左衛門尉　　　　　　　　横地左衛門次郎

　さんばん　いとうのよいち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ふじのさぶろうごろう
　三番　伊東與一　　　　　　　　　　　冨士三郎五郎

　よんばん　やましろのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　 はやかわのじろたろう
　四番　松岡左衛門四郎　　　　　　　　平嶋弥五郎

　　ごばん　いとうのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　おぬまのごろうひょうえのじょう
　五番　伊東新左衛門尉　　　　　　　　小沼五郎兵衛尉

　ろくばん　こじまのいやじろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しぶやのうえもんしろう
　六番　小嶋弥次郎　　　　　　　　　　澁谷右衛門四郎

　ななばん　かしわまのさえもんじろう　　　　　　　　　　　　　　　 ほんまのつしまじろうひょうえのじょう
　七番　栢間左衛門次郎　　　　　　　　本間對馬次郎兵衛尉

　はちばん　おちあいのしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　 かみばやしのひょうえさぶろう
　八番　落合四郎左衛門尉　　　　　　　神林兵衛三郎

　　くばん　はやかわのろくろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しもやまのひょうえたろう
　九番　早河六郎　　　　　　　　　　　下山兵衛太郎

参考山城三郎左衛門尉は、初め忠氏で出演し、途中から近忠となのり、この時期は親忠となっている。

現代語弘長三年(1263)正月小八日己巳。前浜(由比ガ浜)で、的始め式の射手の予選をしました。左典厩北条時宗は、具合が悪くて出勤しませんでした。十八人で二本づつ五回射た後で引き上げましたとさ。
　一番手　山城三郎左衛門尉親忠　ＶＳ　早川次郎太郎祐泰
　二番手　渋谷新左衛門尉朝重　　ＶＳ　横地左衛門次郎長重
　三番手　伊東與一祐頼　　　　　ＶＳ　冨士三郎五郎員時
　四番手　松岡左衛門四郎時家　　ＶＳ　平島弥五郎助経
　五番手　伊東新左衛門尉　　　　ＶＳ　小沼五郎兵衛尉孝幸
　六番手　小島弥次郎家範　　　　ＶＳ　渋谷右衛門四郎清重
　七番手　栢間左衛門次郎秀忠　　ＶＳ　本間対馬次郎兵衛尉忠泰
　八番手　落合四郎左衛門尉　　　ＶＳ　神林兵衛三郎
　九番手　早河六郎祐頼　　　　　ＶＳ　下山兵衛太郎

読下し　　　　　　　　　　　　　そらはれ　きた　じゅうににち おんゆみはじ　あ　　べ　　　　 よっ　　　せんてい もよ　さる　　の　いて
弘長三年(1263)正月小九日庚寅。天�ﾘ。來る十二日 御弓始め有る可きに依て、撰定 催お被る之射手、

きた　じゅうににち たつのこくいぜん　さんきんすべ　てへ
來る 十二日 辰刻 以前に參勤可し者り。」

さてんきゅう ひごろ ごふれい　　きょうおんほうそうしゅつげん
左典廐 日來 御不例。今日御疱瘡出見す。」

ばん　およ　ごんのりっしりゅうせいにゅうめつ　　〔としにじゅうさん〕
晩に及び 權律師隆政 入滅す〔年廿三〕。

現代語弘長三年(1263)正月小九日庚寅。空は晴です。今度の十三日に弓始め(的始め)をする予定なので、予選を経た射手は、前日の来る十二日午前七時前に出勤してくるように。
左典厩北条時宗は近頃病気です。今日疱瘡があらわれました。
夜になって、権律師隆政が亡くなりました〔年は二十三です〕。

読下し　　　　　　　　　　　　 そらはれ　いずみのぜんじゆきかた　ぶぎょう　な　　　　しゅん　おんまりのぶぎょう　 さだ　 らる
弘長三年(1263)正月小十日辛夘。天�ﾘ。和泉前司行方を 奉行と爲し、旬の御鞠之奉行を定め被る。

みな これ たんのう　えらばる　ところなり　うんぬん
皆 是 堪能を撰被る所也と云云。

　　しょうがつ　　　　　しがつ　　　　　しちがつ　　　　じゅうがつ
　正月　　　四月　　　七月　　　十月

　　　じょうじゅん
　　上旬

れいぜいちゅうじょうたかしげあそん　　　　　　　　　　　　　　　うまのすけきよとき
冷泉中將隆茂朝臣　　　　　　　　　　右馬助�C時

でわぜんじながむら
出羽前司長村

　　　ちゅうじゅん
　　中旬

えちぜんぜんじときひろ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なかつかさごんのしょうゆうしげのり
越前々司時廣　　　　　　　　　　　　中務權少輔重教

びっちゅうのかみゆきあり
備中守行有

　　　　げじゅん
　　下旬

あしかがたいふのほうがんいえうじ　　　　　　　　　　　　　　　 むさしのごろうときただ
足利大夫判官家氏　　　　　　　　　　武藏五郎時忠

しもつけさえもんのじょうかげつな
下野左衛門尉景綱

　　にうがつ　　　　　　ごがつ　　　　　はちがつ　　　　じゅういちがつ
　二月　　　五月　　　八月　　　十一月

　　　じょうじゅん
　　上旬

にじょうしょうしょうまさありあそん　　　　　　　　　　　　　　　　 ぎょうぶしょうゆうときもと
二條少將雅有朝臣　　　　　　　　　　刑部少輔時基

ごとういきぜんじもとまさ
後藤壹岐前司基政

　　　ちゅうじゅん
　　中旬

だんじょうしょうひつなりとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えちごのしろうあきとき
彈正少弼業時　　　　　　　　　　　　越後四郎顯時

さどのたいふほうがんもとたか
佐渡大夫判官基隆

　　　　げじゅん
　　下旬

さこんのたいふしょうげんときむら　　　　　　　　　　　　　　　　みかわのぜんじよりうじ
左近大夫將監時村　　　　　　　　　　三河前司頼氏

すおうさえもんのじょうただかげ
周防左衛門尉忠景

　さんがつ　　　　　ろくがつ　　　　　　くちがつ　　　　じゅうにがつ
　三月　　　六月　　　九月　　　十二月

　　　じょうじゅん
　　上旬

にじょうじじゅうもとなが　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのさぶろうときすけ
二條侍從基長　　　　　　　　　　　　相摸三郎時輔

ささきいきぜんじやすつな
佐々木壹岐前司泰綱

　　　ちゅうじゅん
　　中旬

なかつかさごんのだいゆうのりとき　　　　　　　　　　　　　　　あいだのじょうすけやすもり
中務權大輔教時　　　　　　　　　　　秋田城介泰盛

しなののほうがんとききよ
信濃判官時�C

　　　　げじゅん
　　下旬

さこんのたいふしょうげんきんとき　　　　　　　　　　　　　　　　もくごんのかみちかいえ
左近大夫將監公時　　　　　　　　　　木工權頭親家

じょうのしろうさえもんのじょうときもり
城四郎左衛門尉時盛

現代語弘長三年(1263)正月小十日辛卯。空は晴です。和泉前司二階堂行方が指揮担当して、十日毎の蹴鞠実施の担当を決めました。これは皆上手な者達を選んだんだとさ。
　正月、四月、七月、十月は、
　　上旬　冷泉中将隆茂さん、遠江右馬助大仏流北条清時、出羽前司小山長村
　　中旬　越前前司北条時広、中務権少輔重教、備中守二階堂行有
　　下旬　足利大夫判官家氏、武蔵五郎大仏流北条時忠、下野左衛門尉宇都宮景綱
　二月、五月、八月、十一月は、
　　上旬　二条少将雅有さん、刑部少輔名越流北条時基、後藤壱岐前司基政
　　中旬　弾正少弼極楽寺流北条業時、越後四郎金沢流北条顕時、佐渡大夫判官後藤基隆
　　下旬　相模左近大夫将監北条時村、三河前司新田頼氏、周防左衛門尉島津忠景
　三月、六月、九月、十二月
　　上旬　二条侍従基長、相模三郎時輔、佐々木壱岐前司泰綱
　　中旬　中務大輔名越流北条教時、秋田城介安達泰盛、信濃判官二階堂時清
　　下旬　尾張左近大夫将監名越公時、木工権頭藤原親家、城四郎左衛門尉安達時盛

読下し　　　　　　　　　　　　 　　あす　　おんゆみはじ　　いて　のうち　　こじまのいやじろういえのり こしょう　　よし　　もう　　　　よっ
弘長三年(1263)正月小十一日壬辰。明日の御弓始め射手之中、小嶋弥次郎家範 故障の由を申すに依て、

か　　あいて　おぬまのごろうひょうえのじょうたかゆきおな　　　これ　　と　　　られ　　ごばん　　ちぢ　 らる　ところなり
彼の合手　 小沼五郎兵衛尉孝幸　 同じく之を止め被、五番に縮め被る所也。

しか　　　きょう　　くどうのさぶろううえもんのじょうみつやす　はか　　もう　　　　 い
而るに今日、 工藤三郎右衛門尉光泰　 計り申して云はく。

いえのり の こしょう　 つ　　　　たかゆき　 と　　られ ごばんたれば　　も　　なお ご　 のぞ　 こしょう　やからいできた　　をい　は よんて　　しか　　べからず
家範之故障に就き、孝幸を止め被五番爲者、若し猶期に臨み故障の輩出來るに於て者四手、然る不可。

はやかわのろくろうすけより を　たかゆき　め　　あ　　　　　　　もと　　ごと　　ろくばん　　な　　のじょう　　よろ　　　　　べ　　　か　てへ
　早河六郎祐頼　於 孝幸に召し合わせ、元の如く六番と爲す之條、宜しかる可き歟者り。

よっ　　さた　あ　　　　　　　しか　 ごと　　　 うんぬん　　か　 りょうにん　あいもよ　さる　ところなり
仍て沙汰有りて、然る如しと云云。彼の兩人を相催お被る所也。

現代語弘長三年(1263)正月小十一日壬辰。明日の弓始めの射手の内、小島弥次郎家範が具合が悪いというので、彼の相手の小沼五郎兵衛尉孝幸を一緒に止めさせて、五組に縮めました。しかし今日、工藤三郎右衛門尉光泰が考慮して云うのには、「小島家範が具合が悪いからと云って小沼孝幸を止めて五組にすれば、若しその時になって具合が悪い奴が出てくれば四組になってしまうのでそれはよくありません。早河六郎祐頼を小沼孝幸と組ませれば、元の通り六組にするのが、良いのではないでしょうか？」と云いました。そこで決定してそのようにするんだそうな。其の両人に催促をした処です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　おんゆみはじ　あ　　　　　　いて　　じゅうににん　〔ふたごど　これ　　い　　〕
弘長三年(1263)正月小十二日癸巳。御弓始め有り。射手は十二人〔二五度�@之を射る〕。

　いちばん　やましろのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　 はやかわのじろたろう
　一番　山城三郎左衛門尉親忠　　　　　早河次郎太郎祐泰

　　にばん　よこちのさえもんじろうもろしげ　　　　　　　　　　　　　つしまのじろうひょうえのじょうただやす
　二番　横地左衛門次郎師重　　　　　　對馬次郎兵衛尉忠泰

　さんばん　しぶやのうえもんしろうきよしげ　　　　　　　　　　　　　いとうのよいち
　三番　澁谷右衛門四郎�C重　　　　　　伊東與一祐頼

　よんばん　おぬまのごろうひょうえのじょう　　　　　　　　　　　　　はやかわのろくろうすけより
　四番　小沼五郎兵衛尉孝幸　　　　　　早河六郎祐頼

　　ごばん　いとうのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　ふじのさぶろうごろうかずとき
　五番　松岡左衛門四郎時家　　　　　　冨士三郎五郎員時

　ろくばん　しぶやのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　ひらしまのいやごろうすけつね
　六番　澁谷新左衛門尉朝重　　　　　　平嶋弥五郎助經

参考�@一五度は、四十九巻正元二年(1260)正月十二日・十四日の記事により、一五度は、二本づつ五度で、二五度は二本づつ五度を二回らしい。

現代語弘長三年(1263)正月小十二日癸巳。弓始めがありました。射手は十二人です〔二本五度を二回です〕。
　一番　山城三郎左衛門尉親忠　　　　　早河次郎太郎祐泰
　二番　横地左衛門次郎師重　　　　　　対馬次郎兵衛尉忠泰
　三番　渋谷右衛門四郎　重　　　　　　伊東与一祐頼
　四番　小沼五郎兵衛尉孝幸　　　　　　早河六郎祐頼
　五番　松岡左衛門四郎時家　　　　　　冨士三郎五郎員時
　六番　渋谷新左衛門尉朝重　　　　　　平島弥五郎助経

読下し　　　　　　　　　　　　　　　きた　にじゅういちにち　おいの　　あ　　　べ　　　　よっ　　　さだいじんほういん　やすみどころ　ため
弘長三年(1263)正月小十四日乙未。來る廿一日自り御祈り有る可きに依て、左大臣法印が 休所 の爲、

でわのにゅうどうどうくう　いえ　てん　らる　　べ　　　のよし　 うんぬん
出羽入道々空が家を點じ被る可き之由と云云。

現代語弘長三年(1263)正月小十四日乙未。来る二十一日からお祈りがあるので、左大臣法印嚴恵の休息所として、出羽入道道空二階堂行義の家を指定するようにとの事だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　こさめつね　　ふ　　　　　よ　　 い　　はれ　 ぞく　　　うしのこく　げっしょくはちぶしょうげん　　おいのり　かがのほういんじょうせい
弘長三年(1263)正月小十五日丙申。小雨常に降る。夜に入り�ﾘに属す。丑刻、月蝕 八分 正見す。御祈は加賀法印定�C。

現代語弘長三年(1263)正月小十五日丙申。小雨が一日中降ってました。夜になって晴れてきました。午前二時頃、月食が八分かけて見えました。月食のお祈りは加賀法印定清です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　べにがすみはくうん　まと　　　てんきはなは　はれ　いぬのこく　いぬいたつみ　ひ　　ごと　ひかり いろあ
弘長三年(1263)正月小十七日戊戌。 紅霞 白雲に纏う。天氣甚だ�ﾘ。 戌刻、　乾巽に　火の如き光 色有り。

いっぽう　ひかりさかんのとき　いっぽう　ひかりうす　　　またあつ　　　うす　　　あいまじは　　　み　　ものこれ　 あや
一方が 光 盛 之時、一方は光薄し。亦厚きと薄きが相交る。觀る者之を怪しむ。

現代語弘長三年(1263)正月小十七日戊戌。紅色の霞が白い雲にまとわりついています。天気はばかっぱれです。午後八時頃、西北と東南に火の様な光が、色がついています。一方は光が激しく、一方は光が薄いです。また厚みのある場所と薄い箇所が混じっています。見てる人々は異常を感じていました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　くも　　　いぬいたつみ　せきこう さんぬ　よ　　ごと
弘長三年(1263)正月小十八日己亥。陰り。　乾巽の 赤光 去る夜の如し。

おいのり　だいあじゃりやすみどころ　こと　　どうくう　 いえは　　さんぬ　ころ だんじょうしょうひつ　これ　 たま　　　をはんぬ
御祈の大阿闍梨　休所の事、道空が家者、去る比　 彈正少弼　 之を給はり畢。

ひたちにゅうどう　いえは　　らいげつ にしょごさんけい　 ぎょぶつらぶぎょう　さた　　　のあいだ　　きょう　　ごとういきぜんじ　　いえ　　てん　　らる　　　うんぬん
 常陸入道が家者、來月 二所御參詣の御物等奉行沙汰する之間、今日後藤壹岐前司が家を點じ被ると云云。

現代語弘長三年(1263)正月小十八日己亥。曇りです。西北と東南の光は昨夜と同じです。お祈りの大阿闍梨の休息所について、道空二階堂行義の家は、大分前に弾正少弼極楽寺流北条業時がこれを貰っています。常陸入道行日二階堂行久の家は、来月二所詣での道具類を準備担当が置いているので、今日後藤壱岐前司基政の家を指定されたそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　きんじつにしょごさんけい あ　　べ　　　　 よっ　　　　 ぐぶ　　そうにんずう　　れい　 ごと　 これ　ちゅう　すす　　　うんぬん
弘長三年(1263)正月小廿日辛丑。近日二所御參詣有る可きに依て、供奉の惣人數、例の如く之を注し進むと云云。

現代語弘長三年(1263)正月小二十日辛丑。近日中に二所詣でをするので、お供の人数を何時ものように書き出すのだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　にしょごさんけい　　　ぐぶにんら　　 こと　じょうじょう さた　　　へ　らる
弘長三年(1263)正月小廿三日甲辰。二所御參詣の供奉人等の事、條々沙汰を經被る。

せんじつ　ごてん　くださる　　にんずうのうち　 おお　 もっ　さわり　 もう　　ことら　あ　　　　 いはゆる
 先日 御點を下被る人數之中、多く以て障を申す事等有り。所謂、

　　むさしのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えちゅうぜんじ
　武藏前司　　　　　　　　　　　　　　越中前司

　　みんぶごんのだいゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なかつかさごんおだいゆう
　民部權大輔　　　　　　　　　　　　　中務權大輔

　　あいだのじょうすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　しろうさえもんのじょう
　秋田城介　　　　　　　　　　　　　　同じき四郎左衛門尉

　　ささきつしまのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぬいどののとう
　佐々木對馬守　　　　　　　　　　　　縫殿頭

　　おおすがしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　でわのくろう
　大須賀新左衛門尉　　　　　　　　　　出羽九郎

　　　いじょうじゅうにんしょろうのよし　もう　　　いへど　　　しゅっし　 あた　　のうえ　　　あいたす　まい　　べ　　　のよし　うんぬん
　　以上十人所勞之由を申すと雖も、出仕に當る之上は、相扶け參る可き之由と云云。

　　あだちのさえもんたろう　　〔いたわ　のよし　　　もう　　うえ　ざいこく　　〕
　足立左衛門太郎〔勞り之由を申す上在國す〕

　　むさししきぶのたいふ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くないごんのだいゆう
　武藏式部大夫　　　　　　　　　　　　宮内權大輔

　　さどのたいふほうがん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　すおうのごろうさえもんのじょう
　佐渡大夫判官　　　　　　　　　　　　周防五郎左衛門尉

　　どとういきさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かいのさぶろうさえもんのじょう
　後藤壹岐左衛門尉　　　　　　　　　　甲斐三郎左衛門尉

　　おな　　　ごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　おのでらのしんさえもんのじょう
　同じき五郎左衛門尉　　　　　　　　　小野寺新左衛門尉

　　おうみのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのろくろうさえもんのじょう
　近江左衛門尉　　　　　　　　　　　　和泉六郎左衛門尉

　　おな　　　しちろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　じんざぶろうさえもんのじょう
　同じき七郎左衛門尉　　　　　　　　　進三郎左衛門尉

　　おおいずみのくろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あだちのさえもんごろう
　大泉九郎　　　　　　　　　　　　　　足立左衛門五郎

　　　いじょうじゅうよにんさわり　もう　　のよし　　そ　　しさい　　たず　　と　　　べ　　のよし　うんぬん
　　以上十四人障を申す之由、其の子細を尋ね問う可き之由と云云。

　　さがみさこんのたいふしょうげん　　　　　　　　　　　　　　　　　しなののほうがん
　相摸左近大夫將監　　　　　　　　　　信濃判官

　　おおすみしゅりのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はたけやまのこうづけさぶろう
　大隅修理亮　　　　　　　　　　　　　畠山上野三郎

　　おきのしろうひょうえのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おのでらのしろうさえもんのじょう
　隱岐四郎兵衛尉　　　　　　　　　　　小野寺四郎左衛門尉

　　あだちのたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおすがしんさえもんのじょう　〔ざいこく〕
　足立太郎左衛門尉　　　　　　　　　　大須賀新左衛門尉〔在國〕

　　　いじょうはちにんはしかぐ　　　うんぬん　　いとま　もうさずのじょう　おな　　　たず　 とう　 べ　　　のよし　うんうん
　　以上八人者鹿食いと云云。暇を申不之條、同じく尋ね問う可き之由と云々。

　じょうのろくろうひょうえのじょう　〔とり　　く　　〕
　　城六郎兵衛尉　〔鳥を食う〕

　　　　　しさい　　まえ　　おな
　　子細は前に同じ

　　　 いじょうかく　　ごと
　　以上此の如し

　しかぐい　　こと　　をい　　は　　ま　　じんもんさる　のところ　　きんせい　こと　うけたまは　およ　ざるのよし　おのおの ちんしゃ　　　うんぬん
　鹿食の事に於て者、先ず尋問被る之處、禁制の事を 承り 及ば不之由、　各　陳謝すと云云。

参考出仕に當るは、出仕するのと同じ仕事だ。
参考子細を尋ね問うは、理由を詳しく云わせろ。
参考禁制の事を承り及ば不は、禁制を聞いていなかった。
参考陳謝は、弁解する。

現代語弘長三年(1263)正月小二十三日甲辰。二所詣でのお供について、あれこれ将軍の点検を終えました。先日将軍がチェックした人数の中で、多くの人が具合が悪いと言い出したものがあります。それは、
　武蔵前司大仏流北条朝直　　越中前司（宇都宮）横田頼業
　民部権大輔佐助流北条時隆　民部権大輔佐助流北条時隆
　秋田城介安達泰盛　　　　　城四郎左衛門尉安達時盛
　佐々木対馬守氏信　　　　　縫殿頭中原師連
　大須賀新左衛門尉朝氏　　　出羽九郎二階堂宗行
　　以上の十人は病気だと云ってるが、出仕当番に当っているので、体を直して来なさい。

　足立左衛門太郎〔病気だと云ってるばかりか国に居ります〕
　武蔵式部大夫大仏流北条朝房　宮内権大輔長井時秀
　佐渡大夫判官後藤基隆　　　　周防五郎左衛門尉島津忠景
　後藤壱岐左衛門尉基頼　　　　甲斐三郎左衛門尉為成
　甲斐五郎左衛門尉為定　　　　小野寺新左衛門尉行通
　近江左衛門尉　　　　　　　　和泉六郎左衛門尉天野景村
　和泉七郎左衛門尉景経　　　　進三郎左衛門尉宗長
　大泉九郎長氏　　　　　　　　足立左衛門五郎遠時
　　以上の十四人は、支障があると云ってるが、理由を詳しく云わせなさいだとさ。

　相模左近大夫将監北条時村　　信濃判官二階堂行忠
　大隅修理亮島津久時　　　　　畠山上野三郎国氏
　隠岐四郎兵衛尉二階堂行廉　　小野寺四郎左衛門尉通時
　足立太郎左衛門尉直元　　　　大須賀新左衛門尉朝氏〔国元に居ます〕
　　以上の八人は鹿を食ったそうな。遠慮すると云ってる内容を同様に詳しく云わせなさいだとさ。

　城六郎兵衛尉安達顕盛〔鳥を食った〕
　　詳しくは前と同じに詳しく云わせなさい。

　　以上このとおりです。
　鹿を食ったことについては、まず質問をした処、禁制を聞いていなかったとの事を、それぞれ弁解していましたそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　にしょ　ごさんけい　ことえんいん　　　このたび　をい　は　　　ま　　 ほうへい　おんし　　もち　　らる　　べ　　なり
弘長三年(1263)正月小廿五日丙午。二所御參詣の事延引す。今度に於て者、先ず奉幣の御使を用ひ被る可き也。

せんじつ　うけたまは　すす　　　　ぐぶにん　　いた　　　　は　ことごと　もっ　　ごしょうじんちゅう　こう　　べ　　のよし　　あいふる　　べ　　のむね　こさむらい　　おお　　らる
先日　奉りを　進める供奉人に至りて者、悉く以て御精進中に 候ず可き之由、相觸る可き之旨、 小侍に 仰せ被る。

むとうしょうきょうかげより　おお　　つた　　　　うんぬん
 武藤少卿景頼、仰せを傳うと云云。

参考奉りを進めるは、承知の返事を出した。参考御精進中に候ず可きは、精進潔斎している将軍の側に近侍している。

現代語弘長三年(1263)正月小二十五日丙午。二所詣でについて延期しました。今回は、まず幣を奉納する代参を使うことになりました。先日お供を承知の旨を提出をした人達については、全てが精進潔斎中に出仕してくるように、小侍所に命令されました。武藤少卿景頼が命令を伝えましたとさ。

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吾妻鏡入門第五十一巻