吾妻鏡入門第廿八巻

寛喜三年辛卯(1231)二月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごしょ　　みだいどころ　 なんぽう　　ひ　　 うつされ　　　すおうのぜんじこれ　 ぶぎょう
寛喜三年(1231)二月小二日己未。御所の御臺所を南方に曳き移被る。周防前司之を奉行す。

現代語寛喜三年(1231)二月小二日己未。御所の奥さんの住まう御台所を南へ引きずって移しました。周防前司中原親実が指揮担当しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうちょうじゅいんない　しんぞう　　ごとう　　 をい　　　　はじ　　　 しゅじょう　おこなはれ　　 どうし　　りょうしんほういん
寛喜三年(1231)二月小九日丙寅。 勝長壽院内の 新造の御塔に於て、始めて修正�@を行被る。導師は良信法印。

参考�@修正は、修正月会で、毎年正月の始めに安泰を祈願する法会。

現代語寛喜三年(1231)二月小九日丙寅。勝長寿院境内の新築の三重塔で、初めて正月明けにする法会の修正月会を行いました。指導僧は、良信法印です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 とりのこく　　あしかがさまのかみ　 わかみや　ばばもと　　 すくしょしっか　　 しょうぼう
寛喜三年(1231)二月小十一日戊辰。�ﾘ。酉刻、足利左馬頭が 若宮 馬場本の宿所失火で燒亡す。

ほうか か　の　よし　　そ　　　うたが　あ　　　　　うんぬん
放火歟之由、其の疑い有りと云々。

現代語寛喜三年(1231)二月小十一日戊辰。晴れです。午後六時頃、足利左馬頭義氏の八幡宮西側の馬場本の宿所が失火で燃えてしまいました。放火かも知れないとの疑いもありますそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 さるのこくきょうと　　ししゃ まい
寛喜三年(1231)二月小十二日己巳。霽。申刻京都の使者參る。

さんぬ　いつか　　しょうぐんけ　 じゅしいげ　　　 じょせし　　たま　　　〔しょうほうもと　　ごと　　〕　　　うんぬん
去る五日、將軍家 從四位下に叙令め給ふ〔少將元の如し〕と云々。

現代語寛喜三年(1231)二月小十二日己巳。晴れました。午後四時頃に京都からの使いが来ました。先日の5日に将軍頼経様(14才)が、従四位下に任命されました〔少将は元のままです〕。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ごしょ　さむらいにかけん　　これ　　つく　　つがれ　　　ぼうしゅうおな　　　ぶぎょうたり
寛喜三年(1231)二月小廿一日戊寅。御所の侍二ケ間、之を作り継被る。防州同じく奉行爲。」

きょう　　きょうと　　ひきゃくさんちゃく　　さんぬ　じうににち　ちうぐう　〔しょうぐんけ　　おんあね〕　ごへいさん　　　　 みこ　こうたんの よし　　これ　　もう　　　　うんぬん
今日京都の飛脚參着す。去る十二日中宮〔將軍家が御姉〕�@御平産す。皇子�A降誕之由、之を申すと云々。

参考�@中宮〔將軍家が御姉〕は、九条竴子・藻壁門院。
参考�A皇子は、秀仁(みつひと)親王で後の四条天皇。

現代語寛喜三年(1231)二月小二十一日戊寅。御所の侍だまりの二間を増築しました。防州中原親実が台所の工事と同様に指揮担当です。」
今日、京都の伝令が着きました。先日の12日に後堀河天皇の妾の中宮〔将軍頼経様の姉〕が安産しました。男子誕生と報告しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　　おいのり　　な　　　　つるがおかはちまんぐう ほうぜん　　をい　　　　にんのうえ　おこなはれ
寛喜三年(1231)二月小廿三日庚辰。將軍家の御祈と爲し、 鶴岳八幡宮　寶前に於て、仁王會を行被る。

さんぬ　つき じうさんにち いご ようかにち　　やまばと　ぐうじ　いしばし　 した　 うめのき　 あつ　　　　た　　　さ　　　ざる　　こと　　おんうら　 おこなはれ のところ　じょうほう　 おんつつし　　あらず
去る月 十三日以後八ケ日、山鳩 宮寺石階の下の梅木に集まり立ち去ら不る事、御占を行被る之處、上方の御愼みに非。

ぐうじ　　　くぜつ とうじょう　つつし　べ　　　のよし　　うらな　もう　をはんぬ　うんぬん
宮寺、口舌�@鬪諍を愼む可き之由、占い申し訖と云々。

参考�@口舌は、口喧嘩。

現代語寛喜三年(1231)二月小二十三日庚辰。将軍頼経様の祈りとして、鶴岡八幡宮の神殿で仁王経を挙げる法要をしました。先月13日以後8日間も山鳩が八幡宮の石段の下の梅に木に集まって飛び去らなかったことについて、占わせたところ、将軍の方の遠慮ではなく、八幡宮側の口喧嘩や争いを控えるようにと、占い申しましたとさ。

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