吾妻鏡入門第五十二巻

文永二年(1265)二月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　みやすどころ　そうしゅうてい　　にゅうぎょ　これ　しょうぐんけ　にしょ　ごしょうじん　よっ　なり
文永二年(1265)二月小二日壬寅。天�ﾘ。御息所、相州亭へ入御。是、將軍家二所の御精進に依て也。

現代語文永二年(1265)二月小二日壬寅。空は晴です。将軍の奥さんは、相州政村さんの屋敷へ入られました。これは、将軍宗尊親王が、恒例の箱根走湯の二所権現詣での精進潔斎のため女人を遠ざけるからです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　しょうぐんけ　にしょ　ごしょうじん　おんはまいで
文永二年(1265)二月小三日癸夘。霽。將軍家二所の御精進の御濱出。

つちみかどだいなごん　　さてんきゅう　　えちぜんぜんじ　　えちごのうまのすけ　　いじょう　ぐぶにんすうやからなり
土御門大納言・左典厩・越前々司・越後右馬助・以上供奉人數輩也。

くすし　　やくいんじ　ただもち　　おんみょうどう　しょうじょうきよむねら　　これ　　めしぐ　さる
醫師�@は施藥院使�A�B忠茂。陰陽道は少允�C宗等、之を召具被る。

参考�@医師は、くすし。
参考�A施薬院は、せいしきには「せやくいん」だが「やくいん」と読んでいる。同様に太政大臣は正式には「だいじょうだいじん」だが「だじょうだいじん」と読む。
参考�B施薬院使は、頭かみ。

現代語文永二年(1265)二月小三日癸卯。晴れました。宗尊親王将軍家は二所詣での精進潔斎の為浜辺へお出ましです。土御門大納言顕方、左典厩北条時宗、越前々司北条時広、越後右馬助時親以上のお供は数人です。医師は施薬院頭丹波忠茂、陰陽師は少允安倍清宗などを命じて連れて行きました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれかぜしずか　しょうぐんけ　にしょ　ごしんぱつ　　ぐぶにん　かき　　な　　　ものなり　
文永二年(1265)二月小七日丁未。天�ﾘ風靜。將軍家二所に御進發。供奉人墻を成す�@者也。

　そ　なか　　ごうじん　ずいへい　いっき　　なか　　げばばし　　をい　　らくば
其の中、後陣の随兵一騎、中の下馬橋�Aに於て落馬す。」

うまのこく　みやすどころにわか　ごのう　　よっ　ひとびと　ぐんさん　　　のところ　　こと　　おんこと　な　　　うんぬん
午尅、御息所俄に御惱。仍て人々群參する之處、殊なる御事无しと云々。

参考�@供奉人墻を成すは、お供の人が垣根のように沢山。
参考�A中下馬橋は、二の鳥居のところ。

現代語文永二年(1265)二月小七日丁未。空は晴れて風は静かです。宗尊親王将軍家は二所詣でに出発です。お供の人は垣根の様に沢山です。その中の後ろから行く武装儀仗兵一騎が、中の下馬橋で落馬しました。」
昼頃に、将軍の奥さんが発病です。それで人々が群れ集まりましたが、大したことは有りませんでしたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うしのこく　かさまさきのながとのかみじゅごういじょうふじわらあそんときともそつ　　〔としろくじゅうに〕
文永二年(1265)二月小九日己酉。丑尅。笠間前長門守從五位上藤原朝臣時朝�@卒す〔年六十二〕。

参考�@時朝は、塩谷で宇都宮八田流。

現代語文永二年(1265)二月小九日己酉。午前二時頃に、笠間前長門守従五位上藤原塩谷時朝が亡くなりました〔年は六十二歳〕。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しゅうじつあめ　ふ　　　いぬのこく　しょうぐんけ　にしょ　よ　　かんこう　　たま
文永二年(1265)二月小十二日壬子。終日雨�@降る。戌剋、將軍家二所自り還向し御う。

参考�@雨の日は油単（油紙）を着る。油紙を畳んで紐をかけ持っている下っ端がいる。建久七年の頼朝の入京では、鎧兜で雨の中を意に介さず行列した。中には雨を舌で舐めているものもいる。と慈円の愚管抄にある。

現代語文永二年(1265)二月小十二日壬子。一日中雨降りです。午後八時頃、宗尊親王将軍家は二所詣でから帰って来ました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちゃくとう　こと　　かん　　もう　　か　　　べきのよし　　うんぬん　もろつらたてまつ　けちげ　のことばしか　べからず　　うんぬん
文永二年(1265)二月小廿五日乙丑。着到の事、勘じ申し書く可之由と云々。師連奉る結解之詞然る不可�Aと云々。

三月へ

吾妻鏡入門第五十二巻